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人喰らう神々のこと VI

人間ごときが!といきどおりはしたものの、選り抜きの可動性作物(人間)が貴重な栄養素あるいは高級嗜好品の供給源であることから、殺戮し尽くすのは惜しい、と考えたようだ。

神々と呼ばれる存在は、どうやら、私たち人類を存続させたいと思ってはくれているようだ。食用作物としてではあるが。

さて、問題はその作物どもが、その収穫時に、良質の果実を提供してくれるのかどうかである。ロバート モンローのいう「誰か」は、多くの試行錯誤を経て、ようやく満足できる水準にまで、良質かつ多量のルーシュを生成させる育成法を探し当てたらしい。

往々にしてふたつの「可動性作物」が同一の「第二作物」のユニットから栄養を摂取しようとすることが起きた。これが葛藤を巻き起こし、複数の「可動性作物」が、体を張って不要な争いを展開させるのだった。(中略)争いが続くと、「可動性作物」はルーシュを放出するのである!それも微量ではなく、利用できる、まとまった量で、しかもずっと純度の高いものを放出するのだった。(魂の対外旅行p272)

純度の高い良質のルーシュを、その作物に生成させ、大量に採取する方法、その鍵は、可動性作物(人類)の発する感情にあった。そして、より効率的なルーシュ収穫の手段として、その「誰か」はさらに工夫を加えた。

産出物を扱うために「誰か」は収穫活動の手助けに「特別収集者」を設けた。(魂の体外旅行 p276)

モンローのいう特別収集者とは、カスタネダの記した「捕食者」を想起させる。

そしてルーシュ生成の鍵となる、作物の発する感情については、ロバート・モンローのほかに、ドン・ミゲル・ルイスも書き記している。

盟友たちは人間がもっと強烈な感情を生み出すかどうか心配になった。それを彼らは食料に使うことができたからである。その目的を達成するために、彼らは人間たちがどんどん不和になるよう仕向けた。彼らはこれを、人間のコミュニケーションの完全さを妨害することによって行った。結果、民族間に不和がもたらされた。(恐怖を超えて p.4)

神々の欲するものとは、人の発する強い感情、あるいは感情の発露に付随して生成される何かであるらしい。これがルーシュあるいは意識の炎と呼ばれるものであり、この果実を人間が成すように、創造者は、この作物どもを、あえて生きるのに困難を覚える環境下へと突き落とす。

「収集者」たちは経験に基づいて(中略)ルーシュを収穫するための補助的な道具なども取り込んだ総合技術を編み出した。そのうち最も普通のものにつけられた名称は、愛、友情、家族、欲望、憎しみ、苦悩、罪悪感、病、誇り、野望、所有欲、犠牲といったもので、より大規模なものとしては、国家、偏狭性、戦争、飢餓、宗教、機械、自由、工業、貿易、などいくつか挙げられる。ルーシュは今までになく大量に生産されている...(魂の対外旅行 p.281)

ここで思い出したのが、良質のトマトを収穫する方法である。トマトの苗を、あえて乾燥したやせた土で生育するという農法。トマトの原産地は南米の高地に位置する乾燥地帯だからだそうだ。適度なストレスを与えることで、甘い実が成る。神々の視点でいえば、トマトも人も立場は同列といえそうだ。


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