「やれるだけやらなきゃダメなんだ」ってセリフからのメイドインアビスのワズキャンの解像度
この記事はメイドインアビスにおけるキャラクターの「ワズキャン」についての内容を話すだけの記事です。私はこの作品で最もワズキャンが好き。
ネタバレ注意!でも漫画についてある程度知っている人向けに書いてます。むしろ考察?みたいなものが多めだと思います。
〇ワズキャンってそもそも誰?
漫画またはアニメ「メイドインアビス」にて登場するキャラクターです。
どんな漫画というと・・・底知れぬ「アビス」っていう大穴の下がいったいどうなっているのだろうという憧れから下層へ下層へと降りていく漫画です。
この大穴には「上昇負荷」というものがあり、下へ降りていく分には何も起こらないけれど、入り口方向(つまりのぼること)へ進むことで、身体に悪影響を及ぼす一種の「呪い」のようなものが存在します。またこの上昇負荷は深いところまでいけばいくほど強くなり、アビスは層毎に第〇(数字)層と名前がつくのですが、第7層から6層に戻ろうとするものならば「確実な死」が呪いとして襲い掛かってきます。
つまりまあ深い所に行けば行くほど「一方通行」になるんですね。それでもやっぱり探求心は捨てきれない主人公を中心とした人たちが下へ進んでいく物語です。
その道中に登場するキャラクターの一人が「ワズキャン」であり、このキャラクターは主人公がアビスの大穴に潜るはるか昔にアビスの大穴にいわくあるという「黄金郷」を目指してアビスに挑戦した通称「ガンジャ」隊のリーダーです。
とある理由から本編では人外へと成り果てた形で主人公たちと会う・・・と言った形で絡みます。
個人的に今回書く内容は・・・その「ワズキャン」が人外へと成り果てる前、つまりガンジャ隊のリーダーだった頃の話を書きます。
〇よく比較される「ボンドルド」と「ワズキャン」実は全然違うと思うはなし
よくボンドルドとワズキャンは作中の人でなし二大巨頭って言われるんですけど、ワズキャンは決して人でなしではないと思うのです。
ボンドルド卿は「分かったうえで」「必要だと思って」「良心が欠如して?」ああいった態度を振舞っているんですけど、根本的には「人類の発展」を心から願ってあの行動をしているわけです。正直な話・・・ボンドルドは「サイコパス」と言ってふさわしいキャラクターなんじゃないかなって思うのです。
そこまでボンドルド卿に対して強い深掘りをしたことが無いので、何とも言えないのですが・・・。
ワズキャンは「分かったうえで」倫理をかなぐり捨ててその場での「最善の選択肢」を選べる人だと思う。サイコパスではないと思う。
ここが違うと思うんです。確かに「人でなし」なのかもしれないけど、あくまで彼は「最善と思われる選択肢」を模索して取り続けることができるキャラというか、「模索し続けて諦めない」結果、その場での最善の選択肢を取りえたというキャラクターなのです。結果的に作中では「倫理的でない」選択肢となってしまっているけれど、そもそも描写されていないだけで彼は「人道を踏み外す必要がない」状況ならわざわざ「人道を踏み外す」事はしない人だと思っているのです。
そこがボとワの大きな違いなのではないかなあって思っています。
あと普通に「ビビッて汗流してる」シーンも結構多い。ワ自身も「どうなるかわかんね~~~~~~~~~~こえ~~~~~~~~~~」って表情しながら生きてるところ漫画版だと読み返してるととくにあります。予言者ちゃうやろ!って表情多いですよ。
〇「神がかりの予言者」って他者評価されてるけど実際「予言」なんて彼はしてないと思う話
ワズキャンは「神がかりの予言」ができると作中で他のキャラクターから言われています。でもこれって違うと思うんですよね。彼が言ったことは「実現してしまう」からこそ「予言者」って言われているのかなと思うのです。
その実現のためには方々への根回しから・・・知識の探求、そして状況把握、そして周囲の求心力が必要で、それを彼は全て模索し続けて「手に入れた」人であったからこそ「まるで予言のような」実現を行うことができたんだと思うのです。
実際、ワズキャン本人から「僕は予言者だよ」って明らかに言っている描写はありません(他人が僕のこと予言だとかなんとか言うけど・・・ってボヤいたシーンはあります)。
僕の信じることは当たる、と言った事はあります。でも・・・こういった物言いというか、ワは割と「自分に言い聞かせるような」セリフも結構言うのですよ。
理由とかについて・・・以下小見出し毎に書いていこうと思います。
〇虫食いまくってる変態オジサンとか言われてる話
ガンジャ隊がまずアビスの大穴のある孤島に向かってる最中に船底にいる虫(G?)をぼりぼり食ってるシーンから回想が始まります。
このシーンが強烈すぎて「虫が大好物な変態」な印象を与えてたり、好物が虫とかそういう解釈もされてるんですけど・・・違うと思うんですよね。
彼は「虫を喰う必要があると思ったから」食べてただけだと思うのです。
あの時代・・・航海技術も十分発達していない状況で、勿論栄養も偏るでしょう。現代でいうなれば大航海時代に壊血病に悩まされた船員は多かったと聞きます。
まずそもそも「無策」で何の準備もなしにガンジャ隊というか、ワズキャンがアビスの大穴に向かうはずがない。というかアビスの大穴にあるとされる黄金郷を見つけたいというとんでもなく途方もなく強い「憧れ」からワズキャンは動いているので、その大穴にすら辿り着く前の海で死ぬなんてことは絶対に望まなかったでしょう。ガンジャ隊はまあ世捨て人の集まりみたいな・・・チームでもあったので、そういった隊ですら船を持つことができた(シンパがいた?あるいはワズキャンがシンパを獲得した?)ので、他にもいろいろと航海や冒険をする人はいた時代だったろうと考えます。
そういった人の航海日誌等を「ワズキャン」は読まないと思うか?というと・・・絶対にNoだと思うのです。アイツは絶対に「読んだ」はず。だって「やれるだけのことは絶対にやる」男だから。その航海日誌を読んだうえで・・・「航海中にかかる謎の病気」というものは記録として知っていたかもしれない(名前まで分からずとも)。そして記録において・・・「虫食った」奴は発症しにくかったという記載があったかもしれない(結果水もどきの予防にもなっていたかもしれないけど、これは個人的には無いかもって思ってます)。
片っ端から文献はあさっていたはずです。だって憧れが根本にあるわけで・・・。上述しましたがその道中で道半ばで達成できないことは最も彼が望まないことでもあるわけだから、そりゃあ片っ端から目に入れられる知識はつけたと思います。その中で・・・「虫を喰ったヤツの方が航海中の病気を防げた」という記載がいくつか文献にあれば・・・彼は「はっきりとしたエビデンスは無いが」、少なくとも「虫食えば大穴へ向かう道中の船旅で病気にかかるリスクは減らせるな」と思い、だからこそ「食った」のだと思うのです。
決して「好きで」食べてるわけじゃなくて、「食う必要があるから食べた」だけだと解釈しています。
〇ヴエコの加入の予言について
純粋に方々に根回ししつつ人の動きとかも読んでいたのかな?と思います。
「ヴエコ」という子の素性を知ったうえで・・・ガンジャ隊に入ろうとする意志があることを耳に事前にしておけば、「すげー子が来るよ」と言えるはず。
文献云々もそうですが、方々に人づてにいろいろと情報は集めていたはずです。人脈作りも惜しまなかったはず。上述したもしかしたらお金を出してくれるようなシンパがいた?かもしれない話ですが、それも多分、ワズキャンが方々の貴族とか王族とかに駆け回ったうえで獲得したのではないか?と思うのです。だって「あるかどうかもわからない黄金郷」を探す旅の資金を援助する人、普通いる?ってなりませんか?
やれるだけのことする男がやれるだけのことしてヴエコ入ることになったことを知ったうえで「スゲー子来るよ」って隊員(特にベラフ)に言ってたとしたら・・・そりゃあまあ実際に来たら「マジかよアイツ予言者やん」てなりますよね。
〇水もどき、分かったうえでガブガブ飲む男
覚えてる限りではあんまり「予言」っつー予言はしてない印象なのです。
あとは作中の回想終盤のシーンで、水に何らかの寄生虫?のようなもの?あるいは水っぽいそれもどき?の「水もどき」しか飲料が手に入らない状況となり、その「水もどき」を摂取したことによって隊員がバタバタと病気になっていくシーンがあります。
最初は原因が分からない謎の病が流行していた・・・という事で原因を探るわけですが、原因が「水もどき」とわかった後もワズキャンは顔色一つ変えず「水もどき」を飲み続けるのです(これ他の隊員はドン引き)。
これ、難しい解釈だなって思うんですが、ワの思考を鑑みるに・・・
ワ:謎の病が発症するには個人差がある?と考える(実際個人差あり)
→少なくともまだ自分は発症していない。
→考えられる水場は他になく、現状飲料と呼べるシロモノは「水もどき」のこれしかない。
→飲料は生存において何より不可欠であり、「水もどき」はモドキというものの「飲料」としての役割は担っていそうだと判断した。
→謎の病に罹患しても、死ぬまでには時間があると判断(他の隊員を見て)。
→水もどきを摂取せず脱水で倒れるよりかは摂取して脱水を防いだ方が恐らく解決策を練るための時間の猶予は長くなるだろうと判断。
→結果的に「水もどき」を飲み続ける(焦ってはいると思う)。
といった思考をしたのかな?と考えています。正直すげーメンタルだと思うんですが、多分この考え方にワズキャンはいたったはず。ちょっとこの解釈には自信があります。
〇欲望の揺籃と●肉と「生きたままさばくこと」
欲望の揺籃が回想で手に入ります。「子供の方が願いが純粋で叶いやすい」という事から、ヴエコの願いもあってイルミューイに対して欲望の揺籃を使うことをワズキャンは快諾します。
ワズキャン・・・イルミューイが「子を産めない身体」という事は知っていたはず(隊でも知っている人は多くいた為リーダーが知らないはずはない)。
そして・・・イルミューイの過去に「可愛がられてたけど子が産めないってわかった瞬間人間扱いされなくなった」という事も、ベラフが(盗み)聞いていたのでその話がワズキャンに伝わっていた可能性はあります。そもそもまず・・・子が産めない身体だから「村を追い出された」ってのは知っていたと思うのです。
なんであんな子供を隊に入れたんだよって話ですが、単純にその加入を許可した当時は「案内人」が欲しかった、地の利を得る為だったと思うのです。
結果的にそれが「欲望の揺籃」のキーになったというまあこれは「あがいた結果」手に入れた「偶然」だと思うのです。チャンスを行動でつかみ取った感じ。
そこまでして・・・ワは揺籃与えたらまああの子なら多分・・・「子を産む」ってことを願うんじゃないかなあって感じ取ったのではないかと思うのです。純粋故・・・子供の願いは読みやすいし。あんな年端もいかない子が子を産めないという理由で村を追い出されたわけで・・・そりゃ戻りたいに決まっているはずで・・・。
だからこそ「子を産む」事が願いとして通じてイルミューイは子を産むようになったと思うのです。只「産みたい」という願いだけだったために「一日しか生きられない」イルミューイの子。ましてや「赤子」を見たことがないから想像しやすかった「死んだペット」のような子を産むようになったわけで。
そしてワズキャンはもしかしたら・・・イルミューイが謎の病を「発症」していたことを分かったうえで・・・イルミューイが「病気が治りたい」という願いをするかもって考えてた可能性もあります。いくつか想定した選択肢はありそう。
動ける隊員が日に日に減っていき・・・、食糧確保も厳しくなります。食料も描写を見る限りでは、隊の人数も踏まえ割と大物を狩らないと食べていけなさそうな描写で。大物を安定して狩る人員確保ももうできなかったのでしょう。日に日に食糧確保は厳しくなっていったと思います。
動けるのはリーダーの自分位で・・・、食べるものに困った状況で、かといってここで「諦める」という気持ちは湧かないわけで。
そうだとしたら・・・まあ・・・「死体」を食べることになりますよね。となると、まあ人の形もしていないし、死んだ隊員を食べるよりかはイルミューイの子の死骸を食べる方がまだ抵抗はなさそうです。(描写がないだけで死んだ隊員も食ってた可能性はゼロじゃないと思います。)
という事で「最初は」死んだイルミューイの子をさばいてスープにして食べたわけですよね。そこらへん詳しく描写はありませんが、セリフで言及されています。もちろん隊員にも食べさせて回ったわけです。彼はリーダーだし、隊員を無下に見捨てるわけじゃないから・・・。そういった点でもボとちょっと違うかも。
で、食べさせてみたら食べさせてみたらで謎の病に「効く」事が分かったわけです。
ワズキャンはきっと「おお、こりゃいいぞ」って思ったはず。
最初はちっちゃいイルミューイの子の亡骸をガンガンさばいてスープにして隊員に与えて配ったはずです。隊員の規模と亡骸のサイズを比べるとどうしてもやはり足りない。となると・・・死骸を喰いつくしたうえで、「効く」ことが分かった、つまり「食料」というよりは「薬」として死骸を認識したワは・・・足りなかったら「生きているイルミューイの子」もさばいて食わせた方が隊員皆の命が助かりますよね。
だから・・・生きてる奴をさばいて食わせた。結果的に、そしたら死んだ奴を喰わせたより効果が高かったことが分かった。経験則ですよねこれも。
だからイルミューイが子を産むたびその子をさばいてスープにしたわけで。
そこから「大丈夫、みんなにも振舞ったさ」になるんだと思います。
純粋に「味が旨かった」ってのは多分想定してないんじゃないかなと思うのです。
まあそういった感じで・・・、彼は常に「チャンスを只待つ」だけでなく、その場でその状況で考えられる手は全て尽くしたうえで、その結果「チャンスを引き寄せた」わけです。
だから・・・予言でもなんでもなく、彼の「行動力」と「最善を尽くすための努力」が実を結び隊を生存させることができたのだと思うのです。
彼の憧れは「アビスの大穴に挑み、黄金郷を見つけること」。その為だったら「なんだってする」を本当に「なんでもする」を地で行く男だったわけです。
「神がかり」なんて・・・適当な他者評価じゃなく・・・彼は本当に「あるべきリーダー」だったんだよって話をここに記事として書きたくて、ここに記しました。
あと純粋に「欲望の揺籃」を自身に使ったのは、割とガチで食糧危機とかのシーンで追い詰められていたってのもあるんだと思います。しゃにむに言ってられる状況じゃなくなって、彼も人肉(イルミューイの肉も言ってみればそう)に手を出すのに相当悩んだはず。
ぶっちゃけ人肉食わせる必要なかったら食わせてないと思うんですよ。近くに生えてた草が効く!ってなったらそっち食わせるだろうし。
そして彼が「欲望の揺籃」によってあまりダメージを受けなかったというのも、
まずそもそも「欲望の揺籃」は「願いが雑念混じってないほど良い」とされるものであり、比較的子供の方が「願いに雑念が混じりにくい」事から、子供に使うのが適しているといったわけで。「子供にしか使えない」とは作中ではいわれていないです。
実際ワの行動原理の根底には「アビスの大穴への強いあこがれ」という殆ど純粋な「願い」ともとれる憧れがあったからこそ、ダメージが少なかったのかな?と思います。
〇ワズキャンというリーダー
回想シーン以降の話はいったん置いておくとして・・・。
このキャラクターはやはり根底から「やれるだけをやり切れる」男だったのだと思います。
凄いと思う。こうありたいと思う。憧れます。「最善を尽くす」ってのは人生において「絶対できた方が良い」事だと思うのです。
でもほとんどの人は「できねえ」と思うのです。「最善の選択肢」をこれだ!って一発で選ぶタイプの人じゃあないとも思うのです。ワズキャンは。
どちらかというと・・・いろいろと試行錯誤して、試して、いろんな方法をやってみたうえで選んだ選択肢の中で最終的にその現状で最良と思われる選択肢を「決定」することができたキャラで。
予言者などでは決してなく、只々人として「やれることを全部した」キャラだなあって思うのです。
「見てきたじゃん?君がこの呪いの大穴なら ここで 祈るだけ の者に何を与えるのかな?(只祈るだけの奴なんかに与えるわけないじゃん)」。ってセリフ、こう見てみると、ちょっと違って聞こえませんか?
祈ることは大事なのかもしれません。よりどころなのかもしれません。
でも、「行動すること」が大事なんだよって代弁してくれたキャラじゃないかなって思うのです。
そんな記事でした。