凶器
残業時間、二人きりになると、窓際にいた僕はいなくなった人について、彼女に責められる、あなた出勤退出をチェックできるんだから、何時に退出したのかを即座に答えるべきだ、と。僕は数字として捉えているだけでいちいち記憶などしてはいないし、適切な退出についてあなたに報告する義務もない。
あなたが席を外していた間の何れかですとは言わずに、簡単に反論すると彼女は、興奮して手にしたタバコを振り回し、何か言い返してきた。僕は早く帰りたかったので、さっさと仕事を終わらせようと、いつものように適当に受け流すはずだった。
そのとき僕は異臭に気がついた、窓の外から、煙たい臭い、向かいの通りに目をやると、火事が発生したらしい、もう野次馬が集まってる。
炎は見えないが煙は見える。消化器では手に負えないのかもしれない、程なく消防車が来るだろう。
騒音と煙に僕は苛立った。
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