天鳴の刻03闇の蠢き天神鳴江
「くっ、誰!?誰なの!?」
あの人から貧相と罵られた身体へと無造作に触れて来る未知の存在。父親似で母親へと似てる者等、1人として居ない。女の子さえ似ていなくて落胆が憎悪へと変わったところで無理も無い。少しでも女性らしくなろうと髪の毛を伸ばしても、兄達が女装した姿と殆ど変わらない。気にしない兄と諦めた父。あの人以上に気にしてる。その所為で女子からは異様に好かれる。守られてる兄さんへと近寄れない代わりでは喜べない。そして眠りへと付いた兄と同じように身体の自由を失う。
「お兄ちゃんの顔を忘れたの?」
「違う!兄さんじゃない!」
動けないから逃れられない。脚の方からゆっくりと這い上がって来た存在が覆い被さり、息が掛かる位置まで顔を近寄せる。暗がりでもわかる似通ってる顔立ち。兄さんが決して見せない淫らな眼差し。鏡でも観てるような有り得ない存在。兄さんとの子供と言われた方が受け入れられる不気味な相手。あの女医が何かを行った事が直感的にわかる。外に選択肢が無くても、やはり乗るべきでは無かった。自分を犠牲にする覚悟を決めた兄さんを絶対に止めるべきだったと悔いても、今更、遅過ぎた。汚された自分が自我を保てるのかと暢気に思いつつ、貫かれた痛みにて意識を手放した。
天神鳴江、燃え尽きたような灰色の長髪。昏睡状態へと陥った鳴世に続いて車椅子生活と為る。自らの容姿へと絶望して心を閉ざしてる。動けない以前に抵抗を諦めてる。麻痺してる事が幸いと云えるのか、わからなくても、何も感じない。目覚めた時に感覚を全て失ってた。どれ程に汚されても、何ら反応を示さない人形と化してた。見付けられた時点にて手の施しようが無かった。事態の発覚した切っ掛け。
壁へと鎖にて手足を繋がれてる少女が鳴神愛理と名乗る。明らかにウィッグとわかるツイン・テイルのブロンドを付けてる。顔立ちが妹と似ていない。今までと異なるパターンへと首を傾げる。キャスティングのように必ず誰かと似てるのに…。
「マダムの方針へと逆らった結果がこの様。でも、貴方ならば受け入れても、良いわ」
館内にて化け物が徘徊してる事なんて知らず、牢屋から動けない少女へと奉仕を求める。侍女達同様に飢えてる事が変わらない様子。
グレイ・クランケA
応援がモチヴェイションへと繋がります。