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風呂場ですね毛を剃りながら、俺、なんでこんなことしているんだっけ、と思った。四枚刃のシェーバーの隙間に、ねじくれた長い毛が挟まってうねっている。 ********* 引っ越しの荷造りをしている最中だった。別れた彼女の私物入れだったシェルフから、未開封のストッキングが出てきた。予備用に置いておいたのだろう。捨てるか。分別めんどくせぇな。すう、っと息を細く長く吐いて、俺は包装を破いた。ボール紙は資源ごみ、袋は燃えるゴミ。ストッキング本体は? 本体は、これ、なにでで
大小様々な企業のオフィスがひしめき合うビル街。その中でも一際高いビルの屋上で、清掃員の格好をした男が二人、寝そべりながら何かを話している。片方の男の手には望遠鏡、そしてもう片方の男の手には、銃身の長い狙撃銃が構えられている。ドラグノフと呼ばれるその銃は、細身ながらも標的を確実に仕留める正確さと破壊力を兼ね備えている。 望遠鏡を覗く男が静かに口を開いた。 「標的は見えたか? ここから六〇〇メートルってところだ。右からの風があるな、少しずらした方が良い」 さらに低い声で狙