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セミノンフィクション小説「悪行の履歴書」(11)

第1章 忌まわしい泡の思い出 第11回 寒空に放り出された男ども

「ふう、疲れた」。
なんとかあのクライアントにも押し込むことができそうだ。

「じゃ、恵美、今日はフレックスで帰っていいから。カレにも宜しくー」
「はい!また今度飲みに行きましょうね!」

さて、会社に戻るか。
あたしは誰も信用しない、あの一見純粋そうな恵美でさえも。

「アイツ」が死んじゃった後、あたしは営業として狂ったように仕事に精を出した。
でも、あたしの当時の営業スタイルはむちゃくちゃだった。
要は「女」をフル活用するやり方だ。貧乏で、親もいない、学歴もない、頭も悪いあたしが持つただ一つの利点。それは恵まれた容姿だ。芸能人で言えば、菜々緒といったところだろう。
キメの時には、まっすぐ相手の目を見て、手を相手の太ももに添えればそれで相手は契約書にハンコを押してくれる。

でも、夜は狂ったように酒と男を漁った。
しかしバチがあたったんだろうか。
その果てに会社の年下の若い男と勢いでセックスすると、その噂は会社中に広まった。

「あの篠原さんに中出ししてやったぜ」

若い男は大抵口が軽く、かつ、えげつない。
相手がえげつないのなら、えげつなく仕返しだ。

あたしはそいつをもう一度ベッドに誘い出し、そいつが軽い不正を働いていた証拠を喋らせ、密かにスマホで録音した。
さらに、そいつの話を聞きつけた女癖の悪い役員Aと寝て、その不正を拡大解釈させ吊し上げさせた挙げ句に地方の営業所に飛ばし、二度と東京に戻ってこないようにして絶望させ、退社させた。
さらに、その女癖の悪い役員Aと寝た事実を、頭でっかちで真面目だけが取り柄の対立する役員Bに報告し、その役員Aすら退社させた。

(続く)

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