今こそ、Fla$hBackSを語ろう
前回の更新で、フィジカルリリースされる作品への思いを少し綴った。
サブスクで聴く、CDを買う、というのは択一的なことではなく、今月は「サブスクでも散々聴いたが、CDも買う」という事例が2件あった。
KREVA『LOOP END / LOOP START』
CDの方は[Deluxe Edition]と銘打たれている。
配信リリース時から曲が追加されているのと、インスト盤、ライブ映像がついている。
このアルバム自体は2021年リリースの作品の中でもかなりお気に入りだし、これまでKREVAのアルバムはCDで買い続けていたのでこれも買っておかないとダメでしょう、ということで。
宇多田ヒカル『BADモード』
配信されたときから方々で絶賛され、有名無名多くの人がレビューし尽くしているのでアルバムとしての感想はともかく。
初回生産限定盤を買ったのだが、「マジか!」というようなパッケージだし、これまたライブ映像をつけてくれたのも嬉しい。『Fantôme』『初恋』のときにCDのみの1形態で販売していたときも、らしいなぁと思ったけど。
去年『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では生まれて初めて、同じ映画を2回観にいくということをした。単純に映画としてとても気に入ったこともあったり、1回目は途中でトイレに立ってしまったというどうしようもない理由も含まれていたりするが。
再鑑賞の理由の何%かは、エンディングで流れる『One Last Kiss』〜『Beautiful World (Da Capo Version)』を劇場で観たい、聴きたいからということだった。シングルで発売された『One Last Kiss』ではその流れも再現されていて非常に良かった。
完全に個人的統計だが日本語ラップ好きの中には宇多田ヒカル好きも多く、『BADモード』とC.O.S.A.の『Cool Kids』が発売されたので今年はもう終わっていい、と言っている知人がいた。
宇多田ヒカルは韻が固いので、もしかしたら無意識にラップ好きを惹きつけているのかもしれない。近年の曲だと『あなた』の韻の置き方、「a i」つまり「愛」でサビ以外もずっと踏み続けているのがすごくしなやかでかっこいい。
記事のタイトルからかなり脱線したが、Fla$hBackSに所属していたFEBBのアルバムもフィジカル限定で5月にリリースされるとの情報があった。
久しぶりにFla$hBackSのメンバーの音源を聴き返しているうちに、これはひとつ文章にまとめておこう、ということになった。勝手に。
Fla$hBackS、何者
メンバーそれぞれがラップもトラックメイクもこなす3人組だ。
JJJ…Fla$hBackSの中心人物と勝手に思っている。自身もラップをしたソロアルバムを2枚、インストアルバムやビートテープをいくつか。3人のなかでも一番聴きやすいラップをする。
作るトラックはベーシックなヒップホップのドラムの上に独特な声ネタや上物のループを乗せる、JJJ節ともいえる鳴り。
FEBB…自分で名乗る時はFEBBよりもYOUNG MASONって言ってるイメージ。ソロアルバム1枚と、FEBB AS YOUNG MASON名義でアルバム1枚、GRADIS NICE & YOUNG MAS名義でも2枚のアルバムを出している。Fla$hBackSの結成以前からCRACKS BROTHERSのメンバーでもあり、活動期間の割に多作だ。
ラップも見た目もハードコア気味、作るトラックも無骨なものが多い。ラップと作るトラックのイメージがよくフィットしている。
KID FRESINOが末っ子キャラの印象だが、3人の中ではFEBBが最年少。2018年2月15日、不慮の事故により死去。死因については正式に公表されていないが、日本語ラップファン達は彼の交友関係から、あまりよくない死に方をしたのだろうと想像している。個人的にはDOGEAR RECORDSやSUMMITの面々とつるんで音楽を続けてほしかった。
KID FRESINO…当初はFla$hBackSのバックDJ&トラックメイカーだったけど、いつの間にかグループの、というか日本語ラップ界の出世頭。
ラップを始めてからのスターダムの駆け上がり方は目を見張るものがあった。
FEBBとの確執があったようで、2017年にグループを脱退している。ということで3人組と書いたけど実質Fla$hBackSというグループとしては分解してしまっている。
FRESINOのすごいところは歌詞に意味がないのにかっこよく聴こえるところと、
天性の人たらしであるところ。グループが続いていたら広告塔の役だ。
そんな経歴のグループなので、Fla$hBackSとしてのリリースは宣伝用のEP1枚とアルバム『FL$8KS』の1枚だけだし、その頃はまだKID FRESINOはラップを始めていない。
Fla$hBackS 3人のラップが聴ける曲
限られた3人組としての活動の中から、3人が揃ってラップしている曲を紹介しようと思う。全部で5曲しかないが、僕はこの5曲だけでウォークマンでプレイリストを作っている。
・SMILE NOW,DIE LATER feat. Fla$hBackS / ONE-LAW
珍しくJJJとFEBBのラップが交互に入り乱れる形の冒頭と、曲の終わりにシャウトのように参戦してくるFRESINO。バース構成の妙が光る曲。
FEBBの濁音(破裂音)の破裂具合とJJJのサ行の刺さるような発音の強さが耳に心地いい。と思うのはヒップホップの聴きすぎだろうか。
・Stray Cat feat. Fla$hBackS / DJ BEERT & Jazadocument
FEBBが「3つのARROW」と言っていたり、JJJが「GOサインは出た Fの文字浮かぶ空 受け取ったRHYME運ぶためとるペン」と言っていたり、FRESINOもJとFを歌詞に入れていたりと、グループらしくまとまった1曲。それでいて曲名がStray Catで憎い。
・Who Can feat. Fla$hBackS / KID FRESINO
KID FRESINOのフリーDLアルバム『Shadin'』収録の曲。調べたところ配信はされていないようだけど、DOGEAR RECORDSのサイトで今もダウンロードが可能なようだ。2014年リリースだぞ。こういうだらしなさは大歓迎だ。
JJJはバースはなくてサビのみだけど、うまく曲全体をまとめている。
・SpaderS / Fla$hBackS
映画『渇き。』の劇中で使われた楽曲。音源としては映画のサントラに入っていて、Fla$hBackS好きの間でも忘れられがちな1曲。Fla$hBackS名義の曲で3人が揃ってラップしているのはこの曲だけということかな。
FRESINOはサビだけの参加だし短い曲だけど、3人の魅力が詰まっている。JJJの体言止めのラップがやはり好きだし、FEBBは「自分が何言ってるか分かってます?」と言いたくなるような危険なラップをしている。
・2024 feat. Fla$hBackS / JJJ
言わずと知れた日本語ラップの名曲。大団円。
不貞腐れ気味ではありながら自分の言葉で前向きにラップするJJJ。意外とサビにハマり、バースでラップする時とはまた違った言葉の選び方を見せるFEBB。相変わらず奔放なFRESINO。グループとしてのまとまりの無さが良い方向に作用している。
そんな中でもJJJは3人の名前やグループの名前を歌詞に折り込み、「FlashbackするMusic 何年後」とラップしている。2024年に3人揃って演奏するところが見てみたかったなぁ。
ありがとうFla$hBackS、これからも聴き続けます。
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