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国産オリーブ栽培×合同会社型DAO~DAOを掛け合わせた新たな農業モデルの可能性~

近年、国産オリーブの需要が高まる中、石川県の能登半島で画期的なプロジェクトが立ち上がりました。オーガニックベース石川が主導する「能登半島オリーブ栽培プロジェクト」です。このプロジェクトは、クラウドファンディングを通じて資金を調達し、耕作放棄地を活用してオリーブ栽培を行うことで、地域の過疎化と農地の荒廃という課題解決を目指しています。

しかし、このプロジェクトは従来のクラウドファンディングの域から脱せておらず、参加者巻き込みの仕組みは弱いです。そこで、合同会社型DAOのような、DAOを導入することがこれからの時代において不可欠です。本記事では、国産オリーブ栽培における合同会社型DAOの掛け合わせの可能性について、能登半島のプロジェクトを参考に探っていきます。


オリーブ市場の現状と国産オリーブの可能性

近年、オリーブの名産地である欧州では不作の影響により、オリーブの価格が高騰しています。日本においても、輸入コストの上昇や円安の影響で、オリーブオイルの価格は3倍以上に跳ね上がっています。このような市場環境の変化を受け、国産オリーブの可能性が注目されています。

インフレや輸入コストの増加を考慮すると、欧州からの輸入よりも国内生産にメリットが出てくる可能性があります。国産オリーブを原料とした高付加価値商品(オリーブオイル、化粧品など)の開発は、市場トレンドとして求められる動きになるでしょう。

能登半島オリーブ栽培プロジェクトとは

まず、能登半島オリーブ栽培プロジェクトの概要を見ていきましょう。このプロジェクトは、オーガニックベース石川が中心となり、能登半島で発生した地震からの復興を目的に立ち上げられました。

具体的には、以下のような取り組みを行っています。

  • 3年間で1,000本のオリーブを能登半島に植樹

  • 珠洲市、能登町など被災地の農地を借り受けて栽培

  • 過疎化と耕作放棄地の課題解決を目指す

プロジェクトの資金調達は、クラウドファンディングを通じて行われ、目標金額は300万円に設定されています。その内訳は、苗木仕入れコストが240万円、残りが資材購入費などになっています。

合同会社型DAOとは

次に、合同会社型DAOについて解説します。DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、分散型自立組織を意味します。つまり、中央集権的な管理者を置かず、メンバー全員が平等に意思決定に参加する組織形態のことです。

従来のDAOは、法人格を持たないため、資金調達や契約締結などに制限がありました。しかし、2024年4月22日に施行された改正法により、合同会社型DAOが解禁されました。これにより、DAOに法人格が付与され、より幅広い活動が可能になったのです。

合同会社型DAOの特徴は以下の通りです。

  • 法人格を持つため、信頼性が高い

  • トークンを用いた資金調達や配当が可能

  • メンバーは業務執行社員とその他の社員に分かれる

  • 社員の活動範囲や収益分配の規制が異なる

  • 社員権トークン以外の「別トークン」発行が可能

こうした特徴から、合同会社型DAOは、従来の組織形態では実現が難しかった新しいビジネスモデルやプロジェクトの実現を可能にすると期待されています。

国産オリーブ栽培への合同会社型DAO導入の可能性

国産オリーブ栽培の持続可能性を追求する上で、重要なポイントの1つが「いかに支援者や一緒にプロジェクトを推進できるメンバーを募るか」です。ここで合同会社型DAOの仕組みを活用したモデルを考えていきます。

具体的なイメージとしては、まずNFTの販売を通じて初期メンバーを募集します。業務執行社員として、オリーブ栽培、マーケティング、商品企画などに関わる人材を集めます。この業務執行社員を中心に、支援者(その他社員)向けのNFTを販売することで、資金調達とコミュニティ形成を同時に実現します。

では、国産オリーブ栽培に合同会社型DAOを導入することで、どのような可能性が広がるのでしょうか。能登半島のプロジェクトを参考に、具体的なメリットを見ていきます。

合同会社型DAO導入メリット

1. 耕作放棄地の有効活用と雇用創出

合同会社型DAOを活用することで、耕作放棄地を法人として借り受け、オリーブ農園を開設します。また、農園運営に携わるメンバーを業務執行社員として迎え入れることで、地域の雇用創出にもつながります。

2. トークンを活用した資金調達

社員権トークンを発行し、オリーブ農園のオーナー権や収穫物の優先購入権などの特典を付与することで、支援者の関心と参加意欲を高められます。トークン販売による資金調達は、オリーブ栽培における初期投資の負担を軽減し、プロジェクトの立ち上げを容易にします。

3. 透明性の高い意思決定

合同会社型DAOによる運営は、意思決定の透明性を高め、メンバー間の信頼関係を強化します。また、スマートコントラクトを活用したガバナンストークンによる投票で、商品企画の意思決定や役割分担を組織で決定していきます。

4. オリーブのブランド化と地域活性化

オリーブ農園を観光資源として活用し、体験ツアーや収穫イベントを開催することで、地域の魅力を発信できます。また、DAO主導での生産物のブランド化や高付加価値商品の開発により、地域経済の活性化が期待できます。

コミュニティ主導の商品企画と収益分配モデル

合同会社型DAOの大きな特徴は、NFTホルダーへの収益分配が可能な点です。オリーブ栽培には3年ほどの時間を要しますが、収穫・加工・販売によって収益が生まれた際には、業務執行社員だけでなく、その他社員にも分配することができます。

また、コミュニティメンバーを巻き込んだ商品企画も、DAOならではの取り組みです。その他社員NFTホルダーに投票権を提供し、商品のデザインやコンセプトを決定するプロセスを通じて、コミュニティ主導の物作りを進めていきます。

プロジェクトが軌道に乗り、安定的な収益が見込めるようになれば、次のステップとして「オリーブトークン」の発行ができます。その「オリーブトークン」に金銭的な価値を付加して、NFTホルダーに付与することで、金銭的価値の創出も可能になり、収益分配も可能です。
また、「その他社員NFT」は転売可能なため、供給量をコントロールすることで価値の向上を図ります。

課題と展望

一方で、国産オリーブ栽培にDAO型を導入する際の課題もあります。例えば、オリーブの栽培には長期的な取り組みが必要で、収益化までに時間がかかることや、トークンの価値が市場の動向に左右されるリスクなどです。
農業は初期投資が大きく、キャッシュフローを生み出すまでに時間がかかるビジネスです。また、天候や市場環境の影響を受けやすいというリスクもあります。

しかし、こうした課題を乗り越えることができれば、国産オリーブ栽培とDAOの融合は、農業分野における新たなイノベーションを生み出す可能性を秘めています。DAOを活用した資金調達は、こうした農業特有の課題を克服する上で大きなメリットになり得ます。

ただし、オリーブ栽培とオリーブ販売だけでは、事業モデルとして成立しにくいのが現状です。ここで重要になるのが、オリーブ以外の体験価値の提供です。DAOコミュニティメンバーと協力しながら、オリーブにまつわる体験やサービスを創出していくことが求められます。

合同会社型DAOの仕組みを活用することで、従来の農業モデルとは異なる、新たな可能性を切り拓くことができるでしょう。国産オリーブ栽培とDAOの融合は、持続可能な農業モデルの構築に向けた挑戦として、大いに期待が持てる取り組みだと言えます。

おわりに

国産オリーブ栽培に合同会社型DAOを導入することで、耕作放棄地の活用、新たな資金調達、地域活性化など、多様な可能性が広がります。能登半島のプロジェクトは、その先駆けとなる取り組みと言えるでしょう。

農業とDAOの融合は、まだ始まったばかりです。今後、様々な試行錯誤を経ながら、より洗練された形へと進化していくことでしょう。国産オリーブ栽培の新たな潮流に乗り、持続可能な農業の実現に向けて、DAOの可能性を追求し続けることが重要です。

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

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