第十二話 続き
その次の日。いちごは、郵便受けの中を確認しました。
「あ、何か入ってる!」
中には、手紙と、小さな箱が入っています。
「何これ・・・」
『いちごへ』
「えっ、わ、私あて??」
裏には、『パフェより』と書いてあります。
「・・・・はぁ・・・何なの・・・」
家に入ると、いちごはその手紙を捨てようとしました。
「パフェからの手紙なんて!!・・・・・・・」
でも、どんなことが書いてあるのか、気になります。
『もう絶交』とでも書いてあるのか・・・それとも・・・
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いちごは部屋に手紙と箱を持ってくると、手紙を読み始めました。
『いちごへ―――』
『―――あの時は、約束を守れなくて、ごめんなさい。時間のことも、スピカと遊んでたのも・・・私が部屋にいなくて、心配かけたよね。ごめん。
私は、いちごと友達じゃなくなるなんて、嫌だ。
ごめん、本当にごめんなさい。』
「パフェ・・・」
手紙を読み終わると、どうしようもなく、泣きたいような気持になりました。
「あっ、そういえば、箱の中身は何だろう?」
いちごは、手紙についていた、小さな箱を開けました。
そこにあったのは、小さくて、きれいなアップルパイです。
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「あ、アップルパイ・・・?」
アップルパイについている札には、『お詫びの気持ちです』と、書いてありました。
その頃。お菓子の国では、クッキーが懐中時計の針を見ています。
「・・・いちご様との契約が解除されるまで、あ、あと3分・・・」
「いただきます」
いちごは、口にアップルパイをほおばりました。
―――その、何という、切なくて優しい甘さなのでしょう。
『ぽたっ、ぽたぽたたっ』
サクッ、サクッ、サクッ・・・口にアップルパイを入れるたび、大粒の涙が零れ落ちていきます。
あっという間にアップルパイを食べ終わり、涙をぬぐって言いました。
「私だって、悪かったんだ・・・パフェに・・・謝りに行こう・・・!!」
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「・・・あと1分・・・」
いちごは急いで階段を駆け下りました。一階では、お母さんがゴミ袋をまとめていました。
「ごみの日は明日だけど・・・明日は朝が早いし、もう出しておこう!・・・」
その時、金色の星が見えました。
「っ!!ま、待って!!お母さんっっ!!!」
「!?何よ、びっくりしたあ・・・・・・ !?」
(早く、これも付けなおさないと・・・これを捨てたら、もう・・・パティシエじゃなくなってしまうっ!!い、いまなら・・・まだ間に合うっ!)
いちごは急いでゴミ袋の口を開け、バッチを探しました。
「ちょっ!?何やってるの!?ごみをあさるなんて、やめなさいっ!!」
「あった・・・っ!!」
カチ、カチ、カチ、カチ―――
「5、4、3、2・・・・
・・・!!!!」
パチッッ!!
いちごと、スター・パティシエールとの契約が解除される一秒前、いちごがバッチを付けなおしたのです!!
(早く行きたい、行って謝りたい・・・!!『ごめんね、また友達になって』って・・・!!)
「お母さんっ、行ってきます!!」
「どこ行くの!?待ちなさい!!―――」
『バタン、』
いちごは外に出ると、まるで風のように、自転車をこぎ始めました。
「ツリーハウスのある山まで、あともう少し!!」
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『ピーンポーン』
「だれかしら・・・」
ガチャ、
「ぱ、パフェ・・・・」
「っ、いちご・・・」
「あの、ごめんね・・・私もすぐ、カッとなっちゃて・・・パフェ、また友達になってくれる?」
「・・・・!!」
「いちご・・・ありがとうっ・・・!!」
「うん・・・ごめんね・・・」
「い、良いのっ・・・―――って、いちご、何もじもじしてるの?」
パフェが、ほんの少し笑いながら言いました。
「あ、あの・・・その・・・パフェのアップルパイ、お、美味しかった・・・作り方、教えてくれる?」
「な、なあんだ!!うん、いいとも!キッチンにおいで!!」
ケンカしたって、何があったって・・・二人の、三人の仲は、壊されることは・・・絶対にありません。
二人は、そう信じました。
〈終わり〉 最終話(第十三話)に続く!!