招く手(こわい話) 1話
こわい話
記念すべき一作目!不思議な世界へようこそ
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「はぁはぁ」
真黒な地面を踏みしめながら
ひたすら前を進んでいる、自分がどこへ向かっているかも、もう分かっていない
あの時、招く白い手に従わなければよかった
私はとても疲れていた。
過去も未来も今でさえ振り返られないほど、日々の忙しさに埋もれていた。
そんな時、仕事で大きなミスをした。
大切な取り引き先に謝りに行かなければならない。
取り引き先へ向かう電車に揺られながら
自分は何をしているのだろう。どうしたらいいのだろう。答えなんて見つけようとも思っていない問いばかり考えていた。
取り引き先は、小さな工場
周りには田んぼしかない
のどかな場所だ
謝りに行くのに、ホッとしている自分もいた
取り引き先からは散々な言われようだった。
腹も立たない。仕方がない。私が悪いから。
全身の力が抜けている
頼りない足取りで
ドアに向かい
開ける
土の香りが鼻につく
外はもう真っ暗だった。
くらい田んぼ道。虫が鳴いている。
月の光だけが頼りだ。
ザッザッ
「あれ、こんな所に山があったっけ。」
行きには気づかなかった。小さな山だ。
ピューと風が吹く。
山がざわめく
ボワっ
と何かがいることに気づいた
「しろい、白い手だ」
女か男か
分からない
白い手
山の入り口で
手招いている
ゆっくりと
月明かりに照らされて
ゆっくりと
それを見た時
妙に懐かしくて
もう楽になれるんだと思った。
その手にただ従えば良いのだと。
向かう場所は決まっているのだと。
身体が自然と動く
山の方へ
ザッザッ
山へ一歩ずつ近づく
白い手に一歩ずつ近づく
つづく
読んで下さってありがとうございます!
話はまだまだ続きます!
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