「中高生の頃はエンタメが遠かったな」と思って
知らない風を吹かせてくれよ
中高生の頃、「自分はなんて狭いところにいるんだろう」と思っていた。目にうつる世界がまるごと閉鎖的に思えて、時々かなりしんどかった。ここは最悪だ、誰でもいいから誰か、知らない風を吹かせてくれよと思っていた。
まあ、今になって思えば、中学や高校の環境は最悪とも限らなかった。「中にいたから嫌だった」ってだけで、学校はかなり青少年のために頑張ってくれてはいる。自分には見つけられなかっただけで、風もびゅうびゅう吹いていたんだと思う。
教科の勉強はどれも世界とつながるきっかけになるし、部活や課外活動に至っては、ほとんど慈善事業で世界の幅を見せてくれる。あるいは、コンスタントに会う人間がいっぱいいる時点で、環境としてはかなり凄い。同じ条件の会社を探すのは難しい。
大人になって同じことをしようと思ったら、お金も労力もどちゃどちゃにかかるんだろうなってことが、当たり前にすぐそばにあった。
エンタメの遠さったらなかった
でもやっぱり、どう考えても遠いものはあった。エンタメである。中高生の頃、エンタメの遠さったらなかった。自由に使えるお金がないから、見たいものを見に行くことは難しい。かと言って、面白いものに出会うべく家でだらだらテレビを見ていても怒られる。図書館は味方だったけれど、図書館くらいしか味方がいない。
年に一回くらい、「芸術鑑賞会」みたいなイベントはあった。あれは凄く好きだった。だけど、あれは年に一回しかない。
英語や数学や、街にあるあれこれではないところでメシを食っている大人の存在を、もう少しいっぱい見たかったなと思う。その感覚こそが「風穴を開けてくれ」の正体だったのだと思う。
ああいう場を増やすにしたらどうしたらいいんだろう? 中高生にとって安価でアクセスしやすいエンタメを準備したい。それもなるべく教育的な意味があってほしい。でもどういうやり方があるんだろう? ここ数年、頭の中にぼんやりとそういう問いがあった。
いま、僕は芸人をしている。事務所無所属、完全な個人活動。売れきっちゃないが、売れかけてはいる。本だって出した。そこそこ変わったメシの食い方を実現している。
たぶん、中高生が日頃出会えるタイプの大人ではない。もしかしたら、やりようによっては何かできるかもしれない。僕に会いたい中高生がいるかもしれない。
中高生無料のお笑いライブ、開催
何かできないかなと考えていた折、ひょんなきっかけから、たまに渋谷にあるLoohcs高等学院で授業をすることになった。その詳細は以下の記事。
そこでなんとなく学生と関わっているうち、「九月さんを使って何かできるのでは?」という話になった。使ってくれるなら使ってくれ、別に何だってやるよ、と返した。
そしてトントンと話は進み、学校の教室で「中高生無料のお笑いライブ」をやることになった。運営は高校生により組織された「九月部」です。すごいな。
大人も一応は2000円で申し込めるのだけど、うっすら保護者さんなどを想定している。それ以外の来場禁止とかってのではないのだけれど、あくまでも主役を学生たちにしておきたいため、各自の判断のもと。他のライブも山程あるしな。
ちなみに大学生は半額の1000円。大学生の頃に自分がお金なかったのを思い出したため。大学生もバンバン来てよろしい。
できることは、なんだってしよう
そう、肝心のライブ内容としては、出演者は僕のみ。90分間コントをしたり、トークをしたりする。たぶん、学校に関するコントとか、進路選択に関するコントとかを選ぶんだと思う。
せっかくなので、自分が10代の頃に見ておきたかったなと思うものを揃えていくつもりである。できることはなんだってしたい。
そしてその後、120分間の座談会を行う。進路相談、将来の話、身近な疑問、最近気になってること、趣味、特技、なんでも聞くし、なんでも喋ろうと思う。そこまで無料でやっちゃうのはどうなんだろうとも思うけれど、無料でよかろう。目先の利益なんかよりずっと大事なものがあるからだ。遠征の移動をワンターン夜行バスにすりゃいい話である。
若い頃にいろいろな大人に出会っておくことは、きっとものすごく大事だ。自分の現実にないものを見たり、聞いたりすることってすごく大事だ。主にコントとエッセイで食っている僕は、いい線いってる素材だと思う。ロールモデルになれる、とかじゃない。「こんなんもありなの?」と思ってほしい。
びゅうびゅう吹きたい
「中高生の頃はエンタメが遠かったな」って思う。あの頃に自分が抱いていた感覚への、一つの答えになったらいいなと思う。初回は渋谷でやる。今後は日本中でやれるようになるのが一番いい。配信を使ってもいい。色々な方法で、中高生の頃の自分が見たら嬉しがりそうなことをしていきたい。
あの頃の僕には感じられなかった風に、もしかしたらなれるかもしれない。びゅうびゅう吹きたい。
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