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カラオケ行こ!

私は原作漫画の実写化作品は好きじゃない。
なぜなら作品が面白くて大好きであればあるほど、三次元の世界になった途端チープで面白くないと感じてしまうから。そもそも滅多にキャスティングに納得しないめんどくさいファンなので、この私を実写化作品の上映に引っ張り出すのなんてほぼ無理に近い。

そんな私がなぜタイトルを「カラオケ行こ!」にしたのか。
観たのである。昨日、「カラオケ行こ!」を。
その感想を書きたくて書きたくてPCを開き数年ぶりにこのnoteにログインしたのであった。

ことの発端は友人のゴリ押し。一度や二度ではない「カラオケ行こ!を見てほしい!え、原作未読?私が貸すよ!!だから見て面白いから見て。脚本家は野木さんなの絶対面白いから見て」という並々ならぬ圧と布教活動。そこまで言うならと原作を読みまんまとハマったのだ。なんならファミレス行こ!(上)も見た。早く(下)が見たいよ。
そういう訳でゴリ押しから2週間も経たず映画館に足を運ぶことにした。

超面白い原作を読んだ上での不安。それはキャスティング。まず、狂児は全然綾野剛のイメージじゃない(ごめんなさい)。合ってるの年齢層くらいか?醤油かソース顔の俳優だろそこは、と。その時点で映画への期待値は60から30までに下がっていた。「ハァ~~~~。優待チケじゃないと見んど、この映画。」とまで思う始末。映画の後にガッカリするのが怖いから先回りガッカリムーブを出して予防線を張り続けていた。

そんなこんなの鑑賞後に抱いた感想が………
まさかの 「「「 最高 」」」 だったのである……………!

映画を観に行くと決めてからのアンチ綾野剛思考の私を全力でしばき倒したい。そして綾野剛の前に引きずりだしてコンクリ0距離で土下座をさせたい。本当にごめんなさい。正直、一時のガー○ー砲騒動からの結婚の流れで私の中の綾野剛はもう時の人になっていた。振り返ると居るけど前を向いている私の視界には入らない、そんな存在になっていた。だから余計アンチに拍車がかかっていたのだと思う。

映画の感想に戻す。
まず、綾野剛の狂児は漫画のまんまだった。なぜ????
帰って原作をもう一度読んで確認した。細かい動作まで狂児だったし、なんなら彼は漫画でフォーカスされていない部分まで汲み取って最初から最後まで狂児でいてくれていたのである。個人的にはあの何とも言えない視線がドンピシャリだった。狂児の音域に合う曲リストを聡実くんが渡したとき、狂児は話す聡実くんをずっと見つめていた。それは愛しいとはまた少し違う”慈しむ”目だと思った。慈しむを調べたとき「自分より弱いものへの愛情」とあってちょっとショックだった。でも私の感じた狂児の聡実くんへの目は慈しみだった。愛ももちろんあると思う。でもそれ以上に”かわいいもの”への慈しみを感じたのであった。自分よりはるかに幼い年ごろの少年をひとりの人間として尊重し大切に扱う。そんな狂児だから聡実くんは心を開けたし心惹かれたんだろうなと。
そして、聡実くん。君にはキャスティングの思い入れは何もなかった。正直誰でも変わらないだろうなんて思っていた。でも違った。齋藤潤くんじゃなきゃ成り立たなかった。まさか本当に15,6歳の少年をキャスティングしてくるとは……。実写の聡実くんは漫画よりも思春期だった。なりたい自分と現実の自分との乖離から合唱部への気持ちが遠のき、その心の隙間を埋めるように狂児と会うことや映画部に行くことが増えた。それは、人間にとって大切な防衛本能だったんじゃないかと思った。漫画の聡実くんは気持ちを文字にして読者に教えてくれるけど、実写じゃそうはいかない。だからこそ観客に「聡実くんが今何を考えているのか」をある程度理解してもらう必要がある。彼の演じる聡実くんは、そこもクリアしつつ漫画よりも分かりやすい(といったら語弊がある?)人物になったと思った。極めつきはラストの「紅」熱唱だろう。あの声、よく出せたな。おばちゃん感動したでほんま……。
そしてそして、和田。君は最高だよ。どうしたんだ君は。漫画じゃただのモブオブモブの後輩だったじゃん。漫画の「岡先輩…卑怯ですよ」だけを吸収して育ったとしか思えんくらいこじらせ思春期中学二年生…君の存在が実写版合唱部、ひいては映画全体の雰囲気をとても良くしていたと思う。やはり大人数のチームにはああいう可愛げのあるズレ真っすぐ系は良いスパイスになるなあと。後聖人くんの演技とても良かった。真っすぐ反発して真っすぐ落ち込んでいる姿、とても良かった。そして和田くんをひらりひらりと扱う周りの人たち、とても良かった。

もう一つ私がこの映画感想で触れたかったこと。
それは脚本について。
セクシー田中さんを愛読していた私やファンにとっての最悪の事態からもうすぐ2週間が経とうとしている。これまで実写化に良い印象を抱いていなかった私は、くだんの件で更に「もう実写は見ずに漫画だけを見て生きていこう。リスペクトすべきは原作者なのだから。」という気持ちが固まりつつあった。それなのに「カラオケ行こ!」を見たのは、友人の猛烈プッシュに加えてその時まで原作未読だったというのも大きい。既に自ら原作を読んでいたなら絶対この映画を見る気にはならなかっただろう。

だからこの映画はいつもよりかなり厳しい目で、なんなら粗を探すくらいの勢いで観た。それなのに、全部全部覆された。粗を探すつもりが、逆にいつも気にしない”脚本”にフォーカスして新しい気付きがたくさんあった。同時に、今まで漠然と「面白いドラマを作る脚本家だよな~」と思っていたこの作品の脚本家・野木亜紀子さんの力をこれでもかと思い知ることができたと思う。もちろん監督や演者、制作チームあってのこの作品。「良い作品」とは、それぞれのプロが集結して、原作をリスペクトしつつ、チームで何倍も何十倍も面白い作品を作ることなんだろうなと。これが1を100にするってことなのかと知ることができた。
猛烈に自分の感じたことを文字に残しておきたいと思った。いつもババッと書くFilmarksじゃなく、PCでダダダダダと感じたままに打ち込みたい気持ちになった。

なぜ漫画では銀賞だったのに銅賞だったのか?なぜ和田くんは、先生はあのキャラなのか?なぜ下の名前はああいう流れで知ることになったのか?原作を違和感なく実写化に落とし込み更に面白く伝えるために全て意味があるんだと思った。あの原作からこの映像化に持っていくのは本当にすごいなと感動すら覚えた……。「カラオケ行こ!」チームの考えと自分の感想を照らし合わせたくてパンフレットを探したが当然のごとく売り切れだった。なんだよ畜生。

ひとつ、この映画を観に行く方にアドバイスがある。
「「「「 BL好きと行くべし 」」」」
私は夫と観に行った結果、キャッキャデュフフができなかったので(夫のBL理解度が低いだろうからと気を遣ってしまった)。
あれは良質なBLだと思ってる。いろんな観点(職業や年齢設定)から映画では公にそうと出せなくても、あれは良質なBL。だから腐女子同士で行く方が鑑賞後盛り上がると思う。

久しぶりに思いのたけを綴れて楽しかった。
また何かこみ上げたらアウトプットしていきたい。

おわり

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