態度と本心は必ずしも比例しない。
学生時代、私のことを嫌っていると思っていた男子がいた。
実際、他の女子とは比較にならないほど手厳しい反応をしていたし、周りのクラスメイトすら気を遣う始末……。
わかりやすいツンケンした態度から「ツンケンくん」と呼ぶことにしよう。
だけど、私自身。
ツンケンくんに嫌われるエピソードは思い出せない。
尤も生理的に嫌いなんだと言われたら、身も蓋もない話なのだが……。
しかし、ツンケンくんと私の間で困ることと言えば、微妙なブリザードが流れることくらい。
さりとて害がないと言えば、害がない。
ツンケンくんがブリザードを発するなら、私は私でにこやかに挨拶するのみ、だ。
とは言え、居心地が悪い空気を生み出す一端を担っている事実に目を向ければ、心苦しいことでもある。
さりとて打つ手もなく、ツンケンくんの出方を伺う日々。
と言いつつ、私も私の道をいく。
そんな日々の中、阿吽の呼吸で(というのも変な話だが)距離を置いている間柄のクラスメイトさえ気遣ってくれた辺りで、ツンケンくんの仲が本気でヤバイことに気付く。
「(さて、どうしよう)」
まあ、ぶっちゃけどうしようもない。
相変わらず、ツンケンくんはブリザード。
私は私でにこやかに。
もはや一体、何の我慢比べなのだろう。
そんなことを思っていた矢先。衝撃の事実が判明する。
何と!
ツンケンくんは私のこと、嫌いではなかったらしい。
かと言って、好きというわけでもないらしいけど(苦笑)。
だけど、その事実が何だか無性におかしかった。
見るからに私を嫌っているように見える態度を取ってるツンケンくんは、実は私のこと嫌いではなくて。
嫌っていないはずのツンケンくんとの冷ややかな仲を気遣う相手の方が、実は私のことを嫌っている。
言葉にしなくては伝わらない。
昔から言われている言葉の一つであり、私自身が肌で感じた言葉でもある。
さて、あれから。
卒業して何年も経った。
ツンケンくんと卒業後、会うこともない。
勿論、メールやSNSで関わることもない。
だけど、これからの人生。
私のみならず、周囲みんなを欺いたツンケンくんの手腕を思い出す度、私は立ち止まって考えることをするだろう。
……目の前の相手の本心は、どこにあるのだろうか?、と。