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【映画メモ】『PERFECT DAYS』
役所広司シリーズ。
監督が日本人でなく、彼の他の作品も観たことがないため、どのような世界観なのか未知数の状態での鑑賞。
◼️前提条件
備忘メモなので、映画の内容は完全ネタバレです。予めご了承ください。
◼️基本情報
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬
製作:柳井康治
製作総指揮:役所広司
出演者:役所広司、柄本時生、三浦友和、田中泯
撮影:フランツ・ルスティグ
編集:トニ・フロッシュハマー
配給:ビターズ・エンド
公開:2023年
◼️要約
渋谷区のトイレ清掃員の日常。丁寧な仕事、整頓された一人暮らしのアパート、センスの良い音楽、趣味のモノクロフィルム、神社のベンチでランチ、木漏れ日をカメラにおさめる。仕事後の銭湯、夕食は居酒屋で、就寝前の読書。朝は観葉植物に水をやり、缶コーヒーを買って仕事へ向かう。運転席の主人公の彼の視線の先に東京の景色が流れる。いつもの道、いつもの街並み。彼がどんな人物なのかが劇中、少しずつ明らかになっていく。人にはそれぞれの過去があり、家族があり、人生がある。
◼️雑記
彼のアパートは、最初がらんとして、全く生活感がないように見える。
映画が進むにつれ、彼は好きなものに囲まれて生活していることがわかる。
本棚
カセットテープの棚
撮り溜めた写真の保管箱の山
観葉植物
それらは、きちんと整理整頓されており、
彼の几帳面さがわかる。
仕事終わりの銭湯
居酒屋での食事
寝る前の読書。
休日はコインランドリー
古本屋
行きつけのスナック
どの場所も彼のお気に入りの空間だ。
彼はどこにいる時も彼は物静かで礼儀正しく振舞う。
しかし人と過度な関わりは持たない。
「かつては人と大きくぶつかった経験もある。
でも今は誰にも邪魔されず、
丁寧に時を過ごしたい」
そんな彼の心の声が聞こえてくるようだ。
彼の真っ直ぐな生き方は、様々な葛藤を生んだだろう。家族と縁を切り、全く新しい土地で生きることを選択した強さも神々しい。
彼の周辺世界はまさに
「洗練された取捨選択」によって作られた、
「パーフェクトな世界」なのだろうか。
そして彼の過ごす毎日は、彼にとっての
「パーフェクトな1日」なのだろうか。
そうだとして、なぜ彼は車を運転しながら涙を流すのだろうか。
悲しい、つらい、という感情なのか、
それとも嬉しい、感動、という感情なのか。
ラストシーンだけ涙を流しているわけではない。
毎日泣いていた、と考えることもできるし、
その日たまたま涙が出た、と考えることもできる。
私なりに、色んな可能性を探った結果、行き着いた結論はこれ。
感受性の豊かな、ひとりの男の、
日常的なひとコマ。
静かに思索が深まる、とても良い映画だった。