ALOHA ROCK リリース記念
DITSURF099の新曲「ALOHA ROCK」のサブスクリリースを7月1日配信開始予定を控えた5月31日、DITSURF099リーダーのDAIPOPPIN(Gt. / Shout / 以後、大くん)に話を伺った。大くんの自宅にお邪魔させてもらい、マネージャーのrinyanco(以後、りなちゃん)が焼いてくれるたこ焼きを頬張りながら、ゆるーく宅飲みスタイルでインタビュー。大くんはミュージシャンでもあると同時に画家でもある。話は新曲だけでなく創作行為そのものにもおよんだ。
(聞き手: 橋口博幸)
尖っていこうぜ!
けっこうこの曲、古いんです。できたのは2年前くらいだったかな。ライブでもよくやる曲で。元々は「尖れ」っていう曲名でした。
僕が10代を過ごした時期は、ガラケーはあったけど、スマホはなくて、コミュニケーションは対面が基本。今より少しアナログ感が残っていた時代。ネットで調べ物したって答えなんかすぐすぐは出てこないし、情報は本だったり自分の好きな場所で遊びながら出会った人との会話から得るのが普通だった。なにかをつかみとるための活気に溢れていたというか、エネルギーが溢れているギラギラした人が多かった気がする。そこからだいぶ世の中が変わってきて、だんだんデジタルのコミュニケーションに移っていって……。今は昔より「便利だな」の反面、自分で自分を狭めてる「生きづらさ」がかなり強くなってきている気がするんですよね。世の中の矛盾もよく見えて、心の迷子になっていると感じていました。なんというか、みんなが一つの区切られた枠に閉じ込めらてる的な……。
だけど最近、飲食の仕事で出前しながら夜の街を行き来していたんですけど、若い人たちがむっちゃギラギラしてるなぁと思える光景をよく見るようになってきたんですよね。コロナからのフラストレーションもあったり、環境もあったりするかもしれないけど、自分を少しでも何かにワクワクさせる「前に尖っていく」そういうエネルギーってすごく良いことだと思ってます。そんなこと思っているうちに「尖れ!」ってイメージがどんどん自分の中に湧いてきたんですよね。
2022年にサブスクで出した「ROLL!! ROLL!! ROLL!!」(配信中)は、サーフロックを軸に、自分たちの好きな、今出したい音、メンバーみんなが表現できることをくっつけて、自分たちでレコーディングに挑戦してできたアルバム。配信からしばらくして「そもそもサーフロックってなんじゃい?」って(メンバー間で)話になったの。サーフロックやろうぜ!ってはじめたバンドだったけど「(僕らの音楽って)サーフロックからずれてない?」ってなって。そのときに僕がスタジオで「ALOHA ROCK」の原型のイントロリフをパーって弾いたら、聞いていたメンバーみんなが「お、これいいじゃん」「これでいこうよ」ってなって。その時は今「ALOHA」って言っているところも「Lets’s go!」だったんです。ライブ始まるときも「尖れ!」「尖っていこうぜ!」って言ってから、バーンって音が鳴って始まる感じで。「ALOHA」に変わったのが去年の3月に開催された指宿(いぶすき)のフェス「The Spring Party!」に出演したとき。
〝平和な〟尖れ!
演奏前に、最初になんて言ってライブ始めようって考えていたんですよ。そしたら指宿ってフラダンスのイメージもあったから「ALOHA」って言葉がパッと浮かんできて。イントロ弾いて「尖れ!」って叫ぶところを思いつきで「ALOHA!」って初めて叫んだら、自分の中の感覚にハマったんですよね。それからは「ALOHA」のイメージになって、曲名も「ALOHA ROCK」にしたっていう流れです。
でも今でも「尖れ!」のメッセージは持ってる。「ALOHA」っていう言葉、この言葉自体、深い意味なんですよね。「こんにちは」「おはよう」「ありがとう」「気楽にいこう」「またね」とか「愛」いろんな意味があるらしいんだけど、そこを踏まえても僕の中に「尖れ」の意味も入っているんですよね。「〝平和な〟尖れ!」というか。
僕にとっての「尖れ」って「前に行くぞ!」「前に行くぞ!この野郎!」みたいな意味。「血走って行くぞ!」みたいな。今の世の中って、なにかしようとしたときとか、足の引っ張りあいだったりで、特にSNSではちょっとしたことで叩かれたりするじゃないですか。これは(道徳的に)ダメだな、って感じるときもあるけど、叩いたら叩きっぱなしで、そこに愛を感じることは少ない。出来事の内容によるけど叩かれた相手が這い上がって前を向ける居場所も失うことに繋がるんですよね。(叩かれると)立場上弱くなっちゃうし、みんな間違いなんていっぱいあるのに……。どこか、(SNS上に溢れている)「聖人であらねばならない」的な、そういうのに対して、「尖れ!」っていうイメージもある。でも一番怖がってるのは僕なんですよね。SNSだって怖いし、世間にどう見られるかっていうのも正直怖い。みんなに「尖れ!」ってメッセージで「怖がらなくていいんだよ」「自分の『好き』のままで突っ走って、思うがままで、それでいいんじゃん」って投げかけるけど、ほんとうは、自分自身に一番伝えたいことだなと思います。
僕だって今の生活面だったりで、「このままで良いのかな」「ほんとうにこれで良かったのかな」とか考えることはいっぱいあるし、「もうちょっといけるんじゃね、俺」とかもよく思う。自分の中に常に葛藤して答え合わせをしてる2人がいる感じ。
今回の目玉はタヒチアンビート
ファーストアルバム(「ROLL!! ROLL!! ROLL!!」2022年)で僕の中ではけっこういろいろやりきった感はあったんですよ。みんなで、相当時間もかけたし。でも今回の「ALOHA ROCK」もさらに自分が好きなものを色々足しているんです。サーフロック、ロックンロール、ガレージパンク……とか。
今回の目玉はタヒチアンダンスのビート。元はというと、あるフラダンスのフェスがあって、マネージャーりなちゃんと遊びにいったんです。そこで初めて、タヒチアンダンスを生で見て、「まじでかっけぇーーー!!!」とワクワクしました。あの腰使いとビートに衝撃を受けました、ほんとうに。
スタジオにそのときの感動を持ち帰って、「あのタヒチアンダンスの感じを(曲に)入れたい!」って僕の無茶なパッションを、みんなが汲み取ってくれて、セッションしながら「ALOHA ROCK」をまとめていきました。当時、ドラムのトゥールは育児休暇中で、僕の好きな先輩ドラマーがサポートしてくれていました。そして、ドラムのトゥールが帰ってきたら、彼はジャンベも叩くから、「ALOHA ROCK」が乱れ打ち爆発の踊れる感じに成長しました!今後は、タヒチアンダンスを踊ってる方々といっぱい繋がっていきたいし、タヒチアンのことやビートもいっぱい学びたいと思ってます。
僕の中ではサーフロックっていうのも民族音楽なんですよね。サーフロックは最初にディック・デイルっていう人がいて、「Misirlou(ミザルー)」があってそこから始まってる。この曲も民謡なんですよ。たしか「エジプト」って意味があってギリシャあたりの民謡。だから全部繋がってる。サーフロックもだし、もちろんタヒチアンも。
あと、日本の歌謡曲の感覚も今回入ってるんですよ。GS(Group Sounds)。GSって外国のバンドサウンドに影響受けて日本人が生み出したものと捉えてるんだけど、その感じを曲の中に取り入れてみました。僕自身、呑みながらや、お風呂のときに歌謡曲を聞くのが好きってとこもあるけれど、僕の父母の影響は大きいよね。
音源聞いたらわかるけど、「ALOHA ROCK」は「バン・バン・バン」っていう歌メロが入ってます。僕らはインストを中心にしてるけど、曲によっては1部分に、歌メロを入れたいなって思っていて。歌詞の「バン・バン・バン」ってところは、好きなGSのザ・スパイダースからインスピレーションを受けています。ちなみに民族音楽っていう意味で言うと、個人的に日本の古き良き音階が入っている曲って言ったら「ブルー・シャトウ」だと思ってます。
「バン」って言葉にいくつも意味を感じ取れる言葉だと思うんですよね。例えば「Bang」みたいな感じで「攻撃していこう」とか「消してしまえ」みたいな意味に捉える人もいるし、「Burn」は燃えろだし。ドアをノックする音だったり、何か破裂する音だったり。まぁ、意味を調べたら、ほかにも結構ヤバめの意味もあったけど、まぁ、ロックって感じは伝わるかなと。最初は「バン」も「NaNaNaNaNa」だったんだけど「Naってなんやねん。意味わからん」ってなって「バン」にした感じでした。
君の世界を踊れ!
(歌詞の)「君の世界を踊れ!」は今回のテーマキャッチコピー。だからこそ、めっちゃ迷った。いっぱい(歌詞を)書いたんですよ。最初に書いたのが、「世界が真っ二つ」だったんです。そんな感じの歌詞をバーって書いていて、だんだん「いや、俺はなにがしてぇんやろう?」ってなって。最後、「君の世界を踊れ!」と「君の世界を尖れ!」に辿り着いて、どっちにしようって悩みました。結果、「踊れ」の方になったのは、「尖れ」はもう最初の方で話した通り、気持ちとして背負ってるから、その気持ちプラスさせて、「踊れ」にした。あと、タヒチアンビートを入れていたこともある。単純に「踊れ」の方が気持ち良いかなって。夢の一つですが、いつか僕たちの曲をタヒチアンダンスのチームに使われたら嬉しいなぁと、ワクワク面白いんじゃないかなって。勝手に想像しているだけだけど、これからアプローチしていこうと思っています。まさに、自分に対して「君の世界を踊れ!」中です。
「君の世界」って自分がピン!っときたものや、好きなことや、信じてること、大切にしてること。気持ちってぐちゃぐちゃしてるし、常に変わるものでもあるけど、なにか言葉にできない変わらないものがあると気づいたんです。それが自分だよ、って言われても、ほんとうにそうかよ!って思っちゃう。難しい……。言葉にならない。けど、迷いながらも人は行動するときがくる。ごちゃっといろんな気持ちや言葉がでたけど、大切なことは「ALOHA ROCK」で、僕らがつくったサーフロックを、僕らでおもいっきり鳴らすことなんです。
僕はこのDITSURF099では「世界」で戦いたい。ほんとうに「世界」で戦いたい、活動が大変なこともあるけど、乗り越えた先には、いくら年を重ねていても、みんなでこうだったね、とむっちゃいい話をして、良い経験を誰かに自慢して話ができる。伝えられる。そんなライブバンドになりたいと思ってます。
目の前に黒いカーテンが下りてくる
毎日ギターを弾く、とか毎日絵を描く、とかやって自分の表現したいこと、活動したいことっていうのを前向きにやっていても、それが突然、パッとできなくなったりするときもある。それもむっちゃ怖い。そういうときって目の前に黒いカーテンがパーって下りてくる感じ。急に。でもね、(特定の)人に会ったりすると、そのカーテンがパーって開くんだよね。不思議。「よし、やるぞ!」って思える。
音楽や絵の活動においても、表現だけしていれば一番良いかもだけど、チームとして目標や目的があるなら、自分たちで表現以外の事務的なこともやっていかなきゃならない。ほんとうは手分けしてチーム力を高めるためにもやらなきゃだけど……。うまくメンバーに手分けして進めることが、それぞれ大切な仕事や家族も抱えてるからこそ難しい場合もある。今まさに今後活動していくとしての課題にぶつかっている。そうなると、いろんな角度で活動を考えなきゃいけないし、一気に自分に乗っかってくる。プレッシャーもある中に、一つ一つクリアしていかなきゃ活動が進まないから、僕自身のパワーもかなり消耗する。言い訳だけど現に今までおもいっきり表現していたことも、中々に気が滅入って難しいときもある。戦いです。でも決して悪いことで感じてなくて、「活動を動かすこと」を通して、自分にもアーティストとしても学びとしてプラスになることもいっぱいある。むしろ、チームで動いたり、絵の仕事を通して、依頼者と一つに向かっていくのは、ほんとうに、ほんとうに好き。
僕が付き合ってるアーティストは良い意味で「我(が)」って人が多いから刺激も受ける。僕も「我」のときもむっちゃある。仕事でも人の想いとか、表現を受け入れて自分が今できることをするタイプだと思う。「こう描いてほしい」とか「こうしてほしい」みたいな意見もぜんぜん聞く。だから活動を動かす為にも(今の自分の状態に)自然と役割として着地したみたいな感じはあるかな。
そうか。やっぱり振り返ると「尖れ!」っていうメッセージは「自分が自分自身を受け入れて今こうありたい」っていう気持ちを言った、自分を信じるって言葉なのかもしれないな。いま、「ALOHA ROCK」ってなっているのも、偶然生まれた言葉だったけど、自分が「持ちたいもの」なのかも。「ALOHA」って調和って意味も感じるしね。
歌詞が怖くなった
DITSURF099はじめたときは、コロナの始まりの時期。活動を諦めるんじゃなくて、自分たちに今できる活動はないかって探ってました。始まりから「どーする?」からだったのが、ほんとうに良かったかも。最初にメンバーとして、一緒にやらないか?って話を持ちかけた一平(Ba.)と毎日のように考えていて、スタジオに入らなくても自宅でDTMを活用してできるアイデアを考えてくれたり。YouTubeだったり。全部が僕にとって新鮮すぎた!対面が中々難しかったし、仕事もマジで大変な時期だったから、それ面白い!ってなってDITSURF099の活動が始まりました。個人的に、マジで気持ち的にも助かった。
DITSURF099で歌詞がないのは怖くなったからなんです。他の人の歌詞や人が言ってることが、気持ち悪く思えて一時怖くなったの。むっちゃ好きなバンドでも、めちゃ気持ちはあがるし好きなんだけど、どこかで「なんでこんなに偉そうなのけ?」とか思うようになった時期があって。「俺は俺じゃん」みたいな。「俺は俺で良いのになんで他人からこんなに言われなきゃいけないの?」みたいなダーク?な気持ちになってしまって。いや、好きなんですよ。だってバンドのパワーすごいんだもん。人の人生変えるぐらい。でも、急に受け付けなくなった。
だから自分で曲つくるときは違う感じにしたいなと思ったし、ギター自体が狂気をはらんでいると思った。そっちに力を入れた感じかな。ギターのインストを個人的にしたかったのもあるし。そんな風に思っていたときもあったけど、時がたって、フロントマンとして立ち位置になって色々経験重ねていったら、今は、受け入れられる自分に戻ったし、なんならこうやって、歌うときがきた。自分に一番伝えたいことを。
青のりさんは多分、僕
こういうことなんですよ。これはつくられてる。求められてることが今ここにある。この辺とかすごく気持ち良い。それを眺めてる状況も。僕から見ると、このソースって「血」なんですよ。僕の中でなにか流れているエネルギー。それを感じるこいつ(青のり)がいて、この青のりさんは多分、僕かも。下手したらこのマヨネーズかもしれない。ただただ人が美味しいって感じるものをつくっているだけかもしれないけれど……。でもこういうやつが一番強いからね。うん。ほんと一緒だと思う。だって紙一重じゃないですか。平和ってなにが平和なのかも分からないし、平和をつくってると思われている奴らの中に悪って言われるかもしれないし、正義かもしれないし。でもこれ(青のり)は、眺めているだけじゃない。戦っている。
人間からしか生まれない音
僕が目指したいのは人間性。人間からしか生まれない音をつくりたい。人はジャンルにとらわれるんだけど、そしてそれは大事なことでもあるんだけど、もっと自由で良いと思っていて。ロックとかパンクとかサーフロックとかいろいろあるけれど、そのワクの中でも自由に遊んで自分の表現を入れていくことをしていきたい。それって好きなことに、自分の魂を入れられるってことだと思う。だからジャンルに左右されるんじゃなく、いろんなものを吸収して、ジャンルを感じるっていうのかな。偉そうだけど、リスペクト持って「誰かがつくったワクなんて越えたぜ」くらいの音楽を目指したい。ジャンルって、生まれてきたときには、当時の人たちの「狂気」があったと思うんですよ。当然、(まだ生まれていない)ジャンルの説明なんてないし、ただ、なにか自分の表現を出していただけなんじゃないかな、と。アンプ蹴ったら稲妻みてーな音したぜ!的な。この音、波っぽくね?!とか。
それを聞いていた人たちが、それを例えばサーフロックって呼んだりしたんじゃないかな、と思います。なにかを生む、生まれるものってのが好きなんすよ。
サーフロックは生き様
僕にとってのサーフロックは生き様、生きている感覚。海の波もしかり、物事には色んな波があって、この波の周波数的な所を拾ってくれる音楽かな。だから、むっちゃ辛いときや、楽しくいきたいときなど救われる。ギターも好きだし、ポップなアートワークも好き。ドカンって、でかい音鳴らせるし。
今、サーフロック研究所を(SNS上に)立ち上げていて、昔のサーフロックも今のサーフロックもめっちゃ調べてる。バンドを知るきっかけは、SNSに上がるサーフロックのイベントフライヤー。そこから気になるバンドをピックアップして、聞いてる。みんなにも広げて少しでもサーフロックを教えたいなぁ~と考えてるけど、大人の事情で著作的な所もあるからおもいっきりはできないけど、昆虫採集なみに、漁っていけたらと思って楽しんでいます。
まぁ~ほとんどのバンドが謎。ネットで調べても謎だから、やっぱ謎ってロマンありますね、時代変われぞ、変わらない所もある。
君の世界で踊れ!!!!!!!
※シングル「ALOHA ROCK」は7月1日からサブスク配信スタートしました!
是非聴いて下さい!
https://www.tunecore.co.jp/artists/DITSURF099
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