(第4回)表現者クライテリオン岐阜同好会
表現者クライテリオン岐阜同好会(第4回)
【令和5年1月21日(土)多治見】
参加者:○田、○野、○江、○木
◉「クライテリオン最新号(1月号)の感想」または「関心を持っている事柄など」
○木:堀茂樹氏寄稿の〈「ホモ・サピエンス」への反転のすすめ〉が印象に残っている。核家族化がかなり進んだ日本において、直系家族(封建制度)の影響が根強く残っていることの言及。及び直系家族が日本らしさを形作っているという指摘は興味深いものだった。
○野:同じく堀茂樹氏寄稿を上げる。好きな作家であるアゴタ・クリストフの翻訳者として、堀氏を知っていたが、こういった寄稿を書くことが意外だった。
○江:藤井編集長の巻末オピニオン〈「統一教会」問題を我々はどう考えるべきなのか〉が全てを語っていると感じる。与野党はテロには屈しないと言っておきながら、政治(社会)の流れは山上容疑者の望んだ方向へ進んでいるのではないか。この結果は、結局テロという暴力が意味を持ってしまっていること。政治家はそのことに自覚があるのだろか。
○田:同じく藤井編集長の巻末オピニオンを上げる。現在の政治が行っているやり取りは、宗教というものが何なのかを全く理解できていない。今の日本社会において政治活動に取り組もうとするのは、宗教に支えられている人たちしかいないのではないか。(目指したい社会、正義のあるひと。真面目な人)
SEALDsで活動していた学生の多くはミッション系の学生だったらしい。
◉岐阜同好会の活動について
信州支部との連携など
●学習会4月29日(土) 於)長野県須坂市
ちょうど3ヶ月後なので、信州支部学習会と岐阜同好会を兼ねて行うのも良いのではないか。
他の支部の方々との交流ができる良い機会になる。
予定を合わせて岐阜同好会として参加できればいい。
◉歓談中の発言など
・台湾有事に際してのアメリカのシンクタンクが出したシミュレーションについての中日新聞の記事。軍事力を持つのは平和をもたらすことには繋がらないので、外交力で防げと記者は言う。しかし伊藤貫氏が指摘するように、外交力とは実際の力を持っていて初めて効力を持つものであり、ドラえもんが登場しない設定で、のび太が持てる力ではない。左派新聞の言論は、国際関のリアルな力関係や歴史を理解していないのか、あえて無視しているように感じてしまう。
・斎藤幸平氏「人新世の「資本論」」を読んだ。共感できる部分は沢山あったが、富国という視点が抜けているように感じた。中国、北朝鮮などの軍事的脅威に対しての言及は全くなく、有事をどう捉えているのか疑問。実際には富国ができないと防げない有事があると思うのだが。
・岸田秀氏「ものぐさ精神分析」を読んだ。共同幻想の理論は大風呂敷だが示唆に富むもので、参考になる。内的自己と外的自己の指摘も物事を整理するには理解に役立つ。浜崎氏の著書でも触れられているが、近代日本は内的自己と外的自己のバランスが崩れており、明治維新以降現代まで続く宿痾などだと理解できる。特に現代人の承認欲求の肥大化は、個人の内的自己を蔑ろにしている表れではないか。スマホ&SNSというツールに触れることは、常に外的自己を求められることである。内的自己と対話する機会を著しく奪っているような気がしてならない。
・堀茂樹氏寄稿ではないが、子育てを通じて作られる共同体が必要ではないか。孤立した子育てを続けてきていたら、人類はとっくに滅んでいたのではないか。松居和氏「ママがいい!」を読むと父親が1日保育参加をすることで、ガラッと変わるとあった。自分の子供以外の同級生に対しての愛情も生まれて、共同で育つ事を意識できるようになるとあった。親ガチャという言葉が、広まっているが確実に格差の拡大が原因だと思う。子ガチャなどという言葉が出てきてしまえば終わりだ。親は最後まで子供の味方であるべきだ。
・ハリウッド映画「カンパニー・メン」 リーマンショック後のアメリカを舞台にした作品。株主資本主義によって翻弄される主人公たちの人間模様は示唆に富むものだった。
・NHK朝の連続ドラマ「舞い上がれ」が最近気になる。東大阪で父親の残したネジ製造会社を立て直そうと自分や父の夢を重ねながら主人公が奮闘している。今どきは批判されがちな、日本の擬似家族的な中小企業の気持ちが伝わってきて、感じるものがある。未だにテレビ作品として出てくるので、なんだかんだ言っても日本人はああいった物語が好むのだと思う。
・私は書き手という立場でもあるため、読んでいただいた方の率直な感想を聞けるのは非常にありがたい。頻度はこのまま3か月に一度の開催がちょうどよい。コロナを経て我々が気付かされたのは、人と接することが結局一番勉強になるということではないか。「ひとり、ともしびのもとにふみを広げて……」(『徒然草』)ももちろん大切だが、他者の考えに耳を傾けることよってさらなる思索が始まっていくことが実に愉快に思える。「クライテリオン」にせよ岐阜同好会にせよ、「結論」ではなく「きっかけ」であるところに魅力を覚える。
◉参加者当日持参書籍
『昨日』 アゴタ・クリストフ
『どちらでもいい』 アゴタ・クリストフ
アゴタ・クリストフの代表作は『悪童日記』、『ふたりの証拠』、『第三の嘘』の3部作。
「故郷を喪失した文学」といえばアゴタ・クリストフを思い出したので持参した。
同好会後、仁平千香子さんの『故郷を忘れた日本人へ』を購入した。
『悪について』 エーリッヒ・フロム
『人新世の「資本論」』 斎藤 幸平
『人間の条件』 ハンナ・アーレント
『金閣寺』 三島 由紀夫
『現代思想』 2022年12月号 特集=就職氷河期世代 ロスジェネの現在
『ママがいい!母子分離に拍車をかける保育政策のゆくえ』 松居和
『ものぐさ精神分析』 岸田秀
『ぼんやりとした不安の近代日本――大東亜戦争の本当の理由――』 浜崎洋介
以上