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ひとたらしの『宗教とデザイン』

本の撮影をする習慣は、普段はない。
noteで紹介するにあたり、何気なく撮ってみたら、楽しくなってしまった。
あらためて表紙が語りかけてくるからである。
書店で初めて出会った頃のように、本がちょっとよそゆきの顔をして、挨拶をしてくれるからである。

本との初めましてでは、まずその顔の造作や目鼻立ち(表紙やタイトル)が自分の好みに合うかどうかで、ピンとくる。
もうそれで7割くらい決まるのではないか。
ちょっと会話してみたり(パラパラめくったり)
ちょっと何気なく触れてみたり(紙質の手馴染みの感じ)
あ、好きかも、と思ったらご縁が始まる(購入し本との交際が始まる)。

そういう意味では、この本は第一印象として潔い。
『宗教とデザイン』
シンプルかつ明確である。
広大なテーマなのに、蛍光色の黄色1色でドンと勝負に挑む。

そのタイトルは「絶対に私が好きになるタイプ」であることを告げていて、
学術的で網羅的な気配なのに、蛍光色でぐいぐい迫る強引な感じも好みだった。
厚みも4、5センチはあろうか。ずっしりと重い。
胸板が厚いのだ。

ぱらぱらめくると、案の定、深みに嵌まってぞっこんになりそうな相手である。
古今東西、世界中の、神話や宗教や文明のコアとなる思想のデザインや表現が散りばめられている。
ビジュアルがいい。センスがいい。

文体は堅いのに、紙面に踊るキーワードは、私にとって目がハートになってしまうものばかりで、おちおちと読めたもんじゃない。
知的な会話にくらくらしそう。

世界知が詰め込まれている予感。中身が深くて風貌はかっこいい。
まだ交際していないけど、もう好き。

と、いうことで実はまだ読めていない一冊を紹介したのである。

左右社から出ている松田行正さんの本である。
松田さんは、「本のデザインを中心としたグラフィックデザイナー」をされているそうだ。
それはもう、ひとたらしな本をつくる訳である。

小口(本を開く側の面)にも心憎い仕掛けがある。
うっすら浮かび上がる三日月が、いたずら心を持つオシャレさんであることを小気味よく主張していて、まるで手にとった人にだけわかるウィンクを決めてくるよう。

真剣交際をまだしていないのに、多分好き。きっとこれからも側にいる。
読んでいないのにそう思わせるとは、それはもう、あっぱれ人たらしな本である。


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