(第6回)表現者クライテリオン岐阜同好会
表現者クライテリオン岐阜同好会(第6回)
【令和5年7月29日(土)多治見】
参加者:○田、○野、○木
◉「クライテリオン最新号(7月号)の感想」または「関心を持っている事柄など」
○木:クライテリオンメルマガで仁平千香子氏が紹介していたミヒャエル・エンデの「はてしない物語」を読んでいる。夏休みの課題図書のような感覚がある読書で面白い。本の冒頭に、「すばらしい話も終わりになり、数々の冒険をともにした人物たち、好きになったり尊敬したり、そのために心配をしたり祈ったりした人物たち、かれらとともにすごせない人生など空虚で無意味に思える人物たちと別れなくならなくなり、人前であれ陰ながらであれ、さめざめと苦い涙を流す-そんな経験の一つもない者には、おそらくバスチアンがこのときしでかしたことが理解できないだろう。」という箇所がある。正にコスパ優先の倍速で映画を見る人たちや要約のアプリで読書をする人たちには、この本の主人公バスチアンが理解できないと思う。
西部邁氏の著書「国民の道徳」に日本人の道徳観には、仏教や神道など影響もあるが儒教の考え方が大きくあると指摘があった。最近は敬遠されがちな思想であるように思うが、自分が儒教をいまいち理解できていない。論語を改めて学んでみたいと思っている。
○野:コスパについてのテーマであり、ミヒャエル・エンデの「モモ」を読みたくなった。我々は時間を節約しているつもりでいて、実は時間泥棒に時間を奪われている。
土井隆義氏の寄稿「時代精神としてのコスパ思考」の中に、マッチングアプリを利用して結婚相手を見つけている話題があった。自分の職場でも若い子の中に結婚の出会いがマッチングアプリだという話を耳にした。
その話題の延長として…結婚できない(しない)理由として仕事が忙しく異性との出会いがないという話も聞く。自分が若い頃は、会社に出入りしていた保険のおばちゃんが出会いの場を作ってくれていた。お節介なお見合いおばさんが絶滅した現代では、奥手の男女は相手探しの機会が難しくなっている。マッチングアプリなどで相手のある程度の情報を得ていれば、初対面でもとりあえずの話題を作る事ができて、出会いの敷居を低くできると思うが…
○田:伊藤貫氏の寄稿「トクヴィルの民主主義批判2」チャンネル桜でも同氏が動画でトクヴィルの紹介をしておりとても参考になった。
民主主義体制を長期間続けると、国民は熟考する能力を失い、無気力・無関心になり、自分のことにしか関心を持てない利己的な拝金主義者となり、人間としての真の自由を失った“飼い慣らされた家畜”のような存在になり、文明自体の質が劣化して、真剣な価値判断能力を喪失してしまう。
まさに今の日本社会だと言える。トクヴィルの時代から予言されていたと驚く。
トクヴィルの言う、人間にとって真の自由という状態がどのようなものなのか、よく呑み込めない自分がいる。啓蒙思想による個人主義が現代における正義であるという感覚から抜け出せないためだろうか。神という存在を肯定する古くからの信仰、日本でいえば間違った道を進めばお天道様からバチをもらう的な畏敬の念を社会の根底に据え、弱肉強食の野蛮な価値観から抜けることが真の自由であるという思想。やはりこれからの私自身、日本、世界が目指す方向であると今考えている。
野口剛夫氏の寄稿「自分らしく生きる」を読んでみて確かに、クラッシク音楽は第1から第4まで聞くことで本当の素晴らしさ楽しさが理解できる。耳障りの良い部分だけを切り取って聞かせる物ではない。その場のノリを楽しむポップミュージックと聞き方が違う音楽である。
その話題の延長として…自分もこの寄稿を読んだ後にクラッシク音楽をかけてみた。この音楽は小説などと同じ大きな物語を語っているのだという感覚を覚えた。
◉岐阜同好会の活動について
勉強会などの案として
・日本人の常識、道徳の根っこにある儒教(論語)を勉強してみたい。
・岐阜県出身のなるせゆうせい監督を呼んでみる。
・チャンネル桜に出演されるジェーソンモーガン氏は初来日した際岐阜に縁があったらしい。そういった方向で企画したら面白いのでは。
・自分の職業の紹介を兼ねてその分野の思想的な問題点などをプレゼン形式で発表する。
・思想的としての自分史を紹介する。
など。今後検討をして具体的な形にしていきたい。
◉歓談中の発言など(一部)
・会社の若い子が会話の中で、スターリンを知らないと言っていた。そしてそれを知って役に立つのかと言われた。確かに役には立たない… 自分が思想を学ぶのは(この社交の場に来ているのは)単純に役に立つから来ている訳ではなく、生き方、」生き様のためだと思っている。自分はクズになりたくないという思いがある。
周囲の人には話せない(話が通じない)部分を語りたい(自分を曝け出したい)欲求があるからこの社交に来ている。
・この同好会に参加する事は全く知らない人たちの中に混じる不安があった。雑誌やネットなどを通じて、危機意識を持つ人は確実に居ると思うが、こういった社交の場に関わる第一歩の敷居が高いのではないか。保守の集まりと言われると、街宣車右翼的な猛々しい言動の年寄が捲し立てている印象があり敬遠されがちなのでは。
・コストパフォーマンスは自分の仕事では、当たり前の感覚であるが、世の中全てがその考え方になるのはおかしい。教育などの分野はその影響を及ぼしてはいけないと思う。コスパ感覚が当たり前になってしまう事で、共同体を守るための共感の力が失われてしまう気がする。
・4月信州支部勉強での小幡先生の講演を聞き、生き方として逃げる方ではなく、戦う方にありたいと感じた。
・介護という職業は、死んで逝く人を最後まで看ている仕事であり、ある意味では神に近い所にいる職業だと最近感じる。福祉国家の一つの弊害として、本来は各家庭で感じられていた死や神、人間はどんなもの何かという本質的な問いに対する実体験を奪ってしまった、見えなくしてしまったことがあると思う。福祉という耳障りのよい理想のシステムに介護を囲い込んだ方が、社会全体から見たコストパフォーマンスが高いという資本主義的な誘惑もそこにあるとも感じる。
・大谷翔平氏のMLBでの活躍について朝から晩まで、騒ぎ立てるテレビに違和感を覚える。宗主国アメリカをやっつける日本人として彼を同一化して溜飲を下げている気がして気持ちが悪い。これも外的自己の捻じれた形だろう。
・今年も中日ドラゴンズが弱くて悲しい(-_-;)
・へヴニーズという音楽団体の動画を最近見る事がある。HEAVESEstyleのクライマックストークのコーナーは戦前戦中を含めて知らなかった日本人を紹介してくれる。今まで全否定(無関心)だった戦前戦中の歴史だったが、誇りある生き方をしていた日本人が居たことを知ると、自分も日本としての誇りを欠かしてはならないと思わされる。日本を全肯定する訳ではないが、狂ったニュースに接する中で自分の精神衛生上の薬だと思い参考にしている。
等など。
参加者持参の書籍
「モモ」「はてしない物語」 ミヒャエルエンデ
「一億三千万人のための論語教室」 高橋源一郎
「野蛮な大学論」 酒井敏
「保守って何?」 茂木誠
等