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【渡鹿用水】熊本の街なかに溶け込む謎の水路に迫る!【暗渠もあるよ】

前回は、加藤清正がつくった謎構造の水路、鼻ぐり井手の解説をしましたが、今回はその下流、熊本市都市部を駆け抜ける謎の水路、渡鹿用水を紹介します。

そしてこちらのnoteでは動画の補足解説をしていきたいと思います。

渡鹿用水は、白川最大級の取水堰である渡鹿堰と、そこから農地へ水を運ぶ水路から構成されています。幹線水路の大井手と、そこから分水する3つの水路からなり、約250haの農地に水を送っています。

用水路一途

出典:熊本市HP「世界かんがい施設遺産に登録されました」https://www.city.kumamoto.jp/hpKiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=19258&class_set_id=2&class_id=65


鼻ぐり井手とほとんど同時期、西暦1606年から利用開始されたようで、加藤清正は白川流域で巨大な農地開発プロジェクトを同時進行させていたことになり、その国力増強への意識の高さが伺えますね。

この渡鹿堰のすごいところは、水を農業などに利用する「利水」と、川の氾濫などを防ぐ「治水」の2つの目的を同時に達成したことにあると言われています。

「利水」
現代の取水堰は、河川の直線部で流下方向に対して垂直に川を堰き止め、取水している形式のものが多いのですが、渡鹿堰は河川が大きくカーブした部分に建設されています。
河川がカーブしていると、流れる水は遠心力で外側に押し寄せます。そこで、カーブの終わりの部分で水を斜めにせき止めることで、外側に集まる水をうまく水路に水を導いているんですね。
ときに雨が少ない年には白川の水位が下がりますので、その時でも容易に取水するための工夫だったのです。

「治水」
一般的に、取水堰は少なからず障害物となり、川の流れをせき止めてしまうため、水かさが増して越水するリスクを高めてしまう側面があります。
しかし、渡鹿堰は治水にも貢献していると言われています。はて、これはどういうことでしょう?残念ながらネットで調べた限りはどういう理屈で治水効果を発揮していたかは明確ではありません。

と、いうことは、勝手に推測していいということですね!!以下は私の勝手な推論です。
①洪水を水路に逃すことで、河川堤防を守っている説
 水路を通して、建設当時1100haあったと言われる水田に水を流せば、もし田んぼに10cmまで水を貯めることができたとすると、1100ha×10000m2×0.1=1,100,000m3の水を貯留することができます。これは大きめの溜池くらいの容量です。
②斜めの堰が、川の流れを整えている説
 さっきも述べましたが、河川のカーブの部分では、外側に水が集まります。それは水を取水するのには都合がいいかもしれませんが、豪雨のときには外側の堤防を水が削り取ることになります。これに対して、どうやらカーブの内側を向いた斜めの堰を設置することで、川の水を内側に誘導する効果があるそうです。
出典:斜め堰の実態とその類型
https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalhs2004/26/0/26_0_45/_pdf

 昔の取水堰は、建設時に水を受け流すことができるよう、斜めの堰が多く建設されました。当時の土木技術者は、数多くの斜め堰を建設していくなかで、それが水の流れる向きを変える性質があることに気づいていたかもしれませんね。

この2つの考えである程度の治水効果を得ていたものと想像できます。

治水効果と利水効果

斜堰の利水効果と治水効果のイメージ図(想像)

他方、渡鹿用水の周りは近代になると、都市化が進み農地はどんどん少なくなっていきました。また、都市化の際には家庭排水などの流入も問題となり、一時期はドブ川のようになってしまっていたとかなんとか。
これじゃいかん!と奮起した地域の皆さんにより、水質改善の取り組みや、ホタルなどの生き物が生息できる環境整備が行われたそうです。結果、都市の中に自然が融合する景観が作り出されたのですね。

出典:「熊本市大井出における里山景観形成に関する研究」
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00039/200806_no37/pdf/290.pdf


今では、農地は水路の末端を中心に250haを残すほどとなっているそうです。それも取水源から9km程も離れた、それも緑川のすぐ近くに農地が集中していますので、まさかその水が白川からはるばる運ばれていることを知っている人は少ないかもしれません。
最終的には、渡鹿用水は緑川水系の天明新川に落水し、緑川につながっています。

当たり前と思っている景色の中に、超凄い歴史(語彙力不足)が隠れている、農業土木遺構の魅力ではないでしょうか??

水路シリーズがしばらく続きましたが、今度はまた別の農業土木っぽいものを紹介できればと思っています。

次回をこうご期待!

あ、御託はいいから、ただ渡鹿用水の美しい水の流れだけを見たい方用の動画もありますので、よろしくお願いします。


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