生きている
前にも書きましたが、入所していた中間施設によく愚痴を言うギャンブル依存性のEさんという先輩がいました。僕は気を許し、よく愚痴を聞いてもらいました。ミーティングが始まる前に二人でよく話しました。
「イサムさんは依存性が治っちゃってるから、もう長野に帰っていいよ。俺も施設を出て、働きたいなぁ。」
「また、ステップ4の祈りを祈っちゃったよ。電車に乗る時、押してくる人がいるんだもん。この人は病んでいるんだ。どうやったらこの人の助けになれるだろか。神さま、怒りから救い出してください。あなたの意志が行われますように。一日に何度も祈っちゃうよ。」
こんな感じでしたが、ステップはしっかりと学ばれていて「ビックブックの266ページ付録IIの霊的体験は大切だよね。俺はこの文が好きだな」と言っていました。ページまで覚えているのに驚きました。
ある日、ホームレスになって橋の下に寝泊まりしていた時のことを話してくれました。
寒い日の夜、寝ていると「ミャー」という鳴き声が聞こえてきたそうです。鳴き声の方に行ってみるとダンボール箱に子猫が入っていました。お腹が空いているのだろうと思いましたが、自分の食ベ物を買うことさえできない状況です。仕方なく、「ミャー、ミャー」という声を、聞きながら寝たそうです。
次の朝、鳴き声はしなくなりました。その時、Eさんは思ったそうです。「なんで、どん底の俺の方が生きていて、子猫が死んだんだろう…。」
それから月日が流れ、Eさんは中間施設に来てビックブックと出会い、ステップを続け、おそらく「霊的目覚め」があったのでしょう。詳しく話してくれはしませんでしたが、ビックブックの266ページが好きで、働いて生きていきたいと言っていたのですから。
そのEさんとは何年かLINEでやりとりしていたのですが、久しぶりにメールを送っても既読になりません。東京にいると思うのですが…。
かわいい子猫を見るとEさんの話を思い出します。
生きていてください。
いつか会えますように。
そしてまた愚痴を聞いてください。