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記事86:夜は墓場で運動会

ここ2ヶ月でイヤホンを2つ紛失している。2つともiPhoneに付属していたやつだ。ひとつは今使っている一個前のiPhoneに付いていた新品同様のやつで、会社のウェブ会議専用に使っていた。

洗濯機で洗われてしまうという不運を一度は乗り越えて復活を果たしたのだが、その後すぐ失くなった。

ちょうどその直前のタイミングで、父が会社の荷物を整理したときに見つけたという新品のiPhone付属イヤホンを譲ってもらっていた。これはちょうどいい、とそいつに乗り換えていたのだが、それをつい今日だか昨日だか一昨日だか、とにかく失くした。
今のiPhone付属イヤホンはコネクタがLightning端子になっているもので、まぁコネクタを噛ませば使えないこともないのだけど会議専用にするのもなぁ、という気がして使っていない。

2つめに失くした方は絶対に家の中にあるはずだ。と思っているのだが、出てこない。何度経験しても分からないのだが、これはどういう仕組みになっているんだろう。
おそらく妖怪イヤホンかくしの仕業だ。リップクリームかくしと目薬かくしと仲の良い、あいつだ。奴が夜な夜な活動しているのだ。

隠しておしまいにするのではないのが奴らの悪いところだ。仕方なく新しいのを買ったら、その2日後に見つかるように元に戻しておくのだ。間違いなく5回は探したであろうところに、こっそりと。
「そこ、絶対5回は探したよ!左の目玉を賭けてもいいよ!」
などと言おうものなら、左の目玉を喰らわれる。

とりあえず先ほど安物イヤホンをひとつ購入したが、考えてみたら仕事以外に使われないイヤホンの哀愁ったらないな。ギャンギャンのギターの音とか、ゴリゴリのヒップホップのビートとか、あるいは流麗なクラシックを鳴らしたくて生まれたんだろうにおじさんの声しか流してもらえないのだから。おじさんの声でエイジングされ、そしてまたひっそり失くなっていくんだろう。手元に届く前から定められたその運命に想いを馳せると、自分が実はいかに幸せかということに気づかされる。ありがとうイヤホン。まだ出荷されてもないけど。

そして手元に届いた2日後に、僕は失くしたはずのiPhone付属イヤホンを鞄の内ポケットあたりから見つけるのだろう。そしてその晩には、左目を失うことになるのだろう。

野崎りこん『Love Sweet Dream LP』

見た目に似合わずスムースなラップを聴かせてくれる野崎りこん。

買おうかな、どうしようかなと悩んでいたところ、10年前に発表して入手困難になっているEPのリマスター盤を特典として付けるということで飛びついた。
アルバムも特典EPも素晴らしい出来。もっと話題になっていい。

レーベルの担当者がカレンダーに「りこん会議」と予定を書いていたらそれを妻の母に見られて家族会議になりかけた、というエピソードももっと話題になっていい。

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