「図書・図書館史」合格レポート
※合格レポートはあくまでも参考です。
丸写しや類似レポートは不正とみなされるため、絶対にやめてください。
田中は2021年10月入学で全課程修了済です。
【設題】
字数指定:2,000字
日本または西洋のどちらかを選び、それぞれの時代(古代、中世、近世、近代以降)の図書館発展の特徴をコンパクトに要約し、かつ私見(400字程度のまとめ)を述べよ。
【レポート作成上の留意事項】
・テキストをよく読み、各時代の概要(特徴)をまとめること
・各時代の図書館の役割を考察すること
・情報伝達媒体や図書館利用者の変化にも注目すること
合格レポート
今日、図書は紙で製本され、図書館は誰もが利用できる施設となっていることは周知の事実である。しかし、今日の形態に至るまで、文字の記録媒体や図書館のあり方は長い年月をかけて変遷してきた。本レポートでは、西洋での図書・図書館の歴史に焦点を当て、古代、中世、近世、近代以降と時代を区切り説明し、最後に私見を述べる。
世界最古の図書館はアッシリアの首都ニネヴェに設立され、記録媒体は粘土板であった。アッシリア崩壊とともに図書館は消失したが、そののち、アレクサンドリアではパピルス紙が、ペルガモンではパーチメント(羊皮紙)が記録媒体として利用されるようになる。その保存性のよさから、紙が出現するまではパーチメントが一般的に利用されるようになった。この時代の図書館は権力者によって形成され、王の権威が誇示されていた。蔵書は宗教、政治、文学、神話などあらゆる分野にわたっており、文献が体系的に収集されていた。アッシリア、アレクサンドリア、ペルガモンでは学者など限られた人々のみがその恩恵に与っていたが、ローマの公共図書館は身分を問わず一般公開されていた点で異彩を放っている。しかし、古代の図書館は繰り返される戦火によって姿を消していくこととなる。
中世初期のヨーロッパでは、図書館は修道院に付随していた。この修道院図書館では、羊皮紙を使い、写字生により1冊1冊が手によってつくられていた。当時の修道院は信仰の場であり、図書生産や文化保存、学門の場でもあった。近世への文化の伝承者として重要な役割を果たしていたのである。そこで学ぶ多くは修道士であったが、次第に一般世人にも開かれるようになった。そうして大学発生の下地が醸成されたのである。中世後期になると、都市や交通の発達を背景に、学門を志す者が集まり共同体を形成した。これが大学となる。初期の大学に図書館らしきものは見られなかったが、のちに各方面から多数の寄贈が行われ、図書館として独立の建物を持つようになった。この頃から図書館公開への動きが見られるが、利用者は依然として修道僧や学者など一部の知識階級の人々に限られていた。
近世に入ると中国から製紙法が伝わり、同時に活版印刷技術が発明されたことで紙の使用が普及した。その結果、図書は大量に安価に生産できるようになり、図書は写本から刊本へと移行していった。この印刷技術を活用し、ルターは数々の論文や説教、パンフレットを作成し配布した。そうして宗教改革の動きが急速に広まっていったのである。伝統的な権威を打ち破るその運動によって多くの図書館が破壊されていったが、代わりに新教の教会図書館が建設された。それは布教をねらいとした大衆向けの図書館であり、人々の間で広く利用された。この時代の図書は宗教改革の成立に大きな役割を果たし、図書館は新教普及の役割も担うこととなった。
近代以降、図書は広く一般に公開すべきであるという認識が人々の間に広まった。ヨーロッパでは、修道院図書館が大学や公共図書館へと変化していった。会員制図書館が登場し、公費によって運営を行うために公共図書館法が制定された。アメリカでも会員制図書館が各地に建てられ、社会図書館と呼ばれる専門性を持つ図書館も生まれた。1876年にはアメリカ図書館協会が発足した。同時に図書館サービスも発展した。この頃、図書館員の業務は資料の収集と組織化であったが、図書館員が直接利用者に手を差し伸べるレファレンスサービスが普及していった。それに伴い開館時間も拡大し、図書館未設置への地域サービスも広がった。
そして、現代は情報図書館の時代と言われる。情報技術が飛躍的に発展したことで地理的隔たりは取り払われ、図書館同士のネットワークはより強固になった。紙と電子記録媒体のハイブリット化が進み、図書館の活用方法、図書の保存法にも変化が表れた。今後も情報化とともにグローバル化が進んでいくことだろう。
時代を経るごとに図書や図書館のあり方は変遷してきた。
長い歴史の中で、記録媒体、つまりメディアは、粘土板、パピルス紙、パーチメント、紙、そして電子記録媒体へと移り変わり、図書館は限定的な人々に公開された図書の保管場所・出版場所から、豊かな資料と利用者に応じて必要な情報を提供するサービス提供の機関へと変化した。図書館は誰にでも開かれた「知のインフラ」となったのである。
一方で変わらないものもある。知を尊び後世に伝えていこうとするその人々の姿勢だ。幾度と戦火に見舞われ破壊されようとも、そういった人々の手によって図書は保存され、図書館は再建されてきた。そして現在に至るまで、図書分類の体系化や法の整備、図書館協会の設立など、数々の偉業を成し遂げてきた。
現代を生きる私たちは、先人が残した記録やその辿ってきた軌跡をよく学ぶ必要がある。そして、常に今の社会に合った図書館のあり方を考えていかなければならない。
(2,000字)
参考図書
・『中世イスラムの図書館と西洋~古代の知を回帰させ、文字と書物の帝国を築き西洋を覚醒させた人々~』原田安啓著
イスラムの図書館中心に語られている。本書の目的は、西洋の歴史観によって消された中世イスラムの図書館の活躍を広めることらしい。近畿大学のテキストにはない視点で中世の図書館を見ている。
・『図書・図書館史』綿抜豊昭
平成24年度から開始される司書育成カリキュラムに沿って図書・図書館の歴史の概略について述べている。各章の頭に要点がまとめられている。
・『図書及び図書館史~JLA図書館情報学 テキストシリーズⅡ12~』小黒浩司
図表が多い。メディアの変遷について時代の流れとともに詳細に書かれている。世界史部分は端的に書かれていて詳細は省かれている。その分日本に関する部分が詳細に書かれている。全体的にふりがなが多くて読みやすい。
・『図書・図書館史 ~JLA図書館情報学 テキストシリーズⅢ11~』 小黒浩司
図書及び図書館史~テキストシリーズⅡ12~と内容にそれほど違いはない。図表が多い、メディアについて詳細に書かれている、世界史部分はおおまかな流れのみ記載、日本に関する部分を詳細に書いている。
内容は公共図書館が中心。
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