好きなものを発信して、仕事の幅が広げられる。ライター・まいしろさんがnoteを書く理由
noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は、エンタメライターのまいしろさんにお話を聞きました。
音楽と映画を中心にエンタメシーンを独自の視点で切り取り、数字で分析するコラムが人気のまいしろさん。エキサイトニュースやLINE MUSICほかメディア各誌で執筆しています。
noteでは、LINE MUSICとコラボした「#いまから推しのアーティストを語らせて 」投稿コンテストでグランプリを受賞。
一級建築士にインタビューして「あつまれどうぶつの森」の博物館のすごさを熱量高く解説するnoteは、5000スキ・60万PVを超え、大きな話題を呼んでいます。
noteで書き続けていたらフリーランスのライターに
noteを始めたのは2016年春。当時、外資系IT企業に勤めていたまいしろさんは、どこか物足りなさを感じていたそう。
「音楽サービスをやりたくて入社した会社で、担当していたのは広告のデータ分析。自分の好きなことではないし、仕事に面白さが見出せなくて。せめて土日だけでも充実させたいとnoteを始めました。当時はペンタブでイラストを描いたり、自分が経験したことを報告する日記のようなnoteを書いていました」
仕事を変えて充実し、noteを書かない時期もありました。
2018年春、好きなバンドが再結成したことをきっかけに、データ分析や広告の仕事で培った視点と技術を生かして、自分の好きな音楽の分析記事を書いてみたまいしろさん。その記事は周囲の反応も良く、数字での反響もあって、何より自分自身が楽しかったのだそう。
「音楽は私の好きなことだし、それまで仕事でずっとデータを見てきたので、調べて分析することも苦じゃない。面白いと思えなかった仕事を真面目にやってきてよかったと思いました(笑)。
初めてちゃんと読まれたのが嬉しくて、働きながら週1くらいのペースで音楽の分析記事を書いていました。その後ずっと反響があったわけではないけど、めげずに書いていたら、エキサイトニュースが ”うちで連載をしませんか?”と声をかけてくれたんです」
2018年秋から、エキサイトニュースで週に1回程度の連載がスタート。その年の冬に公開した米津玄師さんの記事がYahoo!ニューストップに掲載されたことを皮切りに、他のメディアでも執筆する機会が増えていきます。
ライターとして個人で受ける仕事が増えたこともあり、当日勤めていた会社に意向を伝えて、働き方を変えることに。2019年春よりライター業を中心にフリーランスとして活動しています。
実績のないことを試して、仕事の枠を広げていく
独立し、本業として執筆活動をする今もnoteを書き続けている理由は?
「私にとってnoteは、“まだ書いたことがないけど書いてみたいもの”を試す場所でもあるんです。まだ書いたことがなくて、自分でも書けるかどうかわからないものは、メディアよりnoteの方が試しやすい。だからnoteでやって『書ける!』と思ったら、それを編集者さんに提案したりしています。
私は音楽のnoteがきっかけでライターになったけど、映画も好きで書いてみたかったのでnoteに書き続けていました。そしたら本当にお話をもらえて、映画のことも少しずつ書けるようになったんです」
大きな反響があった「あつまれ どうぶつの森」の記事も、まいしろさんのライターの仕事の幅を広げるものになりました。
「あつ森の記事がたくさん読まれて、“音楽ライター”と名乗っていた肩書きを“エンタメライター”に変えました。友だちには“あつ森ライター”と呼ばれています(笑)。
それまで、音楽や映画にまつわるふざけたテーマを真剣に分析する記事を書いていたので、ゲームの記事もインタビュー記事もほとんど初めてだったんですが、たくさんの人が記事を面白がってくれたおかげで、仕事にもつながりました」
実際に、「あつ森のモデル」として紹介した国立科学博物館の化石研究者へのインタビューが実現。その他にもあつ森の記事を書いています。
noteをきっかけに、まいしろさんは、音楽、映画、ゲーム、コラムからインタビューまで、ジャンルや形式、その仕事の枠を広げています。
自分の気分がのったときに、好きなことを書く
また、まいしろさんにとって、メディアとnoteでは書くスタンスに違いがあると言います。
「商業誌と同人誌のような違いがあると思っています。メディアでは、世間の”トレンド”と自分の”好き”が重なっているものを書くようにしていて、自分は好きでも世間でマイナーなもののことは書きにくい。
逆に、noteは世間でトレンドでないものでも、自分の気分がのったときに、自分の好きなことを好きなように書いています。その方が楽しいし、納得いくものが書けるというのもあるんですが、noteだと本当に好きなことを書いた方が読まれることも多いと思う」
音楽を軸にライターになったときの目標の一つが、10年以上ファンであるロックバンドa flood of circle(フラッド)の記事を書くこと。まいしろさんは、その目標をnote上で叶えました。
「noteで #いまから推しのアーティストを語らせて コンテスト募集を見たとき、いま書くしかない!と思ったんです。フラッドを知らない人にも記事を通してこのバンドのことを知って欲しくて、何度も読み直しながら書きました」
a flood of circleに対する熱くまっすぐな思いが書かれたまいしろさんのnoteは、見事グランプリを受賞。なんとその後、まいしろさんはa flood of circleのボーカル佐々木亮介さんへのインタビューを実現させます!
「私の人生の中でもトップクラスで嬉しかったです! フラッドの佐々木亮介さんが別名義で組んでいるバンドがあるんですが、彼らが”インタビューをしたい人”をTwitterで公募していたんです。勢いで応募したんですが、それがちょうどフラッドのnoteを書いた直後で。いつか聞きたいと思っていたことを直接聞けて、noteをやっていてよかったと心の底から思いました」
タイトルを決めることから始まる、noteの書き方
中学の頃から友人と交換日記をするようにブログを始め、高校時代は全盛期だったガラケーで友達とブログを書き、大学時代もサークルの仲間と持ち回りでブログを書き、社会人になってからはnoteへ。プライベートでも仕事でも、まいしろさんはインターネット上に文章を書き続けています。
「文章の書き方を習ったことはないけど、読んでくれた人の反応を見ながら、ネタや書き方は変えてきました。今はPVもわかるので、反応が良かったもの悪かったものを分析して、タイトルのつけ方や画像の数などを変えています」
自己流で磨いてきた、まいしろさんのnoteの書き方はーー。
1.タイトルを決める
2.データの下調べをする
3. 画像をつくる
「この3つが揃った段階で文章を書きます。タイトルは、言い回しの違いも含め10~20個くらい書き出してから決めることが多いですね。タイトルを先に決めておくと、余計なことを書いて無駄に長くならないし、長くなったとしても後からいらないところを勇気を出して削れるので(笑)、内容もあまりブレずに済むんです。逆に、どれだけ書きたいテーマでも、タイトルが思いつかないと書くのを辞めることもあります。
裏付けになるデータは、あらかじめ少しだけ調べておきます。簡単な無料ツールで調べてみたり人に聞いたり、どんな結果が出そうか仮説だけ立てておくイメージです。
それから私の記事はよく数字を扱うので、読み進めてもらうためにもわかりやすい画像が必要だと思っています。画像の中にも文章を入れるので、文字量が多くならないようにバランスを見ながら文章を書いています。あとは、あまりにも長い記事だと、文章を書きながら画像を作っていくこともありますね」
(まいしろさんのnoteより)
「あつまれ どうぶつの森」のnoteに使われていた文字入りの画像はなんと54枚。ささやかな疑問を、データを集め、時にインタビューをして徹底的に掘り下げて、画像をつくり込んでリズムある文章で魅せる。なかなか手が込んでいますが、まいしろさん自身は楽しいと言います。
「noteを書くときは、自分が『書きたい!』と思えるかを一番大事にしています」
まいしろさんにとって、熱量が高まったときに書くnoteは、自分の好きなものを伝えて広げ、できることを増やせる場所。
「みんなに知ってもらいたい好きなものがある限り、noteは続けると思います」
■クリエイターファイル
まいしろ
エンタメライターです。どうでもいいことを真剣に分析してみる記事をたくさん書いてます。音楽や映画が特に好き!エキサイトニュース、LINE MUSICなどで連載中〜!
note:@maishilo
Twitter:@_maishilo_
text by 徳 瑠里香