10分でわかる髄芽腫 medulloblastoma
全てを箇条書き(3-5項目)、体言止めで、一目でわかりやすくを心がけて、まとめてみます。試験的に有料にします。専門的内容です。
概要:どんな病気か 誰がどのように発症する予後が〇〇な「病態」疾患
「2-9歳」の「小脳虫部か半球」に「頭蓋内圧亢進症状」で発症する、「WNT, SHHに関連して」「放射線化学療法によく反応する」代表的胎児性腫瘍
分類:どう細分化されるか、整理の仕方
胎児性腫瘍embryonal tumorの代表
病理組織分類と分子4分類がある(WHO分類では分子4分類)
病理組織分類
classic
desmoplastic/nodular medulloblastoma (DN: 線維型性結節性)
medulloblastoma with extensive nodularity (MEN: 高度結節性)
large cell/anaplastic medulloblastoma (LCA: 大細胞性あるいは退形成性)
分子4分類
WNT-activated
SHH-activated, TP53-mutant (Sonic Hedgehog)
SHH-activated, TP53-wildtype
non-WNT/non-SHH
疫学:頻度と性別と年齢
小児脳腫瘍の中で、星細胞系腫瘍に次いで、あるいは胚細胞性腫瘍に次いで、多い疾患
14歳以下が全体の78%で、2-9歳に後発
男性にやや多い
症状;どこにできてどんな症状が多いか
小脳虫部にできやすい
頭蓋内圧亢進症状が約半数
頭痛、不機嫌、嘔吐、意識障害、失調も
画像
境界明瞭、ほぼ円形
一様に強い造影効果を示すことが多い
造影増強効果は不均一(heterogeneous)
嚢胞性変化、石灰化も
播種あり
病理
髄芽腫を通じて免疫組織化学的に特異的なマーカーは存在しない
classic medulloblastoma
約70%
N/C比の高い小型細胞が高密度びまん性に増殖
花冠状に配列するHomer Wright ロゼットが見られることも
desmoplastic/nodular medulloblastoma (DN: 線維型性結節性)
約20%
境界明瞭で細胞密度が低い結節が島状に出現
結節を構成する細胞は神経細胞への分化を示し、周囲は未分化な細胞
medulloblastoma with extensive nodularity (MEN: 高度結節性)
約4%だが、3歳以下では20%
結節がより大型で癒合傾向
DNとLCAの間のような形態
large cell/anaplastic medulloblastoma (LCA: 大細胞性あるいは退形成性)
約10%
顕著な多形性
大型核、分裂像、アポトーシス
腫瘍細胞が他細胞を包み込むwrapping
核の鋳型像molding
遺伝子分類とその特徴(予後)
WNT-activated;
80%が小児期(3-17歳)症例
髄芽腫の10-15%
90%以上がclassic type
約90%にCTNB1変異あり (*CTNB1: canenin beta 1, WNT signal pathwayの重要な分子であるβカテニンを産生する遺伝子)
予後良好(10年生存率ほぼ100%)
SHH-activated, TP53-wildtype or TP53-mutant
男女差なし、年齢分布均等
PTCH1変異は全年齢に認められる (PTCH1:Patched, SHH pathwayの最初の12回膜貫通型受容体)
小児例でTP53変異が多い(50%) (*Li-Frameni syndromeに関連するgerm lineのTP53遺伝子変異を含む)
classic typeとdesmoplastic nodular typeが多い
WNT群に次いで予後良好(5年生存率71%)
TP53-mutantは予後不良因子
non-WNT, non-SHH
Group 3とGroup 4に分けられていた。8つの亜群に分けるべきとの意見がある
Group 3は、小児期(70%)の男性(女性の2倍)に多い
Group 3は、予後不良(5年生存率50-80%)で、classic typeがほとんど(large cell/anaplastic medulloblastomの比率、診断時の転移や播種率が高い)
Group 4が最も頻度が高い(40%)
Group 4も、小児期(85%)の男性(女性の3倍)に多い
Group4の5年生存率は70%
MYC遺伝子の増幅も独立した予後不良因子
WNT-activatedは、多くが正中発生→小脳脚、小脳橋角部へ進展
SHH-activatedは、乳幼児以外は、90%以上で小脳半球発生
non-WNT, non-SHHは、ほとんど虫部発生→第4脳室進展型
画像所見からの分子分類予測率は約65%
臨床リスク分類
高リスク群(High-risk) は以下のいずれかを満たす
1. 3歳未満
2. 手術にてほぼ全摘出(最大断面1.5cm2以下)が得られていない
3. 髄腔内播種所見
いずれも満たさなければ、標準リスク群(average-risk)
*ちなみに転移の記載は、M0:転移/播種なし、M1:髄液細胞診陽性、M2:脳室/脳槽に転移/播種、M3:脊髄腔内の転移/播種、M4:中枢神経外転移
治療
基本は、神経症状を悪化させない範囲の可及的腫瘍摘出とそれに続く放射線治療と化学療法
色々変遷あり、現在はSJMB03療法
術後照射前に末梢血幹細胞あるいは骨髄前駆細胞を採取、後ほど投与
Average risk群:全脳脊髄照射23.4Gy+後頭蓋窩12.6Gy+腫瘍19.8Gy + 化学療法(CDDP, VCR, CPM)
High risk群:topotecan +全脳脊髄照射+腫瘍部(合計55.8Gy)
3歳未満では当面の放射線療法は避ける(MTX脳室内投与のHIT-SKK 2000 BIS4 もしくは自家幹細胞移植+化学療法のCCG99703)
参考文献
髄芽腫診療ガイドライン
脳神経外科学 第13版 金芳堂
太田 富雄(原著) 松谷 雅生 野崎 和彦 (編集)