
エンジニア中途採用経験者向け 新卒面接差分マニュアル
エンジニアの新卒採用の面接官にアサインされた!だけど中途採用の経験しかないので色々と勝手がわからない!時間も無いので誰か重要な部分だけをかいつまんで教えてほしい。。。
本記事ではそういった方に向けて手っ取り早い差分のマニュアルを提供します。内容を参考にして面接の準備をしっかりと行っていきましょう。
前提として理解しておくべき差分
まずはじめに、新卒採用として面接する対象になる人材が、中途採用の人材と大きく異なる点について知っておくべき差分について解説します。
社会人経験が無い
人によっては、アルバイトやインターンシップなどの経験があるかもしれませんが、基本的に社会人経験がありません。それによる中途との大きな能力差分としては「ソフトスキル」があげられます。
ソフトスキルは、コミュニケーション能力や問題解決能力、時間管理能力などがあげられます。これらのスキルは経験により培われていくものだったり、業務のような能力を十二分に発揮する環境で強く育成される性質になっています。
なので選考官から見て「最近の若いもんは〜」になるのは当たり前ですので、些細な事は大目に見るようにしましょう。
また、2020年 〜 2023年のコロナ禍を学生時代のどこかに経験しており、ソフトスキルを養う場が不足していた世代でもあるため、その前の世代である第2新卒 (新卒1〜3年目) とのギャップがあることも理解しておく必要があります。
メディア・リテラシーが十分にない
情報源から情報を読み取り活用する能力はメディア・リテラシーと呼ばれていますが、メディア・リテラシーは才能ではなく経験で培っていくものなので、新卒世代ではそこが足りていません。
具体的にはググる力が弱いに始まり、エラーメッセージから解決するまでの道筋がおかしい、情報源からの汲み取り方が浅い、特定技術の使い所が変、などがあります。
ただ単に知らないだけですので、少しぐらいおかしなやり方をしていたとしてもそれだけで悪い評価をしてはいけないと知っておく必要があります。
開発経験に大きな差がある
人によって開発経験に天と地ほどの差があります。むしろ天の方は想像を遥かにしのぐ人材が存在するレベルです。
数回新卒面接を行った程度では、市場としての「平均」を理解するまでに時間がかかります。新卒採用基準は存在していても、実際は相対評価を面接官の頭の中では考えていることでしょう。なぜなら基本的に中途採用は所属しているメンバーを基準にして相対評価を行う事が多いからです。
新卒面接を始めてから暫くの間は、評価をする際にこれまでの「平均」を上回る / 下回る 場合でも安易に相対評価をすることは避けて、慎重に採用基準と照らし合わせて評価していく必要があります。この場合の期間目安として1期分 (新卒1年分) はみたほうが良いでしょう。
面接における差分
本題である、新卒面接の内容について、中途面接からの差分として頭に入れておくべき内容やテクニックについて解説します。
アイスブレイクは不要
とても緊張している人が多いです。中途採用では序盤にアイスブレイクを挟むのが定番ですが、会話が成り立たないレベルで緊張しています。
原因としては「最初の自己紹介」に全集中しているからだと考えています。そのため、アイスブレイクを挟まず、緊張の原因である自己紹介に素早く移ったほうが良いでしょう。
自己紹介が終わった後も油断できません。噛んでしまってスムーズに話せなかったりなど自分の理想と違った結果にショックを受け、うわの空になっていることも多いからです。自己紹介が終わった後は、内容で興味を持った部分について面接官から明るく話題を振るなど、前向きになれるような会話が出来ると良いと思います。
そういう意味だとアイスブレイクは自己紹介の後にするという考え方でもいいかもしれません。
会話慣れと面接慣れの早期切り分け
採用ポイントで最も重要なのはコミュニケーション能力 (タイプ) であり、限られた時間の面接の中で面接官が見極めなければならない部分です。
中途採用経験者であれば10分程度話せばおおよそのコミュニケーションタイプの検討がつくのではないかと思いますが、新卒においてはその判断は誤っているかもしれません。
うまくコミュニケーションを取れているように見えて、実は面接慣れしているだけの可能性があります。面接慣れしていると質問への回答が早くなり、また的確な回答が多くなる傾向があります。この傾向が判断を誤る要因になります。
会話慣れなのか、面接慣れなのかの見極めには抽象的な質問を活用しましょう。例えば、技術選定時にはどんなことを考えて決めているか、採用した技術について今はどう思っているか、などです。
誤ったコミュニケーション能力 (タイプ) の判断をすると、次回以降の選考官が期待値を誤り、悪い方にジャッジされてしまう可能性があります。コミュ力が高いのが正解でも無いですので、正しく見極めてあげましょう。
技術力の伸びしろを評価
新卒面接を行っているタイミングと、実際に入社するタイミングには約1年ほど開きがあります。そのため、入社するまでの期間での技術力の向上を追加で見込むことができます。
新卒採用においては、現時点での技術力だけを評価/判断するとなると採用基準は高くなりすぎてしまいます。そのため、「技術力の伸びしろ」を適切に評価に加えていく必要があります。
技術力の伸びしろを評価するためには、現時点での技術に関する感度 (アンテナ) の高さや、実際に特定期間で習得した技術の習熟度 (理解度) 、入社までの期間に予定しているアクションなどを元に総合的に判断していくと良いでしょう。
当然ですが、伸びしろの大きい人材は入社後の1年間では更に向上していくことが見込めます。早期の戦力化を見込むためにも伸びしろに着目していくほうが良いと思います。
質疑応答で面接官の就活時エピソードを聞かれる
中途採用の質疑応答パートで「XXさんが今の会社に入社されたエピソードを教えて下さい」と聞かれることは時々あるのではと思います。よほど昔でない限りその場で思い出せるレベルのエピソードなので、回答には苦労しないのではないでしょうか。
これが新卒採用になると「XXさんが新卒で入社されたときのエピソードを教えて下さい」になることがあります。相手からすると面接で就活の会社選びロジックについて毎回聞かれるので、逆に就活の参考にしようというのが狙いなのだと思います。面接官の年齢にもよりますが、場合によっては10年以上前の記憶をその場で引っ張り出した上で、それなりにサマになる回答を出来る人はいないでしょう。
事前に聞かれることを想定して思い出しておくか、昔過ぎてどうしようもなければ新卒のためになりそうな回答を準備しておいたほうが良いです。
その場でのフィードバックを求められる
中途採用では見られないものとして、新卒採用では面接の最後にその場で今回の面接内容のフィードバックを求められるというのがあります。多くは無いにしろ、10回やれば3回程度は求められるでしょう。「面接」に初めて向き合っており期間も短いため早急に改善していく必要性から求められるのだと思います。
フィードバックについては、会話の内容や面接官の感想だけでなく、話し方や話の聞き方、技術に関するアドバイスなどが良いと思います。ただ、合否 (主に不合格) を匂わせるようなフィードバックはしないように心がけてください。雰囲気的に叱っているようになり、慣れていないので戸惑ってしまい、場合によっては泣かせてしまうかもしれません。
フィードバック内容の構成は、褒め3 : 改善1 or 2 ぐらいが適切です。なおかつ 褒め1 -> 改善点 -> 褒め2 のようにサンドイッチ構造で話せると相手は気持ちよく終われると思います。
絶対に「説教」しないように気をつけましょう。
最後に
中途と新卒の採用で差分を中心にまとめました。実際にやってみると新卒と自分の年代の違いを痛感するのではと思います。
記事中には書きませんでしたが「共感ポイントを無理に探さない」というのもあります。中途採用では、面接官である自分との共通項を探すことで感情移入し、相手の思考をより深く理解できる「共感ポイント」を探す人も多いのではないかと思います。が、正直言って経験の差や時代の違いもあり難しいです。諦めましょう。
相手からすると「妙な部分で何度も掘り下げようとしてくる〜」と不安になるので止めたほうがいいでしょう。
新卒採用は経験している中途採用に比べると難しく感じると思いますが、フレッシュなエンジニアから情報を吸収出来る良い機会ですので、根気強く頑張っていきましょう。
記事には書きませんでしたが、新卒も含んだ採用市況などについては久松剛さんのnoteが参考になると思いますのでリンクを貼っておきます。面白いです。