【短編⑨】地球人と宇宙人
よくわからないが、変な空気が入り混じった辺境の地へ来た。
酸素はある。
宇宙服を脱いでも、特に問題はない。
水を飲んでみると、やけにしょっぱい。
というか、辛い感じがする。
生き物はたくさんいるらしい。
横歩きをする亀がいた。
亀なのに、手がある。
目玉が飛び出ている。
食べられるのだろうか?
食べることに関しては、もう少し調査が必要だ。
空中には、口を尖らせた猫のようなものが、体をいっぱいに広げて浮いていた。
そこだけが無重力のようになっていて、不思議で仕方ない。
向こうに見える、たくさんの色の木がそびえ立つ場所に行ってみよう。
宇宙船で行こうと思うが、燃料がもったいない。
探索も必要なことだし、歩いてみよう。
しばらくは地面がやわらかくて、地面が靴にくっついたりした。
たくさんの色の木が立つ場所に近づくにつれ、地面が固くなってきた。
やがて、地面はたたくと痛いぐらいにカチンコチンになった。
土がこんなに固くなることがあるのかと驚いた。
まだまだ、世界は知らないことだらけだ。
固い土の上を、煙を吐きながら大きな箱が走っていた。
どういう仕組みなのだろう?
箱の中には、生き物が乗っているようだった。
しかも、箱はおびただしいほどの数で、こんなに走っていては詰まってしまって走れないのではないかと心配になる。
ただ等間隔で走っているので、システム全体を統括している者でもいるのではないだろうか。
まるで工場で荷物を運んでいるかのように整列していた。
「こんにちは。ひょっとして道に迷っていますか?」
生き物が話しかけてきた。
探索をしているだけで、迷ってはいない。
ひとまず、この生き物はしゃべれるし、言語も理解できるようだった。
「おかまいなく」
なるべく関わらないように、一言だけ話した。
少し先へ行くと、目の前にバズーカ砲のようなものを何度も撃ち、固い土に穴を空けている集団が現れた。
その後ろにはキリンのような生き物が、鉄の塊をぶら下げて、ぐるぐる回っていた。
「気をつけてお通りください」
どう気をつければいいのかわからなかったが、今にも破片が飛んできたり、鉄の塊が降ってきそうなその道を通り過ぎた。
たくさんの木があったが、木には入り口があって、生き物が行き交っていた。
驚くほど生き物が中にいて、その数に唖然とした。
生き物はほとんど同じ形態のようだが、それぞれに個性があり、色や皮膚の模様が異なっていた。
食べるものも、それぞれで異なっているようだった。
なんとなくこの星において害はなさそうなので、探索結果を宇宙船に送っておいた。
他の仲間も連れて探索するため、一度戻ることを伝える。
固い土の上を歩いた。
「すいません」
生き物が話しかけてきた。
この星の生き物は、見ず知らずの者に話しかける慣習があるのだろうか。
「ちょっとこれ、見てもらってもいいですか?」
小柄で、私の半分以下の大きさのその生き物は、なにやら私物を見せたいようだった。
小型の機械を見せてきた。
同じような生き物が見える。映像が流れているようだ。
どうやらテクノロジーの文化はかなり進んでいる。
夢中になっていると、おかしな点に気づく。
私が持ってきたカバンがない。
まさか盗まれたのか。
振り向くと、さっきまで目の前で小型の機械を見せていた小さな生き物の姿はなかった。
なんということだ。
急いで宇宙船に戻らなくては。
固い土を走り、やがて土がだんだんやわらかくなる。
宇宙船が見えてきた。
「大変だ!」
宇宙船に入るなり、全員に呼びかける。
仲間たちが駆け寄ってきた。
「どうした?何があった?」
「私のカバンが盗まれた!すぐにここを脱出しよう」
そのとき、遠くの方で大爆発が起きた。
「シールドをはれ!!」
操縦室で待機していた者が、一瞬でシールドをはった。
たくさんの色の木が、すべて消し飛ぶ。
やわらかい土も、固い土も、境目はなくなり、田んぼのようになった。
しょっぱいような、辛いような水は大きく揺れ、すべてを覆った。
辺りはまっさらになった。
「なんということだ」
カバンに入れていたのは、星用の爆破装置だった。
いちいち来た星を覚えていられないので、必要ないと判断した際に使うものだ。
「そんなつもりはなかったのだ。この有様では、宇宙から見るこの星も、すっかり変わっているだろう」
「美しい青と白、きれいな円形、そして緑。住むにはいい星と思ったのにな」
「まぁそう落ち込むな。次の星を探そう」
宇宙船は、光か音か、目では追いつかないほどの速さで、太陽のほうに去っていった。
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