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【考察・仮面ライダークウガ】第1回「ライジングフォームとアルティメットフォームの関係性について」

 仮面ライダークウガの強化形態『ライジングフォーム』は最強形態である『アルティメットフォーム』の力の一部が発現した状態。


 ……というのは最早ファンの間では周知の事実となっている。しかし実はライジングフォームの公式設定においてアルティメットフォームとの関連性が言及されたことはない。

 書籍に見られるライジングフォームの設定は当時から現代まで一貫して

❝ 五代が心停止に陥った際に施された電気ショックによって基質変化を起こしたアマダムが、五代のさらなる力を求める意志を受けて電気的なエネルギーを生成・放出するようになったことで誕生した強化形態 

 というような内容でしか記載されておらず、そこに「アルティメットフォームの力の一部である」などという記述は一切ない(一応、当時の児童誌に載っていたという話も聞くが、私は真偽を確認できていないためここでは考えない物とする)。

 では本当はライジングフォームとアルティメットフォームは関係ないのか。

「ライジングフォームはアルティメットフォームの力の一部が発現した状態」というのはデマなのか。

 ここではライジングフォームとアルティメットフォームの関係性について考察していく。


【ライジングフォーム・アルティメットフォームとは】

 この記事を読む人にはいまさら説明不要だろうが、念のためライジングフォームとアルティメットフォーム、さらにアメイジングマイティについて簡単に解説しておく。

 ライジングフォームとは『仮面ライダークウガ』の物語中盤に登場した強化形態で、上記した通り心停止の際の電気ショックがきっかけで誕生したイレギュラーな形態であり、碑文に記載されていなかったことから本来のクウガには存在せず、現代で新たに生まれた形態とされている。クウガの能力を司る霊石『アマダム』が放出するようになった電気的なエネルギーは『金の力』、設定上の名称では『ライジングパワー』とも呼称され、クウガの各形態を強化することになった。

 そのため『ライジングフォーム』というのはライジングパワーによる強化形態の総称であり、個々の形態名は『ライジングマイティ』『ライジングドラゴン』等になる。
※クウガはライジングに限らず単語二つの名前では『フォーム』とは付かない。

「電気ショック程度のエネルギーでそこまでパワーアップするのか?」

 という疑問をたまに見かけるが、ライジングフォームは「電気ショックによってアマダムに基質変化が生じた結果、電気エネルギーを生成・放出できるようになり、それが戦闘用に使われた状態」であり、電気ショックのエネルギーを吸収・放電しているわけではない。
※ただし同じ『金の力』を使うゴ・ガドル・バは「電気エネルギーを吸収して」電撃体となっているようである。


 次にアルティメットフォームだが、これはいわゆる最強形態・最終形態であり、アルティメットの名の通り究極の力を持っている。

 アルティメットフォームはラスボスであるン・ダグバ・ゼバと同様の『究極の闇をもたらす者』とされており、クウガの心が怒りや憎しみに支配された時に発現する暴走形態とされていた。当然、五代も使うつもりはなかったが、ライジングフォームのさらなる強化形態『アメイジングマイティ』ですらダグバには全く通用しなかったため、最終決戦において使用を決意。本来憎しみによって誕生するアルティメットフォームに優しい心のまま変身し、ダグバとの死闘を繰り広げた。

「手からプラズマイオンを放ち対象をプラズマ化して内部から燃き殺す」というえげつないチート技『超自然発火能力』が有名で、劇中唯一使った能力がこれだけということもありアルティメットフォームの代名詞にもなっている。


 そしてアメイジングマイティ。

 これはゴ・ガドル・バに敗北し、心停止に陥った五代が二度目の電気ショックを受けたことでライジングパワーが強化されたライジングフォームのさらなる強化形態だ。二度目の電気ショックによってそれまでは30秒しか維持できなかったライジングフォームの長時間使用が可能となり、ガドルとの再戦では最初からライジングマイティに変身し、最後の必殺技の打ち合いにてこのアメイジングマイティへと姿を変えた。その姿はアークルが見せた幻の中にいた『凄まじき戦士』ことアルティメットフォームを思い起こさせる『黒』だった……というものである。

 バンダイに無断で出した(※)形態として有名で、当時の玩具『装着変身』は未発売(後に海外版でのみ販売)。超全集でも最終形態であるアルティメットフォームより後ろに掲載されるなど、少々特殊な立ち位置にいる。

※この噂は高寺プロデューサーが否定し「ライジングマイティのカラバリの予定だったのに左足にアンクレットを追加したせい」と訂正。これが新たな定説化したのだが鈴村監督はこれを「全く違う」とさらに否定。BDの特典映像『検証~ドキュメント・オブ・クウガ~』にて当時バンダイでクウガのキャラクターデザインを担当した野中氏もアメイジングマイティについて「我々(バンダイ)も知らないことだった」と発言しているため、やはり当初の噂通りバンダイに無断で出したのかも知れない。


【ライジングフォームとアルティメットフォームの関係性】

 さて、そんなライジングフォーム&アメイジングマイティがなぜアルティメットフォームの一部と囁かれるようになったのかと言えば、劇中にそれを匂わせる描写が散見されるためである。

  • 碑文の解読を担当した沢渡桜子が、『凄まじき戦士 雷の如く出で』というアルティメットフォームを指す碑文と『戦士に雷が現れた状態』であるライジングフォームに関連性を疑っていた。

  • 二回目の電気ショックでライジングパワーのさらなる強化を得たアメイジングマイティは生態甲冑がアルティメットフォームのような『黒』に染まった。

  • 最終回にてゴウラムには『凄まじき戦士』の出現を感知して砂になるシステムが搭載されていたことが明かされたが、それ以前にビートゴウラムにライジングパワーを使った際にはゴウラムが謎の退色現象を起こしていた。

 以上の三点がライジングフォーム&アメイジングマイティがアルティメットフォームの一部=緩やかなアルティメットフォームの発露であるとされている根拠である。

 前述したように、設定としてこの推論が肯定された事実はないのだが、実は「設定としては無い」だけでインタビューにはそれを意味するような内容がある。

 書籍『テレビマガジン特別編集 仮面ライダークウガ』にて、高寺プロデューサーが当初物語の中盤で最強フォームが登場する予定だったが「アルティメットフォームへ至る流れを自然にするため」という趣旨のもとライジングフォームが作られたことを語っている。これは「徐々にアルティメットフォーム化していく、という表現のために用意された形態」と言い換えることができるだろう。

「ライジングフォームは、アルティメットフォームへ至る流れを自然にしようとして当初の案を変更して考え出されたものです。

講談社.『テレビマガジン特別編集 仮面ライダークウガ』.76P

 高寺プロデューサーは同誌内の46話の解説でもアメイジングマイティを指して「グローイングアルティメットフォーム」とコメントしている。ライジングパワーによる強化を重ねることでグローイング……つまり『不完全なアルティメットフォーム』になるのだから、ライジングパワーによる強化は『アルティメットフォームに近づく現象』と言っていいだろう。

(高寺)アメイジングマイティは,意味合い的にはグローイングアルティメットフォームですね。力を極限まで使わないと敵を倒せないことに,五代も薄々気がついていたんです。

講談社.『テレビマガジン特別編集 仮面ライダークウガ』.100P

 デザイン面でも手の甲にリント文字が刻まれるのはアルティメットフォームとの共通点であり、アルティメットフォームの全身に走る血管状組織はライジングマイティの右足にマイティアンクレットと共に出現したラインと同じ物という設定もある。『仮面ライダークウガ COLLECTION BOX』に収録されている『THE ART OF KUUGA[仮面ライダークウガ デザイン画集]』にはライジングフォームのベルトである『ライジングアークル』が元々はアルティメットフォーム用にデザインされたものを流用したことも記載されている。
※ちなみにアルティメットフォーム用のアークルは最近では『アルティメットアークル』とされているらしいが、以前はアルティメットフォームのアークルもライジングフォーム時のアークルと同じ『ライジングアークル』という名称だった(色と形状が一部異なるのに)。

 以上の点から見ても「ライジングフォームがアルティメットフォームの力の発露である(一部である)」というのは、ほぼ事実と言っていいだろう。

 アルティメットフォームはライジングフォームの武器を生成できるが、これも順番を考えれば「アルティメットフォームがライジングフォーム用の武器を使える」のではなく「ライジングフォームがアルティメットフォーム用の武器を使える」と言った方が正しいのかもしれない。

 ただし繰り返しになるが、いまのところ公式設定としては存在していない。

 あくまで「推察できる事実」であって「開示された公式設定ではない」ことには注意が必要だろう。


【電気と何の関係が?】

 ライジングフォームは上記の通り心臓マッサージの電気ショックがきっかけで誕生し、電気的なエネルギーによってパワーアップしている形態だ。しかしアルティメットフォームの属性は強いて言えば『闇』であり電気属性ではない。

「なぜ電気的なエネルギーがアルティメットフォームの発露なのか」とお思いの方もいるだろう。

 これについては、霊石アマダムの持つ能力を見ればわかりやすい。

 アマダムの力の本質はモーフィングパワー、いわゆる「原子・分子の分解・再構築能力」だ。
※この『モーフィングパワー』という名称は超全集に「武器を作る能力」として記載されているものだが、武器生成も変身も原理は同じ。

 一方『電気』とは原子核の周りを回っている電子が自由に動ける状態にあり、それが一方方向に流れる現象を指す。言ってしまえば『電気』とは原子の構造によって起こる現象の一つなのだ。

 原子の構造によって起こる現象という意味では『プラズマ』も同様であり、アルティメットフォームにはプラズマによる自然発火能力が確認されている。
 このようにアルティメットフォームの本質がモーフィングパワーの最大化であると解釈するのであれば、モーフィングパワーが電気という形で発揮されることが「アルティメットフォームの発露」になるのはそう考えにくいことではないだろう。

 とはいえ、これはあくまで「こう解釈すれば違和感はない」というだけの話で公式設定というわけではないのであしからず。


【ライジングアルティメット】

 さて、ライジングフォームとアルティメットフォームの関係ついでに、ライジングアルティメットについても触れておこう。

『仮面ライダークウガ ライジングアルティメット』はクウガの変身形態の一つであり、その名の通りアルティメットフォームの更なる強化形態だ。しかし登場したのはクウガ本編ではなく『仮面ライダーディケイド』の映画作品『オールライダー対大ショッカー』である。

『オールライダー対大ショッカー』において、『地の石』という『仮面ライダーBLACK』を原作とするアイテムによってディケイド内でクウガに変身する青年、小野寺ユウスケが洗脳されると同時にこの姿へ変身した。

 元々11形態あったクウガはこれで12形態を持つことになったが、ライジングフォームやアメイジングマイティは電気ショックを受けたことで偶発的に誕生した本来クウガには無い力であることを考慮してか、小野寺クウガには見られないため、12形態というのは

『6形態+イレギュラー5形態で11形態に変身できる五代雄介のクウガ』

『6形態+イレギュラー1形態で7形態に変身できる小野寺ユウスケのクウガ』

 の合算であり、『12形態全てが使えるクウガ』というのは存在しない(ゲーム作品にはいるかも)。というかライジングフォームやアメイジングマイティは存在自体が五代を表すことになるからか映像作品で客演したことは一度もない。

 一応『仮面ライダーウィザード』の特別編にて「少年にサムズアップするクウガ」という五代を思わせるクウガが登場しライジングアルティメットになったりはしたが……。

 さて、このライジングアルティメット。いまでこそ評価も落ち着いたが、当初は非難轟々だった。

 単純にスマートなアルティメットフォームにゴテゴテとした装飾を追加したことに対する苦言も多かったが、なにより原典のアルティメットフォームが非常に人気かつ

「最終決戦でのみ使用された禁断の形態」
「五代だからこそ制御できた力」
「伝説を塗り替えた存在」

 とファンからの思い入れ、特別感が非常に強い存在だったことから、安易なパワーアップでそれを超える(しかも五代ではない別のクウガが)ことには難色を示す声が多かったのだ。

 そして、そんな否定的な声の中には「そもそもライジングフォームはアルティメットの力の一部なのにアルティメットがライジングになるなんておかしい」という声も多分に含まれていた。

 前述した通りライジングフォームが緩やかなアルティメットフォーム化なのはほぼほぼ事実と思われるため、確かに名称としては「緩やかにアルティメット化してるアルティメットフォーム」では意味不明になってしまう。

 実際、X(旧:Twitter)上にて「ライジングアルティメットが原作クウガに出る予定だった」という噂に対し、高寺プロデューサーは「アルティメットがライジング化するという発想はないように思います」と回答しており、鈴村監督も別件で「設定的におかしいじゃないですか。アルティメットがライジングになるなんて」とコメントしている。

 お二方の「発想はない」「設定的におかしい」という表現からもやはりライジングフォームはアルティメットフォームに含まれる物であることが伺えるが、それはさておき。

 ここまででは確かに『ライジングアルティメット』という名称は意味不明かも知れない。

 しかし、そもそも『ライジング』という単語は「上昇する、増加する」……つまり「強化」というような意味でしかない。語感から「雷神」や「ライトニング(電光、稲妻)」を連想しやすく、実際クウガでは電気的なエネルギーを『ライジングパワー』としていたので電気的なイメージを持たれやすいが、特に電気的な意味合いはないのである。

 ライジングマイティは『強化マイティ』だし、ライジングアルティメットも『強化アルティメット』なので英単語の意味だけで考えるなら何もおかしくはないと言える。

 またネット上ではライジングアルティメットをその名前と金色が増えた外見から「金の力で強化された」としている情報も見られるが、実際のところライダー図鑑やディケイド超全集といった公式資料においてライジングアルティメットに対して『金の力(ライジングパワー)』の記載はない。

 つまりライジングアルティメットは名前が同じというだけでライジングフォーム(金の力/ライジングパワーによる強化)ではないのである。

 たしかに同じ世界に存在すれば意味不明な名前になるが、上述したように五代はライジングアルティメットを持っていないし、小野寺はライジングフォームを持っていない。『ライジングフォーム』と『ライジングアルティメット』は同じ世界には存在しないのだ。

 ライジングアルティメットという名前に納得いかない方も、別々の世界に生まれた『本来クウガの変身システムには存在しないイレギュラー形態』が同じ名前を冠しただけで、アルティメットフォームがライジングパワーを得たわけではないと解釈すれば、多少は飲み込みやすくなるのではないだろうか。

 まあライジングアルティメットを思いついた人がどこまで考えてたかは知らんけど……。


 というわけでライジングフォームとアルティメットフォームの関係性についての考察(解説?)でした。

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