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キリン・平山高敏さんに聞く「なぜいま法人がnoteを選ぶのか?〜効果が得られるはじめ方・つづけ方〜」note法人利用 1万件突破記念イベントレポート
noteの法人利用が1万件を突破しました!
その記念として、キリンホールディングスでオウンドメディアを作り上げた平山高敏さんにお話をお伺いします。オウンドメディアの現状からコンセプトの建て方、実際の作り方とその評価について。そして、その中でnoteをどのように捉えて使っていくべきなのか? 平山さんの知見と経験に基づくロジカルな解説は、オウンドメディアに関わる人のみならず、企業の発信に携わるメディア運営に携わるすべての人の参考になる内容です。
また後半では、noteの廣瀬藍里さんから、noteの法人活用の事例も紹介。平山さんの解説後に見れば、より深く各社の取り組みが見えてきます。
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登壇者紹介
平山高敏さん
キリンホールディングス株式会社 コーポレートコミュニケーション部
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広告会社を経て、2012年より昭文社にて『ことりっぷweb』のプロデューサーとしてコンテンツ企画、SNS戦略、コミュニティ戦略など全般を担う。
2018年キリンホールディングス入社。2019年「キリンビール公式note(現KIRIN公式note)」を立ち上げ、オウンドメディアを軸にした企業コミュニケーションの戦略を担う。
変化するオウンドメディア
本日はよろしくお願いいたします。キリンホールディングス コーポレートコミュニケーション部(以下、キリン)の平山と申します。
まずはオウンドメディアの概況からお伝えしたいと思います。オウンドメディアは、2017、8年から徐々に風向きが変わってきて、2019年以降は企業のミッションや考えを伝える場になってきました。長期的な視点を持って「社会の一員としての企業のパーパス(存在意義)を浸透させることで企業ブランド価値の向上を目指す」というのがここ数年の動きです。
これを4象限に分けてみました。

これまでは右側の企業や商品が主語(起点)であったものが、左側の社会や個人が起点のメディアが増えてきた。「KIRINto」とは、2021年にスタートしたキリンのオウンドメディア。
これまでのオウンドメディアは、図の右側です。主語は企業で、コーポレートサイト、InstagramやTwitterなどを使って発信し、商品や企業活動を伝える場でした。それが2019年以降は図の左側の社会に起点を置いたメディアや、従業員や企業のトップである“個人”が主語となるメディアが徐々に増えてきたのです。
この変化の中で、noteは左上に位置しています。noteは社会や個人を起点にしたプラットフォームであり、ここ数年で一気に法人アカウントが増えています。キリンもいち早く2019年4月に開始しました。なぜキリンがなぜnoteを始めたのか? その理由は「もったいない」です。

僕は2018年にキリンに転職をしましたが、社内で話を聞いていると、商品の作り手の熱意や環境課題、コミュニティなどソーシャルイシューに関する取り組みなどが聞けば聞くほど面白く、「もっと伝える必要があるのではないか」と思いました。広告やリリースだけでは伝わりきらない価値というものがまだたくさんあると思ったんです。そこで、まずは社内で聞いて面白かった話を伝える場としてnoteを始めました。
noteを選んだ理由
ここからはnoteの魅力をお伝えいたします。noteはプラットフォームなのでソーシャル的な機能を持っています。では、Twitterなど他のソーシャルメディアとの違いは何か? それを並べたのが以下の図です。

Twitterは「Look at This」、Instagramは「Look at Me」、そしてnoteは「Look at Story」のプラットフォームです。発信者の背景や文脈、想いが綴られた長いコンテンツがしっかりと受け入れられて、さらにコミュニケートしていくことができると思っています。この理解が重要で、Twitterなどとは違うことをやらねばならないことが見えてきます。

その他の特徴として「noteというメディアが人格を持っている」という点が挙げられます。毎日公開されていくコンテンツの中で、note運営が「おすすめ」の記事を紹介するんです。ほかにも、ソーシャルイシューに関心のある方との親和性が高い点や、カルチャーやパーソナルなど個人的な言葉、そしてためになるナレッジコンテンツが受けやすいという点も挙げられます。
さらに、noteにいる方が互助の関係でTwitterで拡散するという空気感もあります。私は「同心円状」という言葉を使っていますが、コンテンツに共感したユーザーから自発的に広がっていく空気感があるのです。
また、コスト削減というメリットも大きい。noteは基本的にはページの制作コストがかかりませんし、先ほど申し上げたように「おすすめ」にピックアップされる可能性もあります。メディアをゼロから立ち上げるのはなかなか大変なのですが、noteであればコストはかからないし広がる可能性もあるというわけです。
まとめますと、キリンがnoteを始めたのは「手軽にソーシャル起点のパーソナルな発信が読者の共感を得て、拡散される可能性がある」という判断があったからです。
コンテンツの作り方・拡げ方
ここからは、具体的なコンテンツの作り方をお伝えします。

一般的なオウンドメディアは、「企業主語と読者の関心の掛け合わせ」が重要だとされています。
伝えたいメッセージだけでは、独善的な「企業主語」になってしまいます。オウンドメディアではそこに「読者が何を考えているか?」を組み合わせてちょうどいい落とし所を見つけられる企画力/編集力が問われています。
そして僕はもうひとつ、「世界観」=目指す姿が大事だと思っています。メディアとして企業の中にあるものを光らせ読者の読後感をもってメディアを成長させる。世界観をしっかり示すことで、「noteで一回取材して取り上げてほしい」という話が社内から出てくることもあります。
そのうえで「誰に」「何と言って」シェアしてほしいのかを考えることも大切です。たとえば取材対象者の「代名詞」となるような記事が作れれば、本人が自然と周りにシェアしてくれます。記事を読んで共感した人がまたシェアする、という連鎖を生み出せれば、Twitterやソーシャルメディアにおいても広がり得るコンテンツになるのではないかと考えます。

僕はまだ道半ばではあるのですが、ベースの考え方として緩やかなコミュニティに見えるようなメディア展開を理想として掲げています。
KIRIN公式noteのコンテンツ
実際のコンテンツは、雑誌『BRUTUS』(マガジンハウス)の元編集長である西田善太さんの言葉をもとに企画をしています。「売るためのBRUTUS/広告を取るためのBRUTUS/色を出すためのBRUTUS」という言葉です。
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「売るため」「広告を取るため」「色を付けるため」という役割が意識されている。
それぞれ何を意味するのか、事例を交えながら紹介します。
「#今日はキリンラガーを」は、色を出しながら数字も取れそうなニュアンスの連載です。企業/読者/世界観と、先ほどの3つの円を意識して作っています。
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企画にあたっては、「企業」「読者」「世界観」の3つが意識されている。
我々「企業」としては、キリンラガービールは原点であり伝統品質として伝えたい。しかし「読者」の目線で考えると、若い方や感度の高い方にはロングライフデザインや「定番」という言葉が刺さるのではないか? 「世界観」という意味では、100年以上続いているブランドなので、いろんな方の中に自分にとってキリンラガービールがあるはず。そうであれば、キリンラガービール愛のあるクリエイターさんとコラボをしていったらよいのではないか? こんな風にして組み上げていき、従業員側とクリエイター側の往復書簡をイメージした企画にしました。
4カ月ほど続けていった結果、Twitterでシェアされたり、クリエイターさんがシェアしてくださったりして、「やっぱり私も好きなんです」とか「今でも飲みたくなる」という声が集まり、結果として、Twitterで上で「#今日はキリンラガー」は1500万リーチを達成しました。
次に紹介するのは、「#いい時間」です。
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キリンはウェルビーイングな企業であるというイメージを獲得したい。しかしウェルビーイングといっても言葉としては漠然としています。読者としては暮らし方やこれからのヒントになるようなものが欲しい。これらを組み合わせて「#いい時間」というキーワードにし、トップクリエイターの方に「いい時間」というテーマでお話を聞いていきました。トップバッターを漫画『孤独のグルメ』原作者の久住昌之さんにお願いしたところ、多くの方に読まれてシェアしていただきました。
最後に紹介する事例は、「一人の働く人」にフォーカスしたコンテンツです。
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採用面でも活用され始めている。
これまでは、「商品があっての人」になっていたところを度外視して、「人」だけにフォーカスして企画しました。実はこのコンテンツは採用面で効果があり、この記事を読んでキリンに就職希望を出した方が、受かったあと取材対象の女性に会いに行くというエピソードまで生まれました。あえて採用で使おうとしたわけではなかったのですが、結果として採用面で活きた事例です。
評価は? 一過性で判断しない
オウンドメディアの評価はシンプルです。すべてのコンテンツが読者に刺さるわけではないので、バズなどの一過性の数値では判断しません。ではそのうえで何が大事なのか? 僕は社内と社会の両方をずっと見続けることが求められていると思っています。

オウンドメディアはどちらかに寄ってしまうことが多いので、僕は「足は内側に向けて、目を外に向ける」とよく言っています。当たり前かもしれませんが、意外と忘れがちです。もちろん、社内に寄ってしまうこともあり、全部やれているかといえば難しいのですが、やはり視座は真ん中に置くべきではないかと思います。
そのうえで、コンテンツはヨコとタテの面積で考えます。

タテは資産性です。このコンテンツが、先ほど申し上げた「代名詞」になっているとなれば、5年後10年後も使えるコンテンツになります。
ヨコというのは、マルチユースといった意味合いで、そのコンテンツが一石二鳥なのか? という評価軸です。採用にも使えるかもしれない、営業の補足資料に使えるかもしれない、リリースのレターに使えるかもしれない、といった観点です。
たとえば報道関係者向けのレターにおいて、商品のリリースとセットで開発の裏話的なnoteを配布すれば、補足資料となるでしょう。ヨコで使われた実績が積み重なれば、オウンドメディアの必要性が高まっていくということもあるのではないかと考えています。
まとめ —社内の熱源にあたり、共感者から広げる—
全体をまとめますと、しっかり熱源にあたるのが第一です。従業員の代名詞になるくらいの「声」を持っている方にあたっていくこと。次に、企業/読者/世界観からコンテンツを作って、共感者から拡げるということをイメージしていけばいいのかなと考えています。そのほか、数字だけで評価しないことを前提に、ヘルシーにやっていく。noteは、それがやりやすいプラットフォームではないかと思っています。
法人のnote事例
セミナーの最後には、noteの廣瀬さんから法人のnote活用事例の紹介が行われました。各企業の取り組みを紹介します。
みんなの銀行さん
noteを通して顧客やステークホルダーに自社の思いが伝わった。
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ソウルドアウトさん
社員の個性発信で指名発注を獲得。

NECネッツエスアイさん
採用エントリー数1.62倍 。「社内の風通しの良さ」のスコアも3.20→3.75に上昇。
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早川書房さん
電子書籍のCVR20%超え 少ない工数でWebメディアを制作。
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text by 吉川大郎