カゴメの農業事業:挑戦と現実の狭間で
カゴメといえば、ほとんどの人が野菜ジュースやトマトケチャップといった加工食品を思い浮かべるでしょう。しかし、実は1998年からカゴメは農業事業にも力を入れています。
事業参入から単年度黒字までに10年以上を要しています。
25年以上の時を経て、カゴメの農業事業はどのように成長し、成功を収めたのでしょうか。
初期の挑戦: 農業への一歩
1998年、カゴメは農業事業部を立ち上げ、生鮮トマトの栽培に着手しました。これは当時としては大胆な一歩でした。しかし、この新事業はすぐに成功したわけではありません。実際、調査によると2012年までの約14年間、カゴメの農業事業は赤字を続けていたのです。売上は60億円近くに達していたものの、赤字は数億円規模でした。この時期は、事業に対する強い信念と忍耐が試された時期でした。
転機: 黒字化の実現
2012年度には、ついにカゴメの農業事業は黒字化に成功します。売上は93億円に達し、利益は8億円を記録しました。
この黒字転換は、長年にわたる努力の結果であり、カゴメの農業事業が正しい道を歩んでいることの証でした。しかし、この成功が容易に得られたわけではありません。経営戦略の見直し、市場の変化への対応、そして何よりも継続的な努力が必要でした。
現状と将来展望
現在、カゴメの農業事業は順調に成長していますが、依然として課題は残っています。市場の変動、競合他社との差別化、技術革新への対応など、解決すべき課題は多岐にわたります。しかし、カゴメはこれらの課題に対しても積極的に取り組んでおり、今後も農業事業のさらなる成長が期待されています。
赤字の原因と市場の変動
2014年や2017年に赤字を記録したことは、カゴメの農業事業が直面した課題を浮き彫りにしています。トマトの生産が不安定であり、供給過剰により売上が確保できないことが一因です。2019年の「トマトバブル終了」のブログ記事によると、キロ単価が過去10年で半額以下に暴落しています。
このような市場の変動は、農業事業の収益性に大きな影響を及ぼします。
カゴメの対応策
2024年現在のトマト市場価格はやや回復していますが、インフレによる全体的な物価上昇と原価の増加により、農業事業の利益率は依然として低い状態です。カゴメはこの課題に対応するため、約5年前に「カゴメアグリフレッシュ」を設立し、農業生産やコンサルティングサービスを展開しています。しかし、2023年12月期決算において売上100億円に対して利益はわずか5000万円であり、利益率は0.5%にとどまっています。
※カゴメアグリフレッシュ株式会社の利益より
農業事業の未来
カゴメの農業事業は、大規模な投資と減価償却の負担を抱え、スケールメリットの追求だけでは限界に達していることが明らかになっています。農業での成功には、個人農家がどのようにブランディングや差別化を行うかが重要です。単にスケールメリットを追求するだけではなく、市場の変動に強い独自の価値を生み出す必要があると言えます。
まとめ
カゴメの農業事業は、大企業であっても農業市場の厳しい現実に直面しています。大規模な事業展開と市場の変動が生み出す課題は、農業における新たな戦略の必要性を示唆しています。カゴメの事例は、農業事業における挑戦と現実の狭間で奮闘する全ての企業にとって有益な教訓となります。
小規模農業と大規模農業、それぞれ別の苦しみがあるのは事実です。
今後の農業の未来はどうなってゆくのでしょうか?
私としては、双方の良さを取り入れながら、持続可能な農業の世界を目指して引き続き活動していきたいと考えています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
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