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【海外留学】海外で研究職に応募するためのCVの準備

私は日本で医師免許を取得し、市中病院で働いてから大学院へ入学し博士号を取得しました。博士取得後にどうしても留学がしたくて、海外のラボへ自分で応募し内定をもらいました。留学までの準備期間に国内フェローシップを獲得して、現在は海外で研究しています。留学を目指すことを決断したら、必要なのは海外のラボから内定を獲得することです。これは国内・現地のフェローシップのどちらを目指すにしても、まずは内定です。この記事ではその内定獲得のための第一歩ともいえる、CVの記載についてまとめます。

無料テンプレだけほしい人は下記を参考に(詳細な記載もあります)

この記事が役に立つかもしれない人

  • 海外に学術・研究・医療で留学を考えているが何から手をつけていいかよくわからない人

  • 海外留学したいがCVが何かよくわからない人

  • CVについて周りに教えてくれる人がいない人

  • CVのテンプレートや作り方を探している人


留学先を探す前に準備すること

  • CVを作る

  • (これまでの)研究内容を英語でまとめたプレゼンの準備

  • 推薦状を貰える人(3名)を考えておく

留学助成金(フェローシップ)応募とCV

留学助成金応募の3か月前までにはCVは完成させる


図1 留学におけるタイムラインの概要と準備すべきもの

もし、日本学術振興会海外特別研究員(4-5月締め切り)に応募するならば2月上原や武田(おおむね9月締め切り)に応募するなら6月には完成させて、行きたいラボのPIに連絡を取りましょう。海外助成金の応募書類の準備には1か月は見ておくほうが無難です。そのため、2か月前には面接を受け、CVの準備は応募の時点で必要だからです。いまちょうど二月ですから、CVを完成させるべき時です!

私の話をすると、私は大学院の時から留学したいと希望していたので、業績のない時からCVを作り始め、ちょくちょく更新していました。

留学助成金応募の3か月前までに終わらせておきたいこと

  • ラボの責任者(PI)と連絡をとる

  • 応募したい旨を伝える(直接かメール)

  • PIからCV(や推薦状)を送るように言われる

  • PIと面談する。最終面接選考に進めるかはここで決まる(Web)

  • PIから推薦状を送るように言われる

留学助成金応募の2か月前までに終わらせておきたいこと

  • インタビュー(最終選考面接、Web)を行うー通常、最初のPI面談の直後に最終面接選考の日取りを調節することが多い

  • セミナー形式の面接

留学助成金応募の1か月前までに終わらせておきたいこと

  • 合否の連絡を受け取る

  • 海外グラントへの応募の準備(準備に1か月は必要)

CVとは何?なぜ準備が必要?

CV(Curriculum Vitae)とは学術・研究・専門職向けの詳細な履歴書 のことを指します。特にアカデミア(大学・研究機関)や医療分野では、応募者の学歴・研究業績・職歴・専門的なスキルを詳しく記載する ために使用されます。アメリカやヨーロッパでは、CV(学術職)とResume(一般職) は区別されており、CVは研究者や大学教員、医療関係者向けに使われるのが一般的です。

CVは急に要望されるのであらかじめ準備しておく必要があります。私が応募したときも、まず「ラボセミナー(最終選考のための面接)をするかどうかを決めるために、まず私が15分ほどの面接をするからCVを送ってくれ」という返事が来ました。二か所応募して二か所ともこの流れでした。通常、アメリカではポスドクのラボを探し始めた段階で準備しているものなので、すぐに送ることが当然、という雰囲気があります。英語で履歴書など書いたことがない人がほとんどだと思うので、私たち日本人にとっては意外と時間がかかります。だから学会でどこかのPIに声をかける前に、どこかのPIにメールを送る前に、あらかじめ準備しましょう

CV作成の実際とテンプレートの紹介

読む側の立場からすると、見やすくて知りたい情報が整理されているCVが最適解です。基本的には、学術分野でのCVのフォーマットはHarvard Styleという基本スタイルがあります。ただし実に様々な種類のフォーマットがあります。私の所属しているラボにも応募者がいるので様々な種類のCVを見ますが、結局見やすいのが一番です。

CVの項目の順番はある程度固定しています。順番がいつも見ているものと違うと混乱をきたします。例えば一般的な論文でIntroduction> Results> Discussionと進むように、また臨床の症例プレゼンテーションでも、主訴→現病歴→身体所見→検査所見 と順番が決まっているのと同様です。順番が異なると、職歴はどこにあるのだ?と探す手間を強いることになります。フォーマットを利用するのがベストです。

写真は入れても入れなくても問題ないでしょう。どちらのタイプも見かけます。日本人と同じで、目を引く派手なものが好きなPIもいれば、硬派で伝統的なタイプを好む人もいます。無難に行くのなら、なしでOKです。

日本の履歴書と異なる点は、新しい経歴が上に来ます。例えば学歴なら、大学院博士課程、大学の順番に書きます。また、経歴よりも何をしたか・何ができるかが重要視されるのも特徴です。「こんなすごいラボ・大学にいました」ということより、「プロジェクトで役割を担ったこと」がより重要で、特に最近のアクティビティがより重要だということです。

NIH Biosketchというフォーマットを見つけて悩むかもしれません。通常はこれは研究費の応募に使うものなので、採用の応募に使うのには賛否があります。しかし、おそらくCVを査読するであろうPIはこの形式にも慣れているので、項目の書き方については大いに参考にする余地があり、ダウンロードしておいて損はないです。

1. 無料で使用可能なテンプレート

  • Overleaf: 科学者やアカデミア向けの美しいCVを作成可能。

  • Resumé.io: 使いやすいオンラインResume作成ツール。無料プランあり。ただしCVの作成に使用には、項目の不足に注意が必要。

  • Zety: 豊富なテンプレートがあり、フォーマットの選択肢が多い。

2. 研究者向けのCVフォーマットのポイント

学術機関への応募でよく使われるフォーマットは、先に述べたHarvard styleです。無難に行くなら、写真なし、文字だけで構造化です。

  • シンプルで構造的なレイアウト

    • 研究者向けのCVは「読みやすさ」が最優先。過度なデザインは不要。

    • Times New RomanやArialなどのフォント(サイズ10〜12pt)。

    • 2ページに収まるように調整(アメリカのCVは長くてもOK、ただし要点をまとめる)。

  • 重要なセクション

    1. 名前と連絡先(Email、Phone、Institution Address)

    2. 研究分野・研究テーマの簡単なサマリー(2〜3行)

    3. 学歴(Education)

    4. 研究経験(Research Experience)(ポスドク、博士課程の研究、主要なプロジェクト)自分がプロジェクトのどの部分にかかわったかを簡潔に書くことが大切

    5. 業績(Publications & Presentations)(論文、学会発表)

    6. 助成金・奨学金(Grants & Fellowships)(獲得した研究費。海外の研究者は日本のグラントはよく知らないので、額を書いてもよい)

    7. 受賞歴(Honors & Awards)(海外の研究者は日本の賞はよく知らないので、簡単に説明を書いてもよい)

    8. 技術スキル(Technical Skills)(使用できる技術、解析手法など)

    9. 指導・教育経験(Teaching & Mentorship)(指導歴がある場合)

    10. プロフェッショナルサービス(Professional Service)(査読、学会運営など)

3. 実際にCVを作成する際のおすすめツール

  • Microsoft Word(最も汎用的、PDF出力に対応)

  • LaTeX(Overleaf)(研究者向けに見栄えの良いCVを作成可能)

  • Adobe Acrobat DC 最終的にはPDFで提出するため調整に便利)

  • Google Docs(オンライン共有が便利)

学術系の応募なら、シンプルかつ系統だったHarvard styleがおすすめです。検索エンジンで”Harvard style CV”と検索するといくつかヒットするので、それらをテンプレートとして使用するといいでしょう。

CVが合否にかかわるとしたら

合否に最も重要なのはもちろん業績であるため、CVそのものの形式やクオリティは二の次と考えられがちです。ただアメリカの文化として、ディスカッションが大好きで、計画を立て十分な準備やリハーサルを行うのが日本よりずっと盛んな印象がありますから、準備能力・プレゼン力・書類作成能力を見られているという点もあるかもしれません (これは日本のグラントでも同様ですが)。アメリカでは、CV代行の業者を利用して少しでも見栄えをよくする人たちも存在します。自分たちでもCVを査読し同僚とディスカッションして、よりよいCVを書こうと努力していますが、なぜCVが重要かを書いておきたいと思います。

CVの重要性と影響

  1. 第一印象を決める

    • 選考の初期段階では、CVが最初に目にされる書類です。

    • その内容が明確で説得力のあるものでなければ、次のステップ(面接や推薦状の検討)に進めません。

  2. 選考のフィルタリングに使われる

    • 多くの応募者の中から適切な候補者を絞り込むため、CVの記述が不明瞭だったり、インパクトがなかったりすると見落とされることがあります。

    • 研究分野の専門用語は適切に使いつつも、査読者が短時間で理解できるようにまとめることが大切です。

  3. プレゼンテーションの影響

    • フォーマットが乱れている情報が整理されていない論理的な流れがないと、それだけで印象が悪くなります。

    • 逆に、簡潔でわかりやすく、強調すべき点が適切に強調されているCVは、選考側の印象に残りやすくなります。

  4. 研究の価値を適切に伝える

    • 研究業績がどれだけ素晴らしくても、適切に表現できていなければ評価されないことがあります。Reviewer is not your friend.だそうです。

    • 単に「論文リストを記載」するのではなく、主要論文の貢献やインパクトを研究経験のところで簡潔に説明すると、評価が変わります。

CVの書き方で合否が分かれるポイント

明確な構成

  • 教育歴、研究歴、業績(論文・学会発表)、受賞歴、スキル、推薦者情報などを、体系的に整理する。

  • セクションごとに見やすく配置し、重要なポイントが伝わるようにする。

研究内容を簡潔にアピール

  • 研究のテーマ・目的・意義・成果を一文で伝えられるようにする。

  • 主要論文については「簡単な概要や影響」を添えると効果的。

実績の強調(定量的データを活用)

  • 「〇〇の論文を発表」ではなく、「〇〇の研究により●●の知見を示し、XX誌に筆頭著者として掲載(Impact Factor: X.XX)」のように具体性を持たせる。

  • 「XXのプロジェクトに参加」ではなく、「XXのプロジェクトのXXXの技術を確立」など、主体的な貢献を強調する。

応募先に適したカスタマイズ

  • 「どの研究室に応募するか」によって、強調すべき研究経験やスキルが変わる。

  • 例えば、幹細胞研究のラボに応募する場合は、幹細胞関連の業績を前面に出すべきであり、それ以外の業績は簡潔にまとめる。

分かりやすい英語

  • 長い文章や複雑な表現を避け、シンプルかつ明快な英語を使う。

  • ChatGPTを利用した英文校正も十分使える。


結論:CVの質は合否を左右しえる

CVは「事実のリスト」ではなく、「自分の価値を適切に伝えるプレゼン資料」だと考えるとよいと思います。研究の実績を的確にアピールし、応募先のニーズに合う形で表現することで、同じ実績でも見る側の印象は大きく変わります。書き方の違いで合否が決まることも十分あり得るので、戦略的に作成することが重要です。


(参考)NIH Biosketchとは?

NIH Biosketch(バイオスケッチ)は、National Institutes of Health(NIH)が研究助成(grant)申請時に要求するフォーマットの履歴書のようなものです。通常のCVとは異なり、研究業績や貢献をより詳細に説明することに重点を置いています。

NIH Biosketchの特徴

  • 助成金申請専用のフォーマット(特にNIHやNSFの研究費申請で必須)

  • 学歴や職歴の記載は最小限で、研究への貢献を強調

  • 5ページ以内に制限されている

  • 2種類のバージョン

    1. 非フェローシップ版(一般的な研究者用)

    2. フェローシップ版(NIHの個人フェローシップ申請者用)


NIH Biosketchのフォーマット

通常のCVと異なり、以下のセクションで構成されています。

1. Personal Statement(個人声明)

  • 研究テーマや専門分野の概要

  • 自身の研究が助成金のプロジェクトとどのように関連するか

  • 主要な業績の要約

  • 最大4つの論文や成果物をリストアップ可能

2. Positions, Scientific Appointments, and Honors(職歴・受賞歴)

  • 過去の職歴やアカデミックなポジション

  • 関連する受賞歴

  • 時系列順に簡潔に記載(詳細な説明は不要)

3. Contributions to Science(科学への貢献)

  • 最大5つの主要な研究貢献を記述

    • それぞれの貢献について 簡単な説明(最大半ページ) を加える

    • 各貢献に対し 代表的な論文4件まで リストアップ可能

  • 一般的なCVよりも研究のインパクトやストーリー性が求められる

4. Scholastic Performance(学歴・成績)※フェローシップ版のみ

  • 学歴の一覧(学位、取得年、指導教員など)

  • 成績(GPAなど)が含まれることもある


NIH BiosketchをCVのフォーマットとして使うのはアリか?

メリット

  1. 研究者としての貢献を強調できる

    • 研究内容や論文リストだけでなく、科学へのインパクトを語る構成になっているため、アカデミア向けのCVとして強い。

  2. 研究費申請を意識したアプローチ

    • 将来的にNIHやNSFの助成金申請を考えているなら、このフォーマットに慣れておくのは良い。

  3. 簡潔で明瞭な構成

    • 通常のCVよりも「単なる履歴書」ではなく、「科学的な業績アピールの場」として機能する。

デメリット

  1. 一般的なアカデミックポジションの応募には向かない場合がある

    • アメリカの大学や研究所にポスドク・PIとして応募する場合、通常のCV(学歴・職歴が詳しく書かれたもの) が求められることが多い。

    • 研究助成金に特化しすぎているため、通常の履歴書・CVのような網羅性が低い

  2. カバーレターとの相性

    • ポジション応募時には、CVとカバーレターがセットで必要になることが多いが、NIH Biosketchはカバーレターを補完するには形式が異なる。逆にカバーレターに含めたほうがいい内容もBiosketchに含まれてしまう

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