「アイとアイザワ」第一話
パラパラとページをめくる。1ページにつき1秒にも満たない速度で。ページの端が弧を描き右手の親指に受け取られると、間も無く次のページが左手の親指を離れる。それはメトロノームの様に一定、かつ極めて早い速度で繰り返される。
文庫本はおおよそ300ページ、10万文字程度で構成されている。単純計算で、見開きで666文字だ。つまり、1秒にも満たない間に666文字が視界に飛び込んでくる。人間は、そんな速度で文字を読む事ができるのだろうか。彼女にそれを尋ねようものなら、きっとこう正されるだ