静かな革命：Pontaのｗeb3戦略が示す、誰でも使えるブロックチェーンの未来
私たちの多くは、コンビニやドラッグストアでPontaカードを使ってポイントを貯めています。そんな身近なサービスが、今、技術革新の最前線に立っています。
2024年12月、Pontaを運営するロイヤリティマーケティングは「MUGEN Chain」という独自のブロックチェーンを立ち上げ、約1億人のユーザーを対象としたweb3サービスをスタートさせました。
この取り組みが特別なのは、利用者が「ブロックチェーンを使っている」と意識することなく、いつものようにサービスを使えるという点です。これは、web3技術の新しい可能性を示す重要な一歩かもしれません。
なぜ今、企業はweb3に注目するのか
従来のインターネット（Web2.0）では、私たちのデータは大手IT企業に集中管理されています。例えば、SNSに投稿した写真の権利は実質的にプラットフォーム企業が握っており、サービスが終了すれば私たちのデータも消えてしまいます。
web3は、このような中央集権的な構造を変えようとする技術です。ブロックチェーンを使うことで、データの所有権を個人が持ち、様々なサービス間で自由に持ち運べる世界を目指しています。
日本においても、ハウス食品やサントリーのような大手も挑戦し始めています。
大手企業がweb3に注目する理由は、以下の可能性にあります：
顧客との新しい関係構築：デジタル資産（NFTなど）を通じて、より深い顧客エンゲージメントを実現できる
データの透明性：取引やポイントの履歴を改ざん不可能な形で記録できる
コスト削減：中間業者を介さない直接的な取引が可能になる
MUGEN Chainが示す新しいアプローチ
PontaのMUGEN Chainは、web3技術の導入において非常にユニークなアプローチを取っています。この特徴を詳しく見ていきましょう。
ユーザーファーストの設計思想
MUGEN Chainの最大の特徴は、ユーザーに新しい学習を強いないことです。暗号資産ウォレットの作成や複雑な操作は不要で、いつも通りPontaカードを使うだけでweb3サービスを利用できます。
例えば、「みんなの応援実績」という機能では、環境に優しい商品を購入したり、エコ活動に参加したりすると、その実績がNFTとして記録されます。ユーザーは特別な操作をすることなく、自然な形で自身の貢献活動を可視化できるのです。
技術的な工夫
MUGEN Chainは、アバランチというブロックチェーンのサブネットを採用しています。これにより、以下の課題を解決しています：
処理速度：1億人規模のユーザーベースに対応できる高速な処理を実現
コスト：従来のパブリックチェーンで問題となっていた高額な手数料を抑制
安定性：大規模なトランザクションを安定して処理できる基盤を確保
課題と今後の展望
現状の限界
利用ハードルが低い点と使いやすさが評価できるMUGEN Chainですが、web3の持つ特性が生かし切れていない課題がいくつか存在します：
ポータビリティの制限：現状では、NFTをMUGEN Portal外で表示したり、他のブロックチェーンに移行したりすることができません。
中央集権的な要素：運営主体による管理が強く、完全な分散化とは言えない状況です。
※参考：https://mugen-portal.com/faq/
これらの制限は、web3の基本理念である「データの自由な移動」や「真の所有権」という観点からは課題と言えます。
未来への期待
しかし、これらの制限は、web3技術の段階的な導入における「第一段階」と捉えることもできます。将来的には以下のような展開が期待されます：
他のブロックチェーンとの連携：Pontaポイントのブロックチェーントークン化により、より広い経済圏での活用が可能に
サードパーティー開発の活性化：独自のアプリケーション開発を通じた、新しいサービスの創出
ユーザー主導のデータ活用：個人のデータ所有権がより強化される方向への進化
おわりに
MUGEN Chainの取り組みは、web3技術の「大衆化」における重要な実験と言えます。技術的な完璧さよりも、まずは多くの人々が使いやすいサービスを提供することで、web3の裾野を広げようとする試みです。
確かに現状では制限も多いものの、1億人規模のユーザーベースを持つサービスがweb3に踏み出したことの意義は大きいと考えられます。この取り組みが、企業によるweb3導入の新しいモデルケースとなり、より多くのイノベーションを生み出すきっかけとなることを期待しています。
身近なポイントカードから始まるデジタル革命。その行方に、これからも注目していく必要がありそうです。
ぜひ、一度、Pontaのweb3サービスを活用して、web3ビジネスの現在地を体感してみてはいかがでしょうか？
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。