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*001〜020

はじめに

ここでは書き溜めた“100文字文章”についての解説と補足を少しずつしていこうと思います。
フィクション or ノンフィクション。
時々、書き足したり言い換えたり削除したりなどの推敲あり。


001|21歳のとき母に勧められて

21歳のとき母に勧められてお見合いをした。私が短大生の頃、ボロボロの靴を履く男性と付き合っていたせいで、娘が変な男とくっつく前にと思ったらしい。相手は、幼い頃にお世話になったピアノの先生の紹介だった。

私はグレていたわけではなかったけれど、今思うと自分でも頭を傾げるようなことをやっていた。
18歳のとき夜中にこっそり家を抜け出して、車に乗ってフェリーに乗って彼氏のところに行ったり、親に何も言わずに友達4人でラブホで一晩明かしたり(MTV観ただけです!)。
親にはかなり心配をかけたと思う。
とくに、17歳から21歳まで付き合った男性のことでは本当に心配をかけてしまった。
その人は3歳上。いつもボロボロのスリッパで我が家にやってくるので、母は『普通なら彼女の家にこんなもの履いてこない。何か変な人だ』と警戒していたようで、いつも不審そうな表情をしていた。
だから、その男性と別れた途端に、『この子には私が結婚相手を見つけてやらないと、とんでもないことになるかもしれない』とのことで、私不在で見合いの話をもらってきた次第。
結局、その見合い相手とはその日だけで終わった。そんな出会いで話が弾むわけがない。

2025-01-24

002|「北東へ行け」とその占い師は

「北東へ行け」
とその占い師は言った。
それからほどなくして私は、我が家から車で30分ほど離れた北東の土地で一人暮らしを始めた。
占いで決めたわけではない。新しい職場がたまたま北東にあったというだけだった。

実話。当時住んでいた実家から見て北東の位置にある職場と一人暮らしのアパート。
その地で旦那と出会った。

2025-01-25

003|喋ると感染する病が流行って

喋ると感染する病が流行ってから2年経ち、最近は筆談で会話をするブームが来ているらしい。
音楽を楽しむことも無くなり、今はただ文字を書いて読むことだけが人々の唯一の娯楽だ。
さて今夜はどんな言葉にしようか。

Xでのお題写真を見て。2人の男性がカフェで向かい合って書き物をしている写真だった。

2025-01-25

004|女はポケットにたくさん石を

女はポケットにたくさん石を詰めて重くなろうと決意した。
でも石を拾っていくうちに、石の滑らかな優しさやゴツゴツした力強さ、綺麗な色や美しい模様に心を奪われていく。
そしてついに、ポケットはいっぱいになった。

ヴァージニア・ウルフが入水しなかったかもしれない世界線。

2025-01-26

005|お元気な100歳の母親を持つ

お元気な100歳の母親を持つ70代女性が、「私にはまだ30年もある」と夢を語っていた。でも早くに母を亡くした私は未来を想像できない。
母の年齢を無事越えられるだろうか。
カウントダウンはもう始まっている。

この70代の女性は、私の母と同級生。その女性のお母さんは100歳だけれど、短歌や俳句を作ったり、食欲旺盛でとてもお元気とのことだった。
「母を見ていたら人生はまだまだこれからだと思える」とおっしゃっていた。

2025-01-26

006|どうやら、湯気を見て運勢を

どうやら、湯気を見て運勢を占うらしい。
僕の目の前にあるカップからは、長くて白い髭のような湯気がもくもくと立っている。

占い師はしばらく沈黙したかと思うと、一言こう言った。
「ダメですね」

…何がダメなんだ?

白い湯気が出ているコーヒーカップから連想。

2025-01-27

007|小学生の頃、ひいばあちゃんの

小学生の頃、ひいばあちゃんの遺影がある和室で寝ていた。真夜中に目が覚めると、いつもばあちゃんと目が合った。
もうその家は取り壊されてしまったけど、今でもばあちゃんはあの和室に居て、私を待ってる気がする。

曽祖母は私が9歳の時に亡くなった。それから私が眠る和室に曽祖母の遺影が架けられた。
曽祖母はいつもこちらを見ていた。どこの角度から見ても目が合っている気がしてならなかった。悪夢も何度か。

2025-01-27

008|廃屋の映像が流れている。

廃屋の映像が流れている。
割れた茶碗や日付の古いカレンダー、色褪せたポスターに家族写真。人間の営みがあったであろうその跡を踏みしめている。

一瞬、カメラの先に見覚えのある何かが映った。

…あれは僕のモノだ。

YouTubeで廃屋を探索する動画を一時期好んで見ていたことがある。
確かにそこには人間の、家族の営みがあった。足元に散らばる、その家に住んでいた人たちが大切にしていたもの。
時々子供のものが映り込む。
その時、ゾクっとする。
ーこの中に私がいつか無くした何処かにいってしまった宝物が落ちてたらどうしよう。
そんなことを想像しながら、画面を切なさと共に食い入るように見ていた。

2025-01-27

009|学生の頃、彼に会うため家族

学生の頃、彼に会うため家族が寝静まった深夜2時にこっそり自宅を抜け出し、車を飛ばした。
フェリーに乗り息を整えているところへ「◯◯◯子様、お電話です」というアナウンス。
携帯などなかった時代のことである。

親に気づかれて捕まらないようなるべく短時間で家を抜け出すために、こっそり靴と車の鍵を2階へ持ち込み、親が寝静まった真夜中に窓から脱出。そして一気にそのままフェリー乗り場まで走り抜く。
車を駐車場に停めてフェリーに走り込み、乱れる息を整えているところへ、私の名前を連呼するアナウンスが。母からの電話がかかってきたのであった。
スマホがある今の時代では考えられないことである。

2025-01-28

010|狭い場所が好きだった。

狭い場所が好きだった。
いちばん古い記憶は、保育園の保育室の壁沿いにあった狭い棚に入ること。ギリギリ入れるぐらいの息が詰まりそうなスペースに背中から入る。
そしてそこからみんなが遊んでいるのを眺めていた。

家の中でも狭い場所がすきだった。段ボール箱を繋げて子供がひとり入れるぐらいの家を作ったり、テレビを見る時は座布団をいくつか重ねてぐるりと自分を囲ってみたり。
今思うと、自分の"居場所"が欲しかったのかもしれない。または何かに包まれる感覚が欲しかったのかも。誰にも侵されない場所。
今思うと、その頃から淋しさを感じていたのか。
そういえば、その頃の私は母の服の裾を噛んだり、自分の服の袖を噛んでボロボロにしたりもしていた。

2025-01-29

011|4歳の私は笑うでもなくキッと

4歳の私は笑うでもなくキッとカメラを睨んでいる。運動会の練習なのか、緑の帽子をかぶり同じ組の子たちと手を繋いでいる。皆あどけない表情なのに、私だけは世界の全てを見透かしているかのようだ。何も知らずに。

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2025-01-30

012|左肩にある500円玉サイズの

左肩にある500円玉サイズの痕。気がつくと爪でぽりぽりと掻いている。かさぶたとのおっかけっこだ。せっかく治ろうとしているのにそれを止めている。誰かに気付いて欲しい構って欲しい幼児のように、それはある。

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2025-01-31

013|女は不要な部分を切り取ること

女は不要な部分を切り取ることにした。小さなナイフを使って。
正常な部分とそうでない部分を見極めないといけない。でも最近はふたつの目も霞んでいる。

朝の匂いがしてきた。
女はもう何も見えないことに気がついた。

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2025-02-01

014|私の大事な写真がどこかに

私の大事な写真がどこかに行ってしまった。
3cmほどの厚さの赤いアルバムで、写真の四隅を三角の中に入れ込む昭和の仕様のものだ。唯一、幼い私が写っている。
一方の夫は、写真好きだった親のおかげで6冊もある。

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2025-02-01

015|ライダースーツのジッパーを

ライダースーツのジッパーを上げるとき、胸がむりゅっとなるあのシーンは中学生の私には刺激的過ぎた。深夜にたまたまテレビで流れてきた映像だったけど、昔はそんな感じで、知らずに観ていて知った映画が多かった。

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2025-02-01

016|敷きっぱなしの万年床の向こう

敷きっぱなしの万年床の向こうに黒い大きなゴミ袋が数袋見えた。確認してみると、中身はすべて私が送った手紙だった。4年間毎日書いたそれらは折り畳まれることもなく、まさにゴミとなって無造作に棄てられていた。

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2025-02-02

017|毎年節分の日には、亡き母が

毎年節分の日には、亡き母が具材たっぷりの恵方巻きを人数分作ってくれていた。母が作る酢飯は甘めで具材も甘め。だから、よく似た味の巻き寿司と出会うと懐かしくなる。だいたい、田舎のスーパーにある確率が高い。

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2025-02-02

018|サンタさんはいつも、欲しい

サンタさんはいつも、欲しいものを枕元に置いてくれたことがなかった。サンタさんに手紙を書いて教えればよかったのか。というか昔から欲しいものがわからなかった。誰かから言われると初めて「そうかなぁ」と思う。

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2025-02-05

019|何週間ぶりだろうか

何週間ぶりだろうか。立ち退きした誰もいない空家で、思いもよらずシャワーを浴びることができた。これでしばらくは見つからないで済むだろう。
今降っている雨も僕の気配を消してくれる。
このまま眠ってしまいたい。

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2025-02-05

020|実家の風呂のタイル模様や

実家の風呂のタイル模様や布団から見上げた天井の木目、割れたいちじくに群がる蟻たちや瓦屋根越しの夏空。見慣れた何でもない風景だったはずなのに、目を閉じればふわっと浮かぶ。私だけの視点と色、匂いと手触り。

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2025-02-06

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