「春の風」と「秋の風」
未来に残したい風景と聞いて、真っ先に保存できないものを連想した。
例えば、目に見える景色は写真や動画で残すことが出来る。
香りや匂いも、香水のように保存が出来ないこともない。
手触りもまた然り。では、何が一番保存が難しいだろう。
そんな風に考えた瞬間、浮かんだのが「春の風」と「秋の風」だった。
寒すぎる冬と、暑すぎる夏。
そんな季節の変わり目にふっと生じる心地よい風。
過ごしやすくて、気持ちが良い最高の風と、気温と、ひだまりを感じる瞬間。
そんな「春の風」と「秋の風」を感じる瞬間が、年々減って来たように思う。
温暖化、異常気象……。
様々な外的要因により、春と秋が有耶無耶に過ぎる年も多い。
四季が巡る日本の土地で、四季の良さが分からないなんて、寂しすぎる。
私にとって「春の風」と「秋の風」をしっかり味わう暮らしこそ、未来に残したい風景だ。