天穹10白雪
白雪(しらゆき)は思い出してた。
楽しかった仲間達との冒険。しかし、懐かしがってる余裕を残念ながら哀しい事に持ち合わしていない。
パーティーにとって丁度良い難易度の敵と得られる利益。中級者向けのダンジョンから程近い街へと拠点を構えてから不穏な雰囲気が漂い、次第に翳り始める。
メンバー其れ其れへとパートナーが出来てそろそろ引退を考え始めた頃、スタンピードが起きた。
ダンジョンから溢れ出したモンスターの大群が街を呑み込んで行く。
多勢に無勢にて太刀打ち出来ない訳では無い。ダンジョン内部や城塞都市ならばまだ何とか為ったと思われる。
害獣除けの丸太が組まれてる程度の柵では立ち塞がるパーティーを避けた雪崩れ込む勢いを留められない。
流れが途絶えた平原。掠り傷を負ったメンバーが疲れを押して立ち上がる。外の冒険者が倒れたまま動けない。振り返ると広がる残骸の数々。
伝手が無くて避難出来ない住民が家屋へと閉じ籠もってるために絶望的。
規定へと反して逃げた冒険者。ギルドが潰れてるために職員が生き残れてると思えず、ペナルティを期待出来ない状況。
戦えるような体力なんて残っていない。それでも、愛する相手が心配にて其れ其れが気力だけで駆け出した。
絶望を胸に抱え、復讐心を糧に住めなくなった街を捨て、ダンジョンの近くへと新たに家を建てて住む。
左のバックラーにて受けた衝撃が腕を伝って脳まで届いたために我に返った白雪が反射的に弾く。
鍛錬家(クレリック)を一時的に格闘家(クレリカ)へと落として右手を覆うガントレットと合わせて朱火(シュカ)と黄輝(キキ)の稽古を行ってる。
Hカップが胸当てへと納まらない防具屋の兎女将。タンクを行える格闘家(クレリカ)にて反撃がセットと為るバトル・スタイル。
戸惑う朱火と異なり、普段通りに多彩な動きを魅せる黄輝。
振るうシャムシールの性能へと助けられてる朱火の覚束無い攻撃。邪念が重くのし掛かり、動きが悪い様子。
サポートする黄輝の助けが無ければ食らってた反撃も多く観られる。
自らのEカップよりも、大きいサイズがお気に召さないために狙いが単純。
諦めてるのか、気に為らないAである黄輝とは大違い。
剣士(リッパー)から剣聖(スレイヤー)へと変わる朱火。
身軽な探索者(シーカー)から素早い探究者(クエスター)へと為る黄輝。
無駄無く、稽古を終えられた。
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