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「救われた」の声が集まるマンガ「スパあんこうの胃袋」。共感を呼ぶ物語はどうつくられたーー?
7万いいねの話題作が生まれたのは、ベビーカーで入ったカフェだった
「あ......コートのひも引きずってる」
家族で入ったガラス張りのカフェ。あきばさやかさんは、窓の外を歩く女性を目で追っていた。
声をかけようにも店内からでは難しい。
女性はあっという間に見えなくなってしまった。
そのとき、ふと思った。「私も同じような失敗をよくするけれど、その度にいろんな人に助けてもらったなあ」。
同時に、ある妄想が頭の中に広がり始める。
「いままでわたしを助けてくれたような親切な人が報われる世界があったらいいな。その人たちを集めて、温泉みたいな癒しの場所に連れていけたら最高だな……」
でもどうやって、親切な人たちを集める?
ベビーカーで眠る我が子を横目に、思考を巡らせる。
すると、「親切な人が報われてほしい」という思いと、子どもが夢中になっている深海魚の「チョウチンアンコウ」がリンクした。
チョウチンアンコウは、頭部から伸びる釣りざおのような突起(イリシウム)の先端を光らせて、餌となる小魚を誘き寄せる。4歳の長男と一緒になって読んだ図鑑で得た知識だ。
もし、その先端に自分のような“おっちょこちょい”がくっついていたら、親切な人を誘き寄せられるのでは?
ものの数分だろうか。気づいたら、第1話のプロットができあがっていた。
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初めての創作漫画が、SNSで突然話題に
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イラストレーター、コミックエッセイ作家として活動している、あきばさやかさん。
これまで、育児をメインとしたコミックエッセイを公開し、着実にファンを増やしてきた。
イラストレーターとして独立してから7年。2021年4月、初めての創作漫画『スパあんこうの胃袋』をnoteにて発表。
「今まで出会った親切な人に、いいことがありますように」。そんなあきばさんの想いが詰まった、じんわりと心を温めてくれる1話読み切りの物語だ。
第1話を公開後、あきばさんは自身のTwitterで告知。
すると、「いいね」や「リツイート」の通知が絶え間なく鳴り響き始めた。
「何が起きているんだろう......」
スマホを片手に戸惑っていると、いいね数はあっという間に7万件を超えた。
想像を上回る出来事は、それだけではない。
複数の出版社から、書籍化を熱望するメッセージが届いたのだ。
「1話のみで終わらせるつもりだった」という本作だが、あまりの反響の大きさに続編の制作が決定した。
「『スパあんこうの胃袋』を読み、すぐにメッセージを送った」という担当編集者は、こう振り返る。
「物語の構成力、画力ともに素晴らしかったです。感動するストーリーのなかに、誰もがクスッと笑えるユーモアが織り込まれていて、バランスも最高でした。他の出版社からも注目されているはずだから、急いで『書籍化の打診をしよう』と動きましたね」
自身初の創作漫画が、異例のスピードで書籍化。クリエイターのキャリアとしては、順風満帆に見える。
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だが、「本作を公開するのはすごく怖かった」と、あきばさんは過去のある出来事を振り返った。
「自分には描けない」そう考えていた過去
昔から漫画が好きだったあきばさん。なかでも少年漫画を読むのが大好きだった。初めて本格的な漫画を描いてみたのは中学校3年生のときだ。
マンガ雑誌の新人賞に応募しようと、受験勉強の合間を縫って夢中でネームを描きあげた。
主人公がモンスターを倒すという王道のストーリー。40ページを超える作品だった。
あとはペン入れをして、応募するだけ。それなのに……
「描けない」
人物を描こうとしても、背景を描こうとしても、ペンが思うように進まないのだ。
自分はなんて絵が下手なんだろう。こんなの応募できるわけない。そんな思いばかりがあふれてくる。
結局、応募どころか描き上げることすらできなかった。
この事実が、心にどんよりと影を落とす。
「ヘタでも、描き切って応募してればこんなに引きずらなかったかもしれないですね」
当時を思い出して、あきばさんは笑う。
それ以来あきばさんは、「自分に創作漫画は描けない」と思い込むようになってしまった。
創作漫画を描きたいと再び思えるようになったのは、ここ数年のことだ。
親しくしているコミックエッセイ作家やイラストレーターが、創作漫画の制作に踏み出していく。その姿を見ているうちに、「自分も挑戦したい」と思えるようになっていた。
リアリティのあるキャラクター作り
創作漫画から長年遠ざかり、コミカルなコミックエッセイを描いていたあきばさんにとって、『スパあんこうの胃袋』は新たな挑戦だった。
「久しぶりに描いた創作漫画はとても楽しかったです。細かい部分までこだわりを散りばめました」
あきばさんのこだわりは、人物やストーリーはもちろん、それ以外にもふんだんに詰まっている。
たとえば、キャラクターたちのファッションやヘアメイク、アクセサリー。
「この子は、カッチリめのオフィスカジュアルが好きそうだな」
「この子は、こんな部屋着を好むだろうな」
キャラクターが実際に存在したら──。ときには身の回りの人とキャラクターを重ね合わせながら、想像を膨らませる。
「そうすることで、少しでもストーリーに説得力が生まれればいいなと思っています」
そう言ってあきばさんは笑顔を見せる。
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さらに、あきばさんが「なんでもアリの空間にしました」と笑う、あんこうの胃袋内(スパの館内)。
毎話主人公が変わる読み切り型の本作では、登場するスパの仕様が毎回異なる。
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「なかでも読者に人気なのは、『30分で8時間睡眠分 回復するベッド』ですね。せっかくスパに来ても、寝ちゃったらもったいない。でも眠い。そんな悩みから思いついたアイデアです(笑)」
このコマがなくとも、ストーリー展開に大きな影響はない。だが、『スパあんこうの胃袋』の世界観に没頭してもらうために重要な1ページだ。
スパの俯瞰図を描くのに使ったのは「初めて触った」という、3DCGソフト「Blender(ブレンダー)」。
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「Blenderを使う前は、子どものレゴブロックを地道に組み立てて疑似スパを作ってました。組み立て終わったら写真に撮って、それを参考に描いていたんです。でもすごく時間がかかってしまって」
試行錯誤の末、現在のスタイルに行き着いた。
だが、Blenderを導入したとはいえ、この1ページを描くだけでも約2日かかる。
ましてや、まだ0歳の娘を抱きながら描き続けるのは容易なことではない。満足に睡眠がとれない日も多くあった。
それでも苦にならなかったのは、純粋に楽しかったからだ。
「一度は諦めた創作漫画を描けている」。それが嬉しかったのだ。
「救われた」共感を呼ぶストーリーの裏側
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「報われた気がしました」
「自分のことかと思った」
「涙が出ました」
読者から寄せられる本作への感想は、共感が大半を占める。
「あんこうに飲み込まれる」という非現実的な設定でありながら、だ。
悩みを抱えたキャラクターは、わたしの分身なんです──、とあきばさんは言う。
たとえば、第3話で描いた「何者かにならなければいけない」というテーマは、自身が実際に思い悩んでいたことだ。
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「同じ悩みを抱いている人に伝えたかったんです。無理して何者かになる必要はないよって」
男だから、女だから、ママだから──。
誰しも、性別や肩書きに囚われてしまうことは少なくない。
「でも......」と前置きして続ける。
「つらいのも頑張ってるのも、大なり小なりみんな一緒ですよね。だから、比べたり対立したりする必要はないなって。うまくいかなくたってそういう時もある、焦らなくていいじゃんって思うんです」
自分や身の回りの人たちの、リアルな想いから生まれるストーリー。だからこそ読者は、主人公と“いつかの自分”を、重ね合わせずにはいられない。
心がほどけるひと時を届けるように──。
あきばさんはこれからも、一つひとつの物語を大切に紡いでいく。
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あきばさやかさん
宮城県出身、現在東京で暮らす30代のイラストレーター。夫、2018年生まれの息子、2021年生まれの娘の4人家族。宮城県の広告会社にて営業として勤務後、2014年にイラストレーターとして独立し、上京。以降、雑誌、書籍、WEBなどで、イラストレーター 、コミックエッセイ作家、ブロガーとして活動。2021年より創作漫画を描き始める。2022年7月14日に著書『スパあんこうの胃袋』が発売。
note:https://note.com/akiba_sayaka
Twitter:https://twitter.com/akiba_sayaka
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プレゼント企画を実施します!
この記事をTwitterシェアしてくれた方から2名に、あきばさやかさんの著作『スパあんこうの胃袋』をプレゼントします!
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発送:9月中旬予定
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