彼がCOVERを歌う理由

「Love all serve all」と共に発売された「Love all cover all」

先行配信された楽曲を除いて、新たに収録した5曲も安定のカバー力。
いずれも安心して聴いていられる。

特に、HEATツアーのオープニングを飾ったリッゾのカバー「 Good As Hell」は別格。歌唱、ピアノ全てに於いて他の曲とは一線引いてダイナミックに歌いあげ、リスペクトしているのがよくわかる。

カバー曲を聴いて感じるのは、彼は表と裏を使い分けるのが非常にうまいアーティストだという事だ。

【LOVE &PEACE】を表(オリジナル)で歌いたい。
【LOVE &SEX 】を裏(カバー)で歌いたい。


オリジナルとカバーは、表裏一体。
どちらも正解であり、アイデンティティ。
なのに正反対の顔を持つ。

時々UPされる、どぎつい性的描写が散りばめられた自由奔放な曲のカバー。

もちろん、ただ単純にメロディーに惹かれている場合もあるだろう。


だからといって世界配信のYouTubeで
「もっとキスして。私の名前を舌で書いて」とは歌わない。歌えない。

しかもハッピーニューイヤー!新たな年の始まり!
2022あけおめ配信1曲目である。
(曲紹介なしでサラっと歌い、説明もなかった)

Baby, hold me 'cause I like the way we move
抱きしめて。私はこの動きが好きなの

Boy, you write your name, I can do the same
あなたの名前を書いていいのよ、私も同じようにするから

Oh, I love the taste
その味が好きなの

All on my tongue, I want it
舌全体で味わいたい  

Doja Cat(ドジャ・キャット) – Kiss Me More 和訳



海外向けならピースフルなジョンレノンの曲でもよかった。アーカイブが残るのが分かっていての確信犯だ。

アカウントが必要なSNSとは違う。
世界中、誰でも気軽に見られるモンスター級のプラットフォームYouTubeにUPする覚悟。

アーティストとしてのイメージをガラガラと崩す危険をあえて犯す。やば。

カバー曲はもうひとりの自分を表現する大切なツールだ。
パブリックイメージはアーティストの核になる部分であり、清潔に保ちたい。
でも等身大の、ホントの自分も知ってほしい。

裏(カバー)の顔は普段とは全く違う。

大好きな人を失いたくなくて、未練がましく何度も「ごめんね」と謝ったり。


昨夜のベッドのシーツに残る匂いや、甘美なひと時を思い出したり。

「俺はこういうのが好き。君はホントについてる」
と口説きながら、暖かな暖炉の前で愛し合ったりする。

大好きな音楽を通して、24歳の世間一般的な経験をしている【ただのオトコ】だと知らしめてるみたいだ。

あれだけの英語の読解力があって。
ノリとイメージだけで曲を選んだりしてないはず。
メロディーの美しさだけで選びもしない。

そこには、隠された自己顕示欲が顔を出す。
こういうのもいいでしょう。ホントの俺はこうだよ。
ちょっとした、遊び心なのか。誰かに気づいてほしいのか。可愛い反抗期みたい。

「こうあってほしい」という誰かの願いを叶えて生きていくのは、容易な事じゃない。
イメージに縛られるなんて、まっぴらごめんと思っているかもしれない。

もっと自由で、豊かなアイデンティティ。

羽ばたく時なんて、自分で決める。
誰を愛するかも自分で決める。

だけど、それをオリジナルの言葉には載せない。
いつも人に優しく、みんなの事を考えているから。

聴く者を限定しない。彼は相手を選ばない。
皆が心地よく生きていく為の音を紡ぎ出すだけ。

「みんなの為に歌うよ、でもたまには好きにさせて。」

そんな風に甘えてくるオトコに
私はとても弱いのだ。





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