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【考察・仮面ライダークウガ】第3回「マイティフォームの強み」

『仮面ライダークウガ』の基本フォームであるマイティフォーム。基本フォームなのでクウガといえばこの姿なのだが、ネット上ではたまにではあるがその存在価値を疑問視されているのが目に入る。

「ドラゴンかゴウラムで距離とってペガサスで撃てば?」
「格闘戦ならタイタンでいいでしょ」
マイティで戦う意味ある?

 という具合である。ペガサスで遠距離から攻撃できれば一方的に勝てるし、格闘するにしてもタイタンはキック力がマイティと同等でパンチ力が倍以上なのでマイティより適任……という理屈だ。
 ネットでしばしば囁かれるペガサス無双説といい、何かとペガサスフォームが万能扱いされがちなことついては色々ツッコミたいこともあるが、それは別の機会にするとして……まあ言わんとせんことは分からないでもない。

 では本当にマイティフォームを使う意味はないのだろうか?

 今回はマイティフォームの強み、長所について考察していこうと思う。


【基本情報】

 まず基本情報についてのおさらいだが、マイティフォームは上述したようにクウガの基本形態だ。他の形態は一長一短で何かに秀でた代わりに何か欠点が発生しているのだが、基本であるマイティフォームはバランスの取れた能力を有し欠点らしい欠点はない。

 戦闘スタイルは素手の格闘戦。生態甲冑(ボディアーマー)も動きやすく衝撃を吸収できる作りになっているので「マイティフォームは特徴がない」というような認識は厳密には間違いで、実際には殴り合いに適した肉弾戦特化と言える。
 クウガは脳の組成も形態毎に変化させているのだが、マイティフォームではバランス感覚に優れている。ネット上では「クウガの形態のなかでマイティフォームがバイクの扱いが一番うまい」という真偽不明の噂を時折見かけるが、たしかにバランス感覚に優れているマイティフォームならバイクの扱いが上手くても不思議ではないだろう(というかこの噂の出所が『バランス感覚』なのか?)。

 必殺技は右足の裏で蹴って、そこから封印エネルギーを流し込むマイティキック。助走と前宙(空中での前転)で勢いをつけ、威力を向上させた飛び蹴り版は『強化マイティキック(稀に新マイティキックとする書籍も)』と呼ばれる。通常のマイティキックはどのような形であれ右足裏を当てれば良いというもので、いわゆる「定型のポーズをつけて放つ飛び蹴りのライダーキック」に該当するのは強化マイティキックの方となる。


〈設定上の扱い〉

 マイティフォームはDVDの映像特典である『データ・ファイル』やケイブンシャの『仮面ライダークウガ大百科』、東映の『仮面ライダー図鑑』などで『完成形態』とされている。これに対し、ドラゴン、ペガサス、タイタンフォームは全て『特殊形態』で纏められており(グローイングフォームは『未完成形態』)、マイティフォームだけが区別されている形だ。

クウガはマイティフォームの時点で完成されている

 ということがこの名称から分かるだろう。

 この『完成形態』という肩書きは伊達ではなく、マイティフォームの撃破数は特殊形態と比べて突出して多い。

 作中に登場するグロンギこと『未確認生命体』のナンバリングはドルドの『第47号』が最後だが、ネズマとギノガがそれぞれ兄弟、クローンで『第12号B』『第26号B』という別個体が登場しているので+2。さらに0号ことダグバもカウントされるため、怪人体が確認された未確認生命体の総数は50体ということになる。

 この内クウガが倒した数は、2号と4号がクウガ自身なので-2。ネズマはゲゲルのタイムアップで爆死。ゴオマはダグバに殺され、ドルドは神経断裂弾で死亡したのでさらに-3で計45体なのだが、この内マイティフォームによる撃破はなんと半数近い22体だ(グローイング、ライジングマイティ、アメイジングマイティの分も足せば27体となる)。

 クウガは映像でこそ「敵に合わせて四形態を満遍なく使い分ける」という印象を受けるが、映像外も含めた実態は「マイティフォームが大抵の敵を倒せる万能選手で、マイティフォームでは相性の悪い時だけ特殊形態を使う」というスタイルなのだ。
 特殊形態の映像外の戦績を見てもドラゴンフォームの撃破した敵はカエル、ウサギ、ムカデ。ペガサスフォームはハエ。タイタンフォームはクラゲ、エビと、それぞれ「ジャンプ力、走力に優れる(追いつけない)」「飛行型(届かない)」「極端に硬い/柔らかい(打撃無効)」とマイティフォームとは相性が悪いと思われる敵ばかりとなっている。

 大抵の敵をマイティフォームで相手できるとなれば、一長一短ある特殊形態を使うことは無駄に弱点を増やすことになる。わざわざ敵に付け入る隙を見せる必要もないので、やはり基本は欠点の無いマイティフォームを使うのがベストだと言えるだろう。

 ちなみに参考までに各フォームの撃破数は以下の通り。

 マイティフォーム  :22体
 ドラゴンフォーム  :5体
 ペガサスフォーム  :3体
 タイタンフォーム  :3体
グローイングフォーム :1体
 ライジングマイティ :3体
 ライジングドラゴン :1体
 ライジングペガサス :2体
 ライジングタイタン :3体
アメイジングマイティ :1体
アルティメットフォーム:1体

 撃破数が二桁なのはマイティフォームだけだ。ちなみに二位は移動用と揶揄されることもあるドラゴンフォームの5体。ドラゴンフォームも決して弱い形態ではないのが分かる。


【マイティキック】

 上記の戦績からマイティフォームが優秀な万能選手であることは明らかなのだが、とはいえそれは肩書きや設定の話である。フィクションにおいて「設定上凄いとされてるけど、現実的に考えるとそうでもないよね」なんてケースは珍しくない。もっと明確にマイティフォームの優秀さを示せる根拠、すなわち ❝ マイティフォームの強み ❞ はあるだろうか?

 ある。
 それが必殺技『マイティキック』だ。

〈炎と煙〉

 ライジングマイティキックがライジングフォームの中で最も威力のある必殺技であること、通常形態の必殺技でマイティキックだけ『30t』という威力設定があること、「ライダーといえばライダーキック」というイメージから、おそらく多くのファンは漠然と「通常フォームにおいてもマイティキックが最も強力な必殺技」という印象を持っていることだろう。

 しかしこれは実は漠然とした印象ではなく、しっかり演出で示されている。

 それが『足裏の炎』と『蹴った後の煙』だ。

 この二つはクウガの必殺技の大きな特徴であり、強く印象に残っている人も多いと思われるが、よくよく考えるとなぜ炎と煙が出ているのだろうか?

 まず炎については超全集上巻(27P)におけるマイティキックの説明に「使用時には放出されるエネルギーが炎のような姿を取る」という記述がある。『封印』エネルギーとは書かれていないが、必殺技の説明に登場するのは封印エネルギーだけなのでおそらく封印エネルギーを指していると見ていいだろう。グロンギの身体に浮かぶ封印マークも炎のようになっているし「集中させた封印エネルギーは炎のような形になる」ということだと思われる。

仮面ライダークウガ「EPISODE 42 戦場」
助走前の時点から足裏に炎が見られる。

 この『炎のように放出される封印エネルギー』は特殊形態には見られない。武器による必殺技も超全集では「封印エネルギーを集中させ/みなぎらせ」と表現されているにも関わらず、キックと違って炎は発生しないのだ。

 煙も同様で、マイティフォームがキックを決めた後、足元が映る場合はほぼ必ず足裏から煙が上がるが、特殊形態の必殺技ではこの煙は見られない。

仮面ライダークウガ「EPISODE 20 笑顔」
ライジングフォームの予兆「ビリビリ」も煙と一緒に出ている。

 詳しい方なら「いやドラゴンロッドからも煙あがってたよ?」とお気づきかも知れないが、マイティ系以外で煙が発生したのは実はあの一回だけなのだ。マイティ系では煙の演出が初使用の二話から一貫して最後まで行われているのに、特殊形態での煙演出はドラゴンフォームによる初回以降見られなくなったということは「特殊形態では煙は出ないのが正しい」と見ていいだろう。

仮面ライダークウガ「EPISODE 6 青龍」
バヅー爆散後、ロッドを持つドラゴンフォームの手から煙が出ているシーン。
特殊形態の煙演出はこれが最初で最後。

 そしてこの煙の演出、実はゴウラムを使った場合も同様なのだ。
 マイティフォームでトライゴウラムを使ったギャリド戦では戦闘後、ゴウラムに封印エネルギーを送り込んだクウガの両手(クウガの腕輪『ハンドコントロールリング』は武器の生成や封印エネルギーの注入に使う器官であり、マイティフォームではトライゴウラムで使用されると超全集上巻49Pに記載されている)からは煙が上がっているのに対し、ガリマ戦でタイタンフォームが使った際は煙が発生していない。

仮面ライダークウガ「EPISODE 16 信条」
手から出る煙を見つめるマイティフォーム。6話を除いて唯一手から煙が出たシーン。
仮面ライダークウガ「EPISODE 24 強化」
トライゴウラムアタック直後、タイタンフォームと化石に戻るゴウラム。手に煙はない。

 このように「キックに限らずマイティ系フォームが必殺技を使った時だけ煙が出る」という演出がほぼ全編に渡って徹底されているわけだ(ただしライジングビートゴウラムアタックの時は手に煙はなかった。まあ爆発の残煙もないので煙は全部霧散した後だったということだろうたぶん……)。

仮面ライダークウガ「EPISODE 42 戦場」
バベルを倒した後、手の煙も爆発の残煙も無いライジングビートゴウラムの図。

 またゴウラムの必殺技ではフォームに関わらずツノの先端に炎が発生するが、これもマイティ、ライジングマイティで使った時は突撃中に炎が出るのに対しタイタンフォームでは命中する直前まで発生しないという差がある。

仮面ライダークウガ「EPISODE 16 信条」
目標のトラックまでかなり距離のある段階で炎を上げるマイティフォーム搭乗のトライゴウラム。
仮面ライダークウガ「EPISODE 42 戦場」
炎が出る直前のシーンで目標までだいぶ距離があるライジングマイティ搭乗のライジングビートゴウラム。
仮面ライダークウガ「EPISODE 24 強化」
当たる寸前のカットまで炎を出さないタイタンフォーム搭乗時のトライゴウラム。

 こうした炎と煙を使った演出の差がどういう意図に基づいて行われたのかを考えれば、「マイティフォームだけ封印エネルギーの出力が高い」と受け取るのが最も自然な発想だろう。

 つまりマイティフォームは「封印に特化した形態」なのだ。

 そして劇中の戦闘が示す通り、グロンギは封印エネルギーによって自爆装置を起爆させられて死ぬだけで必殺技だろうが攻撃によるダメージ自体ではまず死なない。この「グロンギを確実に無力化できる手段は封印エネルギーのみ」という事実を鑑みれば、封印エネルギーの出力が高いマイティフォームは「使う意味がない」どころか、むしろ「使える状況なら積極的に使うべき」形態と言える。


【結論】

 マイティフォームは多くの状況に対応できる万能型であり、グロンギを無力化できる確率も最も高い、非常に優秀な基本形態である。

 ……というわけでマイティフォームの強さに関する考察でした。



【余談:マイティキックの演出】

 余談の豆知識?でも。

 クウガの必殺技は初回スプラッシュドラゴンでのみ煙が出る等、当初は安定していなかったのだが、マイティキックも結構変わっている。

 ザイン戦にて助走から前宙して放つ『強化マイティキック』が初めて使用された際は助走時に両足の裏に炎の演出が入っており、燃えるような足音のSEも両足分入っていた。

 以降のガドラ戦や、ギノガ戦のグローイングフォームでは「右足裏だけが燃えて、でも燃えるようなSEは両足分ある」というモヤモヤする演出になり、ガメゴ戦でのライジングマイティキック初使用から「炎もSEも右足分のみ」となり、以降はライジングマイティキックも強化マイティキックもこの仕様で安定した。

 また助走無しで咄嗟に放つ通常のマイティキックでもザイン戦以前(グムン、メビオ、ザイン前半)では足裏に炎の演出は無く、ザイン戦以降では炎が見られるようになった。

 ちなみに、当然ながら両足蹴りのアメイジングマイティキックではザイン戦の「炎もSEも両足分」の仕様となっている。

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