SF短編「Epilogue-星に願いを-」の話
この記事はヘッズ一次創作SFアンソロジーに漫画を寄稿した漫画の蛇足説明です。
舞台は科学が高度に発達したメガロシティ。おじさんは仕事のできる社畜(既婚者)です。ロボは3万言語対応の通訳ロボ(レンタル)です。おじさんは副所長なので実は偉い役職ですが会社が小さくて火の車なので当然のようにもりもり実務もさせられており、全然家に帰れません。ロボは本来通訳ロボなのに会社が小さくて火の車なので当然のように他の仕事も兼任させられており、事務処理とか雑務とか色々インストールされてメモリパツパツの社畜です。
ロボとおじさんは小さなポータル屋で働いています。ポータル屋とはお客さんの行きたい場所にポータルを繋いで安全に送り届ける会社です。(要するにどこでもドア屋)大手ポータル屋では安全性の問題でポータルを繋いでもらえないような場所など、ニッチな需要で食いつないでいます。薄暗い商売かつ消費電力が大きすぎるので度々行政指導を受けており、界隈ではちょっとした問題児として有名な会社です。所長は先代から役職を継いだばかりでまだ若く、カリスマはあるのですが技術面の知識に乏しいため、実質副所長(おじさん)が会社を支えているような感じです。そんなブラック企業に派遣されてしまったロボは、本来は通訳業務のみの契約であった筈なのに社員達に色々改造され、すっかり事務や雑務もこなすなくてはならない存在になってしまいました。すぐサボるおじさんを見つけるのが社員の中で一番上手いのもロボです。
ある日社員のオシアル君(新卒2年目)とロボが夜食の買い出しに出かけた所、不思議な二人組と出会います。事情を聞くとうっかり自然発生したポータルに吸い込まれ、迷子になってしまった様子。自分の国に帰りたがっている二人を金づると見なしたオシアル君とロボは、お客様を会社に連れて帰りました。早速お客様の国へポータルを繋ごうとしますが、今まで繋いだことのない領域だった為、論理式の構築に時間がかかることが発覚。更にお客様だと思っていた二人が無一文だと判明。更に連日巷を騒がしていた過激派の環境団体が都市ジャックを実行。様々な問題が重なり、ポータル屋は騒動に巻き込まれていきます。おじさんはいつ家に帰れるのか?ロボは突破口を開くことができるのか?!無一文の客から料金を搾り取ることができるのか?!都市ジャックは解決するのか?!
…という話を描きたかったのですが、規定の4P以内にはもちろん収まらず悩んだ末に全部すっ飛ばしてエピローグだけをぶっこむ暴挙に出ました。諸々事件があった最後の余韻の4Pです。タイトルがエピローグなのは本当にエピローグだからです。会話しかないのはエピローグだからです。反則では?私もそう思う。
テーマが【SF】サブテーマが【メガロポリス】だったので、管理された格差社会!闇の大都市!ものすごいハードボイルドのディストピアを描いてやるぜ!!と最初は息巻いていたのですが、実際それ私が描けるかというとまあ……全く描けませんでしたね……。人間、必ずしも好きなことが得意とは限らないのだ…。とは言え諦める訳にもいかぬ。私に描けるSFってなんだろう?ということで、「大都市の星空」「ふにゃふにゃのロボ」「社畜おじさん」「ポータル屋」など自分が好きな要素でSFっぽいものをチョイスしていった結果、どっちかというとSUKOSHI FUSHIGIの方のSFになりました。ハードボイルドどころか半熟ゆるゆるSFだ。ゆるーくお楽しみ頂けたなら幸いです。いつか当初想定していた本編の方も描けるといいな。
最後になりましたが、疫病流行の最中、当初頒布予定だったイベントの中止などのアクシデントに見舞われながらもアンソロジー発行に尽力してくださった主催のtso様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。大変楽しく参加させて頂きました。ありがとうございました!