上杉鷹山の師、細井平洲が「興譲館」に込めた思い
歴史上の偉人の中で、私が深く尊敬するのが上杉鷹山公です。その生き方や功績には、今も学ぶべき教訓が数多くあります。実は、私が所属する会社の名称も、鷹山公が設立した藩校「興譲館」にちなんでいます。「興譲館」の名には、鷹山公の師である細井平洲先生が、当時の人々に向けた熱い思いが込められているのです。
「興譲館」に込められた意味
興譲館の「興譲」という言葉には、「日本人の美しい心を再び呼び覚まし、育む」という意図が込められています。細井平洲先生は「興譲館」という校名に、ひとりひとりの人間が自らを高めることが、やがては家庭や地域、そして国家の安定に繋がるという大きなビジョンを託しました。
この考え方は、中国の古典である『大学』からインスピレーションを受けたものでした。『大学』では「修身斉家治国平天下」、つまり「自己修養が家族、地域、国家、さらには世界全体の安定をもたらす」という教えが説かれています。このような思想を背景に、「興譲館」は一人ひとりが道徳心を養い、周囲と調和していくことを重視した教育機関として設立されたのです。
「譲と仁」という二つの道徳
細井平洲先生が「興譲館」で掲げた教育理念の柱となるのが、「譲」と「仁」という二つの道徳です。まず、「譲」は他者への配慮や思いやりの心を意味し、自分自身の利益だけでなく、周囲の幸福をも考える心構えです。
そして「仁」とは、相手の悲しみや苦しみを見過ごさず、共感し支えたいと願う心です。細井平洲先生は、この「譲」をさらに「恕(じょ)」という言葉に置き換えて説きました。「恕」という字は、他人の心情を思いやる意味が強く、相手の立場に立って共感する心を表します。
平洲先生が語った「恕」の精神は、ただ単に他人を理解するだけではなく、「他者の苦しみを我が事のように感じ、どうにか助けたい」という深い慈愛の心を指していました。
「恕」の精神を現代に活かす
現代のビジネスや日常の生活においても、「恕」の精神は非常に大切です。例えば、職場での人間関係においても、「恕」を意識することで、他者を理解し、共感しようとする心がけが生まれます。このような態度は、チームワークの強化や円滑なコミュニケーションの促進にもつながり、職場の雰囲気を明るくする力を持っています。
私たちは、どうしても自分の利益や目標を優先しがちですが、細井平洲先生が教えてくれた「恕」の精神を思い出すことで、他者への配慮や思いやりを忘れないようにできるのではないでしょうか。例えば、同僚の意見に耳を傾け、彼らの苦労や課題を理解しようとすることが、この「恕」の実践になるのです。
「興譲館」の精神を未来に受け継ぐ
「興譲館」の名に込められた思いは、現代の私たちにも深い教訓をもたらします。個人が自己を磨き、他者への配慮を忘れずに行動することで、社会全体の調和と成長が可能になるという考え方は、今なお価値あるものです。
私たちの会社にも、「興譲館」の名にあやかった「Kojo」という名前が冠されています。この名前を持つ限り、私自身も「恕」の精神を忘れず、他者に役立つ存在でありたいと考えています。これは、単に利益を追求するだけでなく、社員やお客様、さらには社会全体の幸福を目指すための指針であり、「興譲館」が伝える思いを未来に受け継ぐことでもあるのです。
結論:細井平洲先生からのメッセージ
細井平洲先生が「興譲館」に託したのは、ただの教育理念ではなく、社会全体を良くするためのビジョンでした。「恕」と「譲」の精神を日々の生活や仕事に取り入れることで、私たちもまた、彼の教えを現代に引き継ぐことができます。
「あ・うんの呼吸」や「恕」の精神を感じられる社会を取り戻すために、まずは自分が変わり、周囲と調和していくことが大切です。細井平洲先生が願ったように、私たちも「日本人の美しい心」を大切にしながら、他者とともに成長していける社会を目指していきたいと思います。
(この記事は、2019年9月24日にオフィスKojoのブログ「伝刻の詞」にエントリーしたものを再編集したものです。)
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