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記事97:日本語ラップ100選⑧

休みの日も少し早起きすると、午前中の時間が長くて良い。ということに30年以上生きてきてやっと気づき始めた。
冷蔵庫の中に古くなったニンジンがあり、切ってみると食べれないことはなさそうだったのでどうにかしたい。ニンジン料理ってなかなか思いつかない。カレーしかないか、と思ったけどこのニンジンと同期のニンジンで作ったビーフシチューがまだ冷凍庫に3食分くらいある。それでも私はおそらくカレーを作る。

71. SMRYTRPS『ことばのおんがく』
サムライトループス。大学の頃、もっとも熱心に追いかけていたグループのひとつ。メンバーの半数以上がクラブが好きじゃないという、ヒップホップらしからぬ面があった。このアルバムの後、メジャーに行くのも見ていたしそこから戻ってくるのも見ていた。メンバー構成が少しづつ変わっていくのも見ていた。この『ことばのおんがく』の頃はMCが7名いるのだが、それぞれ声に特徴があって覚えやすかった。基本はアングラサウンドだが、M-3『Keep!Condition!』、M-14『CMW(Color My Words)』なんかはポップでアクセントになっていた。メジャーから戻ってきた後、再始動してくれたのが嬉しい。(そのアルバム『Purple Gigant』も相当聴いた)

72. SONPUB『PHOENIX BEATS』
いまやエレクトロニカの人になりつつあるトラックメイカー、SONPUBの1st。ひとつ前のSMRYTRPSとも親交が深く、まさかこんなところで名前が並ぶとは。このデビューアルバムからすでにエレクトロニカ要素はあるんだけど、それ以上に生音のサンプリングが印象的で、尖った中にも温かみのあるビートだ。(ありふれた書き方)
客演がWISE、ATOM、SMRYTRPSからTakatsuki、Y.O.G.、METEOR…と、それら目当てで買ったがすぐにこの人のトラックの虜になった。10選だとしてもこのアルバムは選ぶと思う。

73. SOUL SCREAM『The positive gravity ~案とヒント~』
このアルバム、『蜂と蝶』だけじゃない。文学的なリリックの数々で当時のB-BOYを唸らせてくれた。と、発売当時はまだヒップホップに触れていなかった僕は思います。ベテラン勢の中では、一番今に通じるラップをしているのではと思う。さんぴんキャンプ世代がいつまでもあぐらをかき続けているが、SOUL SCREAMだけは何か違うと思わざるを得ないものを持っている。

74. Steady & Co.『CHAMBERS』
中学生の頃、11月〜12月の寒い時期に聴いてた思い出がすごくある。『春夏秋冬』『Only Holy Story』が流行って、クラスの何人かに貸して、ボロボロになって実家にある。個人的にはM-12『Up and Down』のマイクパスがかっこよくてお気に入りだ。RIP SLYMEをちゃんと聴くより先にこっちを聴いていたので、ILMARIとの初遭遇はSteady & Co.だ。もしかしたらMCが複数いるヒップホップグループとの初遭遇ってSteady & Co.だったかもしれない。いいプロジェクトだったな。映えるメンバーを選んだKjは策士だ。

75. STERUSS『白い三日月』
これの発売当時はしっかりヒップホップを聴いていました。20代後半〜30代前半の日本語ラップリスナーにとっては超クラシック。日本語ラップで、まだこういう表現があったか!と思わせてくれた。MC2人ともクールなようだけど、内に秘めた熱さをラップに乗せている。DJ KAZZ-Kの作るトラックもジャズを織り交ぜているものが多く、トラックにある一瞬の「隙間」が良いグルーヴを生み出している。これもまた、神奈川、横浜のスタイルだ。神奈川のヒップホップすごい。

76. SUIKA『カッコいい』
「カッコいい」のが出来たからタイトルにしちゃった。全編通じて遊び心に溢れた1枚。このときはまだパーカッションの高橋結子が在籍してたんだっけ?こんなにカッコいいアルバムだから、たぶん在籍してるはずだ。
SUIKAもどのアルバムを選ぶか苦慮した。全アルバム同じくらい、満遍なくリピートしている。このアルバムは突出した曲というのはないんだけど、風通しがいい。SUIKAに大事なのはそういう爽やかさというか、いい匂いのする感じだと思ったのだ。

77. Takatsuki『東京・京都・NY』
SUIKAのメンバーでもあり、SMRYTRPSのメンバーでもあるラッパー。ウッドベース弾き語りラップという、自らを「珍品ラッパー」と称するスタイルはアングラ感満載だけど本人の佇まいもあって最高だった。ウッドベースを背負ってライブ会場へ向かうのは相当大変だ。ラッパーというより詩人に近くて、後にも先にもこの雰囲気の人は日本語ラップ界にはいない。大学生当時、よくライブに行っていたので本人から認知があった。会うたびに京都弁で「まいど!」と言われるのが嬉しかった。

78. TERIYAKI BOYZ『SERIOUS JAPANESE』
日本語ラップ界からもUSヒップホップファンからも不評のプロジェクト、TERIYAKI BOYZ。NIGOの資金力で海外のヒップホップセレブをトラックメイクや客演に招き、手抜き仕事をされておしまいというプロジェクトだ。(語弊がある)
メンバーにRYO-Z、ILMARI、VERBAL、WISEというメンツが揃っているだけで僕は満足だ。世界レベルの人が作ったトラックなもので、RYO-ZもILMARIもRIP SLYMEのときとは違った、締まったラップを聞かせてくれる。テリヤキだけに1stを酉年、2ndを丑年に出すという芸の細かさも好き。今年の自粛期間中に『TOKYO DRIFT (FAST & FURIOUS)』のビートジャックが流行ったのは何故なのかはいまだに分からない。

79. THA BLUE HERB『STILLING, STILL DREAMING』
札幌にヤバイのがいるぞ。リリース当時にリアルタイムで出会っていたら衝撃だっただろう。
BOSSはベテランとなった今も最前線でラップし続けているが、この1stの頃の「寄らば斬る感」はすごくヒリヒリする。自身が地方で燻っていることや、大した結果も出してないくせに東京でデカい顔してるラッパーへのフラストレーション。シンプルなトラックに直球の言葉で畳み掛ける。BOSSが少し前のインタビューで、「俺らと同年代で社会への不満をラップし続けているのはRHYMESTERとスチャダラパーぐらい」と言っていたのを見て、何だか安心した。

80. THINK TANK『BLACK SMOKER』
陽のNITRO、陰のTHINK TANK。同時期に東京のヒップホップシーンを席巻していた2組。NITROがどんどん明るい方へ出ていく一方、THINK TANKはズブズブと地下に潜り、煙たい世界を作り上げた。今は活動休止していて、どうしたってK-BOMBがキーマンになると思うのだが元々まとまりを要求するのが無謀なグループなのでもうTHINK TANK名義でのアルバムは出ないだろう。このアルバムの後も無数のCD-RやMIX TAPEを出しまくり、今も東京の地下でTHINK TANKの染みは広がり続けている。

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