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記事73:ありがとうにさようなら

そろそろ行きますけど。イヤホンを外さない上司に身振りで尋ねると、ちょっと待ってというジェスチャーが帰ってきた。
どうやらもうすぐウェブ会議が終わるから、そしたら一緒に取引先に行こうということらしかった。パソコンのコードなどをしまい始め、二人ともすぐに事務所を出られる準備をする。

数分後、会議が終わりいそいそとイヤホンを外した上司に、
「てっきり行かないのかと思いましたよ」と言うと
「あ…別に行かなくてもいいかな。事務所でやりたいことが溜まってるし」と返ってきた。
そういうこともある。一人で、もともと乗りたかった電車の2本後の電車に乗り、まぁなんとか遅刻しない時間に取引先の事務所に着いた。まぁ、上司が気まぐれなのは分かっていたし、そういうこともあるか。

客先での打ち合わせが終わって16時。自社の事務所に帰るのも面倒なのでそのまま先方の事務所の一角を借りて普通に社内業務をしたり、他のお客とのやりとりまでする。向こうも慣れたもので、自分の事務所同様に使ってください、とのスタンスだ。ありがたい。ただ入館証がないので、トイレに行きたい時は取引先の人に申告しなければならないが。

あとは、その取引先の人に直接頼まれごとをされるリスクもあるが。今日も「こんな資料持ってないですかね?」「この提案のネタないですかね?」というような頼まれごとが3つほど積み重なった。
取引先の人から席に呼ばれて頼み事を聞いているとき、ハタからは完全に上司と部下の関係に見えただろう。
向こうの態度は丁寧だが、「ちょっと来てくれるか」のテンションである。こっちは立って聞いてるのに向こうは座ったままだし。

「御社の○○さんが、今日までにくれるって言ってたデータ、まだ来てないんですけどいつ来ますかね?」という類のものもあった。いや、その件は感知していない。知らないけど知らないとも言えない状況なので、○○さんに連絡を入れる。催促ぐらいは自分でやってほしいが。

やりたかった業務+頼まれごとで、結局21時前まで客先事務所にいた。揃いも揃ってよく働く人たちだ。最終的には帰る方向が同じだからと、車で家の近くまで送ってもらった。ただし僕以外にもその会社の人を2人送りつつ帰り、ラストが僕だったので電車で帰るのと時間的優位性はないが。

運転してくれた人と二人で、僕の自宅近くでラーメンを食べた。
「今日は色々頼み事しちゃってすいませんでした。ここは奢りますよ」
的なことはなかったが。
車で送ってもらったのでもちろん恩はある。電車で帰るのと時間的優位性はないが。

まぁ、そんな日もある。

志人/玉兎『Heaven's 恋文』

降神からソロになった途端に志人/玉兎というよく分からない名前を名乗り出したので、もしやと思ったらやはりだったアルバム。

よく言えば幻想的、ただしそれは常人には到底理解できない世界観で、ともすると宗教に近づいてしまいそうだ。と思っていたのだけど、その後彼が発表する作品はその世界観をどんどん強め、深めていき、振り返って思うのがこの『Heaven's 恋文』が一番聴きやすいなということ。

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