プッシャーにおける姿勢傾斜の原因は?【治療動画有り:有料】
どうも、脳卒中の歩行再建を目指す中上です!
今回は3回目のプッシャーに関するnote記事になります!
(セミナー動画のみ有料ゾーン:約1時間)
【前回までの記事はこちら】
・第1回:身体軸の関係性
・第2回:責任病巣(脳画像)の同定
プッシャー症状とは、姿勢崩れに対して非麻痺側で押す(抵抗する)現象が特徴です。
このプッシャーの原因を追及した場合、
・姿勢垂直(自己身体垂直軸)であるSPVの問題
・視覚的垂直であるSVVの問題
の大きく2つの要素が考えられています。
それら2つの垂直軸には、研究方法や傾斜方向にばらつきはあるものの、プッシャー例と非プッシャー例ではその特性が異なるといわれています。
特にプッシャー例では身体軸であるSPVの問題が大きく取り上げられることが多く、視覚的垂直であるSVVに関わる視覚機能や前庭機能には大きな障害が検出されていないとされています1)。
みなさんは、プッシャー例における姿勢の崩れが一体どの部位から生じるのか?といった疑問が浮かんできませんか?
今回は姿勢の崩れをどの部分からみるべきか、まとめてみました!
*臨床経験での解釈なども含めて記載しています。正確な情報発信に努めていますが、より正確な情報を詳しく知りたい方は原著論文を是非お読みください。
姿勢の崩れをどう判断するか?
まず臨床場面で姿勢が崩れている症例を見た際、何をベースに姿勢が崩れていると判断しているかが非常に重要です。
よく姿勢の評価として用いられるのは、アライメントに代表されるようなセラピストの視診・触診(ランドマークを基に左右対称性などをみる)や重心動揺計などから身体重心位置の変化、支持基底面の関係性から読み解くことが多いと思われます。
その他にも評価バッテリーとしてバランス評価に関わるBESTest(Balance Evaluation Systems Test)や、姿勢保持に関わる中枢部分の機能である体幹に着目した体幹機能評価であるTIS(Trunk Impairment Scale)があります。
BESTest(Balance Evaluation Systems Test)とは、
運動制御理論の 1 つであるシステム理論に基づいて考案されたバランス機能評価法。バランス障害を有する患者への治療的介入方針を明確化する目的で考案され,バランス機能に関わる 6 要素である
・生体力学的制約
・安定限界
・姿勢変化-予測的姿勢制御
・反応的姿勢制御
・感覚機能
・歩行安定性
の得点を算出することで個々のバランス機能の問題点を要素別に抽出しようとするものです。
TIS(Trunk Impairment Scale)とは、
・静的座位保持 3 項目(7 点満点)
・動的座位保持 10 項目(10 点満点)
・協調性 4 項目(6 点満点)
の全 17 項目(23 点満点)で構成され、得点が高いほど体幹能力が高いと判定。測定に特別な道具は使用せず、10 分程度で評価が可能で、パフォーマンスの可否やその動作様式で点数を評価する指標。
姿勢を見る上で重要なことは、実際の臨床場面における脳卒中患者様の姿勢崩れの問題点をこれら評価バッテリーと合わせて明確にすることです。
例えば、立位姿勢を評価する際にバランス反応を以下の戦略で評価されることが多いと思います。
・足関節戦略(ankle strategy)
・股関節戦略(Hip strategy)
・ステッピング戦略(Stepping strategy)
また、頭頸部のコントロールにおいては、
・姿勢崩れに対する頸部の水平コントロール(Head stabilization in space)
・体幹による水平コントロール(Head stabilization on trunk)
等の戦略があります。
その他にも、上肢でバランスをとったりしている場合もありますね!
つまり、刺激や動きに対して姿勢をどの部位(頭頸部や体幹・足関節や上肢など)でどうコントロールし、どういった反応を示すのかを評価しています。
これは、プッシャー患者様のような立位ないし座位がとれないケースにおいても同様で、なぜ姿勢が崩れるのか、そしてその崩れた姿勢に対してどういった戦略をとっているのかを評価することがとても大切です。
プッシャー例における姿勢崩れの問題とは?
上述したように、姿勢の崩れを見る際には、どの部位からどのように崩れているかをしっかり評価することが重要です。
では、プッシャーを呈する症例ではどのような姿勢崩れの特徴があるのでしょうか?
Pérennouら2)は、健常者、プッシャー症例、プッシャーのない脳卒中例を対象に、シーソー状に傾斜したボードの上に座り、その際に生じる姿勢変化を頭部・両肩を結んだ線・Th11〜L3を結ぶ線、骨盤傾斜で比較評価しました。
結果として、健常者とプッシャーのない脳卒中例ではいずれもほぼ垂直ないし水平保持が可能だったのに対して、プッシャー例では、骨盤部の偏倚が著明に生じました(左傾斜に対して、左方向への骨盤傾斜が生じた)。
さらにこの現象は閉眼時により顕著に出現しました。
ここで重要なことは、頭頸部においては垂直位保持が可能であり、頭頸部の垂直定位は体幹とは異なることが考えられます(ここには視覚的影響も加わるため)。
SVVの障害に関わるとされる前庭機能は、頭頸部の垂直定位にも影響を及ぼすため、上記研究結果を考えると、プッシャー症例ではSVVの障害が直接的には関与が少なく、前庭機能や視覚機能による代償作用が生じることも示唆している。
つまり、プッシャー症例の問題には姿勢垂直軸の問題および骨盤傾斜による姿勢アライメント不良が大きく関わることが考えられます。
引用・参考文献
1)Pérennou DA,et al:Lateropulsion, pushing and verticality perception in hemisphere stroke: a causal relationship? Brain 131:2401-2413,2008
2)Pérennou DA,et al: Understanding the Pusher Behavior of Some Stroke Patients With Spatial Deficits: A Pilot Study.
Arch Phys Med Rehabil 83 :570-575,2002
プッシャー治療に対する骨盤帯への治療介入とは:動画セミナー(有料:1時間程度)
では、そのプッシャー症例における姿勢崩れ(骨盤傾斜)に対する治療介入はどのように考え、実際にアプローチすべきなのか?
気になる動画はこちら!
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