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自己研鑽とは何か

甲南医療センターの専攻医が亡くなった件はかなり医療者の中でも
インパクトのある事件でした。これについてはStand fmでも話しています。

この専攻医が長時間労働になった理由の一つに、学会発表の準備があります。これを自己研鑽としていたことなどが議論を呼んでいます。
では、自己研鑽とは何でしょうか。働き方改革によりその定義が少しずつ明確になってきました。今回は何が自己研鑽で何が労働時間となるのか、整理していきます。


自己研鑽と労働が入り混じる働き方

そもそも医師は自己研鑽と労働がモザイク状に存在しています。
例えば、ある患者さんを診ている時に、患者さんの治療方針を診療ガイドラインをみて決定する時や新しい薬剤が適応にならないか検討したりと、通常診療から調べ物に移行することがよくあります。
また、患者さんの経過からそれを学会発表したり、論文にすることもあると思います。
あるいは、手術を見学することは、手術を学んでいる自己研鑽とも言えます。
このように、医師の業務において、自己研鑽がいつからどのように始まって終わるのかは曖昧であったのが現状です。

自己研鑽の定義

厚生労働省の資料から、労働と自己研鑽を定義していきます。

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。

医師の研鑽と労働時間に関する考え方 について
基発0701第9号

医師の研鑽については、
・ 医学は高度に専門的であることに加え、日進月歩の技術革新がなされており、
・ そのような中、個々の医師が行う研鑽が労働であるか否かについては、当該医師の経験、業務、当該医療機関が当該医師に求める医療提供の水準等を踏まえて、現場における判断としては、当該医師の上司がどの範囲を現在の業務上必須と考え指示を行うかによらざるを得ない。
このような医師の研鑽の実態を踏まえ、
・ 医師の研鑽について、労働に該当する範囲を、医師本人、上司、使用者が明確に認識しうるよう、基本となる考え方を示すとともに、
・ 上司の指示と労働に該当するか否かの判断との関係を明確化する手続き等を示すこととする。

医師の研鑽と労働時間に関する考え方 について
基発0701第9号

自己研鑽の条件

明確な指示であっても黙示の指示であっても、上司の指示で行うことは労働であり、自己研鑽ではないということですね。
黙示の指示というのは暗黙のものであり、裏を返せばそれを行わなかった時に、ペナルティがないということが重要です。
また、通常業務とは明確に切り分けられていることもポイントです。
自己研鑽かどうかの判断は、医療機関が求めるレベルによるので、個々の医療機関、組織によって定まるということでした。

具体例と基本的な考え方

具体例と基本的な考え方を厚生労働省は提示しています。(基発0701第9号を一部改変して作成)

  • 診療ガイドラインや新しい治療法についての勉強

  • 自らが術者等である手術の予習や振り返り

→診療の準備行為や診療の後処理の場合は、労働時間

  • 学会や外部勉強会への参加、発表準備

  • 院内勉強会への参加、発表準備

  • 大学院の受験勉強

  • 専門医の取得更新にかかる症例報告、講習受講

→自由意志で、上司の指示なければ、自己研鑽
→実施しない場合に制裁等の不利益があれば、労働時間

  • 手術見学

→自己研鑽。ただし見学中に診療(手伝いを含む)を行った場合は、その時間が労働時間。見学中に診療を行うことが常態化していたら全てが労働時間になる

労働者の医師がやるべきこと

まず、自分の所属している組織が自己研鑽の項目をきちんと定めているか確認しましょう。
病院で行っている場合でも、診療科によって特徴が異なりますので、診療科ごとに定義されているか、あるいは担当者が誰かを確認しましょう。
その上で、普段の診療の中で疑問が沸いたものは、担当者に確認しましょう。

加えて、自分の労働時間と自己啓発時間を管理した方が良いと考えています。良いアプリなどないか探してやっていきたいと思います。

調べてみると、学会発表の準備などは労働時間になりにくいということがわかりました。私個人としては、家を出てから家に帰るまでが労働時間ではないのかと思います。また、どの業界でも仕事をしながらスキルアップするものではないでしょうか。
ただし社会保障費の増加や医療機関の経営難を考えると、なかなか病院にいる時間全てを労働とするわけにはいかないのだろうと思います。
いずれ、きちんと自己研鑽が明文化されて、共有された組織で、黙示の指示がないような文化をもつ組織が増えたら良いなと思います。

最後まで読んでくださり誠にありがとうございます。
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