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日本6位はもはやマス?クラシルのインスタが逆転でNo.1フォロワーになるまで

こんにちは、delyでマーケティング統括の執行役員をしている野村です。Twitterアカウントはこちら。内容おもしろいと思ったらぜひフォローお願いします。弊社代表の大変ありがたい無茶振りを受けまして、重い腰をあげて筆をとりました。Instagram Day Tokyoも盛り上がってましたね。

実はこういった記事を書くにはちょうど良いタイミングでして、リリースも出させていただきましたが、クラシルのInstagramのフォロワー数が、国内のレシピ動画アプリ運営企業アカウントにおいてNo.1となりました。国内全体のアカウントランキングでも38位、企業アカウントとしては6位になります。
※2019年10月時点

国内アカウントランキング(38位)

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国内企業アカウントランキング(6位)

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※どちらもユーザーローカルさんのデータより

なかなかの、錚々たる顔ぶれに囲まれている。。。

ほんの数ヶ月前までは、当時1位のサービスと10万フォロワー以上の差がついていたので、1日あたり約1000フォロワーずつ差を詰めた計算になります(フォロワー数自体は、2019年3月時点の約170万から2019年10月時点で230万まで伸長)。現時点では、逆に+10万フォロワー以上の差をつけており、日々差が広がり続けている、という状況を作ることができています。

事実だけ書くと簡単なようですが、実はクラシルのInstagramアカウントは、開設してから数年間、一度も1位になったことがありませんでした(常に数万〜数十万フォロワーの差が開いていました)。

2019年の3月にSNSが私の管掌領域になり、この「InstagramでNo.1を達成する」という目標をいよいよ本格的にやるぞと決めてから、かなりコンテンツやデータ分析のPDCAを回してきました。クラシルのフィードを見ると、色々なチャレンジをしてきているのがわかるかと思います。

今回は、このNo.1という結果に到達するまでに弊社が行ってきた具体的な施策、PDCAについて、可能な限りデータなども交えながらお話していきます。成功があれば当然失敗もあるので、失敗例も共有していきます。

当たり前ですが、クラシルアカウントではフォロワーを金銭で買うようなことはしたことはありませんので、全てオーガニックでのグロースです。こういったサービスを利用すると海外ユーザーの比率が高くなり、コメント欄も海外ユーザーが多くなったりしますが、結果、フォロワーの数が多くてもエンゲージメントは伸びていない、ということがよくあります。クラシルでは一部英語テロップを入れるなど海外ユーザーにフレンドリーな施策も打ったりはしていますが、8割以上が国内ユーザーです。

また、フォロワー数が200万を超えるような規模になってくると、1ポストあたりのエンゲージメントもなかなか信じられないような反応が出たりします。このあたりのふだんはあまり表には出ないような実数値についても触れながら書いていきます。

記事の中では主にフォロワー数を指標にしていますが、きちんとクラシルのコンテンツを見てくれる、良いと感じてくれるユーザーを増やさなければ、もちろん意味はありません。当然そのあたりも踏まえての指標設計ですので、その点はご理解頂いた上でご覧下さい。結果的にはむしろ、フォロワー数は伸ばしつつ、エンゲージメント率も高めることに成功しています。

結論、大事なこと

いくつか事例や施策について書いていますが、最終的に伝えたい大事なことは、次の3点です。

・愚直に、しっかりデータを見てPDCAを回す
・ユーザーにとって有益だと思えるコンテンツのアウトプットにこだわる
・そのために、フォロワーが求めていること、期待していることを理解する

ここをしっかりと抑えて施策を打っていれば、結果は自ずとついてくると思います。それでは、具体的に見ていきましょう。

伸びる投稿には再現性があるという話

クラシルというサービスにおいて、投稿のエンゲージメントを大きく左右するのはレシピの選定です(レシピサービスなので当たり前といえば当たり前ですが)。どんなタイミングで、どんな特徴を持ったレシピを、どんなクリエイティブで投稿するかによって、大きな差が生まれます。

そして、うまくいった投稿は、かなりの高確率で再現性があります。以下は、クラシルアカウントで直近1年以内に投稿している数多くのコンテンツから、フォロワー獲得が多かった投稿からTOP45を抽出したものです。結果の良いものだと、たった1投稿で数千の獲得につながります。

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クラシルの多種多様な投稿(過去1年なので大体2000投稿)のうちのTOP45ですが、ご覧頂くと、全く同じサムネイルが何度か登場しているのがわかるかと思います。これは、一度好反応だったレシピを一定期間をあけて再投稿してみるというテストを行ってみた結果です。もちろん差はありますが、ほぼもれなく、過去良かったレシピは2回目以降も再現性を持ってしっかり結果が出ています

一定の再現性が見えてくると、どんなレシピであれば伸びるのか、という特徴を分析することで、精度の高い仮説を持った運用をすることが可能になります。その特徴を抽出し、新レシピの考案、テストを繰り返すことで、伸ばせるコンテンツの特徴が見えるようになりました。

つまりクラシルでは、レシピコンテンツにおいて、Instagramで伸びやすいレシピ、クリエイティブを、ある程度の再現性を持って制作することができるようになってきている、ということです。

伸びるものと伸びないものの特徴をしっかりと分析し、違いを見極め、仮説を立て、またテストをしてどんどん改善していく。改めて書くほどでもないめっちゃくちゃ基本的なことなんですが、これを徹底できるかで大きな差が出ると思っています。意外に、ちゃんとやれているところが少ない。

結果としてクラシルでは、1ポストあたり、かなりのリーチを作ることができています。伸びる投稿と伸びない投稿の一番の違いは、フォロー外へのリーチをいかに伸ばせるかです。以下は、それぞれの場合での主要データを比較したものです。

伸びる投稿

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伸びない投稿

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ご覧いただくとわかる通りリーチに大きな差が出ており、特にフォロー外へのリーチが、伸びている投稿は73%出ているにも関わらず、伸びていない投稿は2%で止まっています。ここをいかに作れるかがポイントです。また、閲覧元(リーチは閲覧元ごとに見れないので、インプレッション)にも大きな違いがあります。伸びる投稿になるかどうかは初速の伸びがけっこう大事で、初速を見れば一定レベルでは予測ができます。

この「350万リーチ」は、かなり大きな規模感だと思います。350万はそれなりに伸びた部類の投稿ですが、それでも平均して、安定的に1投稿あたり100万リーチは超えてきます。

クラシルは1日に4〜5投稿をしているので、100万リーチ × 4投稿 × 30日 で、月間延べ1.2億リーチが出る計算になります。無作為ではなく「料理・食に深く強いインタレストを持った」リーチで、この規模感です。もちろん既存フォロワーへのリーチが大きいので重複しているユーザーも多いですが、例として示した通り、伸びる投稿はフォロー外へのリーチが大きく伸びるので、ここをしっかり作れていることで、リーチの幅は広がっていきます。

このリーチ数を見ると、(この記事を読むような方には釈迦に説法かもしれませんが)もはや特定領域における「マスメディア」は、InstagramやTwitter、Youtubeなどを中心としたオンラインに移ってきていると言えると思います。

仮にテレビCMで数百〜数千万人の単位でリーチを取ろうと思うと、どのエリアで出稿するかにもよりますが、それなりのコストもかかりますし、取り組みのハードルは高いと思います。かつ、テレビCMでは精緻なターゲティングも不可能で、よくも悪くも「広いリーチ」に強みを持ったメディアです。

いわゆる「CPA偏重の刈り取り」だけをオンラインに任せるのではなく、広いリーチが得られることで、認知獲得やサービスへの興味関心を醸成する、といった役割でも、オンラインメディアは十分に活躍することができると思います。

事実クラシルでは、サービスの認知経路を定量調査などで取得すると、「SNS」という回答がかなりのシェアで上位にきます。デジタルならではの「狭いが深い」という質的な面だけでなく、「しっかり多くのユーザーに届ける」という、量的な面でも、十分に機能するようになってきていることを実感しています。
※当然、この感覚を得るには一定量の規模感は必要になります。クラシルのアカウントは、100万、200万と伸びてくる中で、そのくらいの規模感になってきている、ということだと捉えています。

話を戻しますが、クラシルでは、この「伸びる投稿」をある程度の再現性を持って作れるようになった結果、最も重要な「レシピコンテンツの制作及び選定」において、施策の精度を上げることができた、というのが大きなポイントです。

フォーマットの改善とその意図の話

これもかなりの当たり施策でした。実際の投稿を見てもらうのが早いと思いますが、最近のクラシルは、こういったカルーセルフォーマットでの、まとめコンテンツの投稿比率がかなり増えてきています。様々な指標で明確に効果が良いからです。

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これを「フォーマットの成功」で済ませてしまうとそれまでなんですが、ここで大事になるのはその施策意図と背景です。それを説明していきます。

エンゲージメントを高めるために大切な視点として、クラシルでは「保存」を重要視しています。それは、Instagramにおけるレシピコンテンツは、その場で消費されるものではなく、「あとでレシピを探したりする際に見返す」という使われ方がメインになるからです。Yahoo!やGoogleで検索する(「ナス レシピ」とか)といった能動的な行動であれば、明確な目的を持って行われるものであるため、コンテンツはその場で消費される(今探している、答えを求めている)ことがメインになると思いますが、Instagramは受動的にコンテンツに接触するタイプのメディアであり、必ずしも料理をするモーメントに重なって接触するとは限りません。むしろそのほうが稀でしょう。

その前提に立つと「あとで(いつか)作りたい・参考にしたいレシピ」ほど、ユーザーにとって有益なコンテンツであると整理できます。だからこそ、そういったコンテンツを提供しているアカウントほど保存する機会も増えていくし、その結果として、フォローして継続的にそのアカウントと接触したくなるはずです。
※ちなみに最近やたらと「保存が重要だ」というような文脈を見るような気がします。当然重要な指標ですし、決して間違ってはいないと思うのですが、例えばこの記事を読んで「やはり保存が大事なんだ!」と短絡的に考えるのではなく、「自社のコンテンツがどういう使われ方をするか」という観点から逆算して考えるのが大事だと、delyでは考えています。

この「あとで(いつか)作りたい・参考にしたいレシピ」の現時点での一つの解が、カルーセルフォーマットのまとめコンテンツです。単発のレシピではなく、一定の軸でまとめられたコンテンツにすることで、よりユーザーにとっての便益を向上させることができていると思います。

こういった施策の意図を表現する手段として「カルーセル」というフォーマットが適切だった、ということです。前述の通り、結果としてはフォーマットの成功ですが、その背景をご理解いただくと、なぜうまくいったのかがより腑に落ちたはずです。

エンゲージメント、フォロー獲得、リーチなどのあらゆる指標において、このフォーマットのほうが、通常のレシピ動画単体での配信と比べて1.5〜2倍程度のパフォーマンスが出せています。

便益を読み違えたバレンタインの話

2つほど成功事例をご紹介しましたが、ひとつ失敗例をご紹介します。レシピサービスにとって、バレンタインは一番の繁忙期です。

普段あまり料理をしない方も手作りでチョコを作られたりするからなのですが、クラシルでも当然、バレンタインには力を入れてサービス提供をしています。

クラシルのInstagramでは1日に4〜5投稿を基本のペースにしているのですが、今年のバレンタインは、 2月に入ったあたりからその投稿全てをバレンタイン向けのスイーツレシピに変えて投稿を行いました。その結果、フォロワー自体は伸びてはいたのですが、成長ペースが一気に鈍化してしまい、競合サービスとは、逆に差を広げてしまうことになってしまいました。

この施策は、クラシルのInstagramをフォローしてくれている方々の期待を裏切ってしまった、ユーザーにとっての便益が無視された施策になってしまったと、振り返って感じています。

クラシルのフォロワーは、20〜40代の、日常的に料理をする女性が中心です。コンテンツとしては、たまにしか作らないレシピや、「バズりそうだけどこれ誰が作るの」みたいなレシピは、配信したとしてもほぼ伸びることはありません。簡単に、日常的に作れるレシピ」が求められている、期待されているのです。

バレンタインに話を戻すと、それ自体は大きなイベントではありますが、当然、全ての方が手作りチョコを作るわけではありません。クラシルをフォローしてくださっている、日常的に使えるレシピを求めている方からすると、一定期間とはいえ、スイーツのレシピしか投稿されないアカウントになってしまったというのは、アカウントに対しての期待とずれたコンテンツになってしまっていたことと思います。

同期間にクラシルよりもフォロワーを伸ばしていた競合サービスは、1日のうち、バレンタインの投稿は半分程度に抑えられていました。

まさに「このアカウントは、ユーザーにどんな便益を与えることができるアカウントなのか」をしっかりと整理し、それを徹底することが大事である、という基本的なことを改めて認識することができた体験だったと思います。

バレンタイン以外でも、いろんなフォーマットを試したりしました。いわゆるバズレシピっぽいテイスト(もし「確かにクラシルっぽくない!」と感じたら、あなたはなかなかのレシピ動画通です)で作ってみたり、ミニチュアクッキングの動画コンテンツを出してみたり、エイプリルフールや新元号発表のタイミングに、遊び心のあるコンテンツを出してみたり。

いわゆるバズレシピっぽいテイスト

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普段の動画とは違うコンテンツ

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でも結局、ユーザーの期待にそぐわないであろう、表面的に工夫しただけのコンテンツは、何度試しても伸びることはありませんでした。エンタメ要素の強いコンテンツは、コメントは伸びることはあっても(むしろコメントは伸びます)保存は増えず、フォローも増えないのです。この結果こそが、(クラシルアカウントにとっての)本質だと思っています。

ちなみにエイプリルフール企画の「透明ハンバーグ」ネタは、Twitterでは爆伸びし、フォロワーもかなり増えました。ついているコメントも、それぞれで全く違います。メディアの特性による違いはかなりあるなあという点も深掘りしていきたいところですが、それはまた別の機会に。

おまけ:StoriesもPDCAを回している話

新規フォロワーの伸びにはほぼ貢献しないんですが、既存ユーザーとのエンゲージメント構築という意味で、Storiesでも色々と試してみています。

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フォーマットによって反応率もけっこう違ったりするのでなかなかおもしろいです。細かい部分ですが、このあたりのブランドとしてのトンマナのコントロールは、Instagramというビジュアル重視のプラットフォームにおいては、けっこう大事かなと思っています。

まとめ

クラシルがNo.1になる上で実践してきたことについて、いくつか具体的な事例を元に書いてきましたが、参考になりましたでしょうか。Instagramのグロースにおいて大事なことは、冒頭に書いたこの3点に集約されると思います。

・愚直に、しっかりデータを見てPDCAを回す
・ユーザーにとって有益だと思えるコンテンツのアウトプットにこだわる
・そのために、フォロワーが求めていること、期待していることを理解する

結果として、「このアカウントは、ユーザーにどんな便益を与えることができるアカウントなのか」がしっかり定義され、ぶれない軸として、認識・共有できている状態を目指しましょう。

これを忘れず継続的に取り組めば、結果はついてくるはずです。

そもそも、売上に直結しにくいと言われるSNSになぜ力を入れ、どのような目的で運用しているのか?今回はInstagramの話をしましたが、各メディアごとに特性やユーザー属性が異なる中で、どのように役割を整理しているのか?といったもう少しマクロな視点での戦略なども、議論できるとおもしろそうなので、いつか機会があればアウトプットしてみようと思います。どうしても気になる、ぜひ話してみたい、という方は、TwitterFacebook等でご連絡下さい。

また、クラシルのInstagram(に限らず、その他のSNSやオウンドメディアなども含めて)をビジネスで活用してみたい、といったご相談もお待ちしております。お問い合わせはこちら

最後に、今回はあくまで一部の施策をご紹介しているだけなので、実際には数十の施策群と、それ以上のPDCAが回っています。

立場上この記事は僕が執筆しましたが、実際に悪戦苦闘しながら結果を残してくれたのは現場のメンバーであることを、補足しておきます。よくがんばってくれました。delyには、優秀なメンバーが育ってきてくれています。

そんなdelyのマーケチームですが、驚くほど人が足りません。主要ポジションも含め、超超積極募集中です。こんだけInstagramについて書いておきながら、クラシルのSNS戦略全体を引っ張ってくれるSNSマーケターもおらず、絶賛募集中なので、我こそは!という方、ご連絡お待ちしています。このnoteを書くついでに計算してみたら、SNS全体で570万フォロワーを超えていました。こんな大きな規模でチャレンジできる環境は、なかなかないのではと思います。腕がなりますね。

それ以外にも、プロモーション戦略をリードするプロモーションチームのマネージャー。アプリ/ウェブなどの様々なチャネルを横断したCRM戦略を担うCRMチームのマネージャー。クラシルに紐づくコンテンツの制作やデザインなどの制作全般を任せるクリエイティブディレクター

などなど、ほんとにチャレンジングなポジションがたくさんあります。詳細はこちらをご覧下さい。ぜひ、まずはお気軽にお話しましょう。

野村に直接のご連絡でも大丈夫です!

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