地獄を見てるのかと思った。(5)
「知り合いの県職員さんが、村おこしの会社で職員を探してるってよ。話してみる?」
そこは家から10分くらいの、山間の村だ。
最近クリエイターが集まってカフェを作ったりイベントを企画したり、コミュニティスペースを作ったりなど、村を盛り上げようと頑張っている会社の名前だった。
その夜、その県職員の荒木さんとSNSメッセンジャーでチャットした。
「こんばんは!この度は引き受けてくださってありがとうございます!」
チャットの文面では、とても気さくでやる気に満ち溢れていた。
業務内容、交通費について、雇用形態、時間、今までの私の経験について、聴覚障害のきこえなさ・どういう配慮が必要か…などを詳しく話した。
どんな環境の職場なのか、育児をしながら働いている職員はいるのか、副業は大丈夫か…というようなことを荒木さんも丁寧に教えてくれた。
「では、週末に社長にお伝えしますね!ありがとうございました!」
「ありがとうございました、どうぞよろしくおねがいします」
「いえ、障がいのある方がいることで、新たな風が吹くかもしれないですからね!」
メッセンジャーは1時間ほど。長く話したなと思った。
会社のHPを検索して、どんなことをしているのかというのを調べた。
農家の昔ながらの古い住宅をリノベーションして、交流の場にしてイベントを開いたり、庭で農業体験や民芸品の作成体験をしてたり
地域の名産を加工して、東京をはじめとした都市でのアンテナショップでの出店にも関わっているらしい。
「社員はマルチに活動してもらいます!」と、荒木さんは言っていた。
そのような会社で、自分は何が出来るだろう、企画は得意だ。学生時代から団体のゲーム企画や勉強企画をいくつかやって
社会人になってからも、3000人が来場するイベントのブースも企画して、それがなかなか評判がよく、新聞などに取り上げられた経験がある。
後はコミュニケーション。
どうにか「こういう配慮があれば働ける」という冊子というかコンテンツがあれば会社の人も企業としてもやりやすいんじゃないか。
あたしはノートを手に取り、聴覚障害から来る自分の困難について
細かくノートにまとめ始めた。
ここからが
地獄の始まりだとは知る由もなかった。
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