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リスキリングって聞くけれど… 何をすれば良い?

※今回は、フリージャーナリスト:池上彰さんの教えです。

過渡期におけるリスキリング

今、国をあげてリスキリングに取り組んでいますが、そもそも何故リスキリングが大切なのか?
 
それは、スキルは教養よりも、陳腐化するのが早いからです。
 
特にITの進化などで時代が大きく変化する今は、スキルの陳腐化のスピードも加速しています。
 
学生時代に学んだ事も、多少は変化して行きますが、基本的には大部分が「使える部分」のまま残ります。これが教養(リベラルアーツ)です。
 
直接には仕事の役に立たないかもしれないけれど、いずれじわりじわりと役に立ち、生涯使えるものなのです。だからこそ、学生時代に教養はしっかりと学んでおいてほしいものです。
一方、就職してから直ぐに、あるいは直接役に立つ様な事が「スキル」です。こうしたスキルは、いずれ役に立たなくなります。
 
そうしたスキルをアップデートしていくのが「リスキリング」です。
 
スキルは、「ちょっと古びてきたな」と思ったら改めて学び直し、それによって常にリニューアルしていく必要があるのです。
 
リスキリングをする時には、「自分を知る事が出来る」というメリットもあります。
「将来に向けて、自分はどんなスキルを身につけたいのか」と考えや思いを深掘りしていく事は、自分を発見するきっかけになるからです。
 
「今の仕事とは直接関係がないけれど、こういう事も学んでみたい」などという考えが浮かん出来たら、それが実はあなたがやってみたい仕事なのかもしれません
 
「学びたいものを選ぶ」という事は、新しい人生が生まれるきっかけになる事だと思うのです。

「スキルが陳腐化してきているのは感じる。だからリスキリングしていかなきゃいけないけれど、やる気が出ない」という時は、逆に、今の仕事が嫌になったり飽きたりしている事へのサインの場合もあります。
 
リスキリングは面倒くさい、と思う人は、一度「役に立つかどうか」から外れて、教養でも何でもいい、少しでも自分の興味のある事から少しずつ挑戦してみると良いでしょう。
 
今30代や40代の人は、古い価値観の残る日本社会、例えば年功序列で体育会系、飲み会や社員旅行をするといった日本企業特有の文化も知っています。
 
一方で、若い人たちの割り切った考え方、数年であっさりと転職する様な価値観も、ある程度理解が出来る事でしょう。
 
社会が変化する過渡期の、「狭間の世代」です。そんな30代や40代が、2040年には中高年世代になります。今30歳なら46歳、40歳なら56歳になります。
 
変化の激しい世の中で、リストラに怯えたり、若い世代についていけないと悩んだりせず、働き続け、稼ぐ事の出来る人間でいられるかどうか? その分岐点が、リスキリングにあるといえます。

【リスキリング】=学び直し、ではない!

未来の選択肢を増やす「リスキリング」の始め方

昨年10月、岸田総理は所信表明演説で「リスキリング支援」への財源投入を表明しました。企業が従業員の育成に使える「人材開発支援助成金」に、リスキリングの為のコースを新設しました。デジタルに特化した通称「Reスキル講座」もあります。

国が予算を取って推奨する「リスキング」。聞いた事はあっても詳しくはわからない、どの分野を学べばいいのかわからないという人も多いはず。先生を招いて、「リスキング」とはどういうものかを教えていただきます。

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事・後藤宗明さんの教えです。

何をどの様に学ぶのか!? リスキリングの定義とは

◆リスキングは〝新しい仕事に就く為のスキル〟を身につける事

後藤:突然ですが、ChatGPTって、使った事はありますか?

編集部:サービス開始当初に触った事はありますが、最近はあんまり…。

絞るスキルは、日々起きる沢山の出来事から何が自分にとって大切なのか?
自分の優先順位を見つけ出すモノです。
何故、この絞るスキルが大切なのでしょうか?

後藤:実は、ChatGPTは今回のテーマである「リスキリング」と大きな関係があるんですよ。
編集部:どういう事ですか!?
後藤:順を追って説明して行きましょう。まず、リスキリングは英語では「reskilling(re+skilling)」と書いて、「新しい事を学び、新しいスキルを身につけ実践し、新しい業務や職業に就く事」
転職や起業に限らず、社内でも新しい分野の業務に繋がるスキルを身につける事は、リスキリングに当たります。

◆「リカレント教育」や「スキルアップ」、「学び直し」との違いは?

編集部:「学び直し」の事だと聞いた事もあるのですが。

後藤:日本ではそう訳される事が多いですね。ただリスキリングが提唱された欧米での認識はもっと仕事に直結する学びの事。

英語では「relearn」という言葉も別にあって、自分の好きな事を学び直す事と明確に区別されています。「リカレント教育」という言葉もありますね。

編集部:聞いた事があります。

後藤:リカレント教育は人生100年時代に向けて提唱されている、生涯学習のひとつの手法。一度仕事を辞めて大学院などで勉強し、学び終えたらまた仕事に就くといったサイクルを続ける事です。学ぶ内容は全国のお城でも数学の理論でも、なんでも構いません。

編集部:確かに、学び直しという言葉には、様々な意味が含まれますね?

自分の優先順位がわかると、関心のアンテナが立ちます。そうすると、関連する情報が集まり、瞬時に反応する事が出来る様になります。

「赤い車を買ったら、急に街中で赤い車が目につく様になった」「自分に子どもが生まれたら、他人の子どもに目がいって、世の中に子どもが増えたのかと錯覚してしまう」。これは、RAS効果と呼ばれるモノです。関心のアンテナが立つと情報に敏感になって、より目に入りやすくなるのです。

後藤:日本では、リスキリングと学び直しが混同されている為に、「結局、なんなの?」という人が多数いて(苦笑)。

編集部:仕事のスキルを身につけるという意味なら、「スキルアップ」という言葉もあります。

後藤:スキルアップは和製英語で、英語では「アップスキリング」と言います。アップスキリングは、現在の職務の専門性をさらに向上させる為に新しいスキルを獲得する事。

例えば、経理担当の社員がより高度な経理のスキルを習得するイメージです。リスキリングは、あくまでも〝新しい仕事に就く為のスキル〟を身につける事だと覚えておいてください。

何故今「リスキング」が注目されているの?

◆デジタル人材の確保が急務になっている事が大きな要因

編集部:仕事のスキルを高める事は、これ迄も重視されてきました。何故今、特にリスキリングが注目されているんですか。
 
後藤:様々な分野でデジタル化が急速に進み、従来の仕事が減ってしまう一方、デジタル人材の確保が急務になっているからです。
 
後藤:例えば、銀行の窓口業務や役員秘書、事務職、レジ係などは今後、業務量が急速に減っていく事が予想されます。銀行の窓口業務は、既にオンラインに置き換わりつつありますよね。

秘書業務も、冒頭でお話ししたChatGPTの有料版で「〇月〇日から3泊でシンガポール出張に行くので、1泊の予算が4万円のホテルを予約してください」などと入力すると、条件に合うホテルが一発で表示され、そのまま予約出来るんですよ。

これ迄人間が30分、1時間かけてやっていた様な作業が数分で完了してしまうんです。

◆AIの仕事が正しく行われているかジャッジ出来る人材の需要が増加

編集部:AIに仕事を奪われる、と何年か前から言われていますね。
 
後藤:秘書という職業自体がなくなる訳ではありませんが、多くのタスクが自動化されて、細かい作業を行う人員は減っていくでしょう。
 
生成AIの進化が目覚ましい現在は、生成AIでどの様な仕事が出来る様になるか見極められる迄、新卒採用をストップするという大手企業も出てきているくらい。
 
その反面、自動化された仕事が正しく行われているかどうか、ジャッジ出来る人材はどんどん需要が増えているので、リスキリングして急いで育成する必要がある、という状況です。

編集部:リスキリング=デジタルのスキルを身につける事、なのですか?
 
後藤:そうとは限りません。ただ、〝新しい仕事につなげる〟という目的を考えると、今は人材が圧倒的に不足しているデジタル分野のスキルを身につける事で、将来の選択肢を大幅に増やせるという事です。
 
ほかにも、今後、ビジネスの急成長が見込まれる環境=グリーン分野について学ぶ事は〝グリーンリスキリング〟と呼ばれますし、宇宙分野もこれからアツいと思いますよ。

◆人手不足…なのに雇用の総数は減少傾向!? AIの台頭で雇用にも影響が!

世界経済フォーラム「The Future of Jobs Report」および2020年年次総会発表より

世界経済フォーラムは’20年1月に、AIやビッグデータを用いた技術革新により7500万件の雇用が奪われる可能性があると発表しました。コロナ禍に突入した’20年10月の予測では、今後5年間で人間・機械・アルゴリズムの労働分担が進むとして修正が進み、’23年5月の予測には生成AIの影響も含まれ、’27年迄に雇用消失が雇用創出を上回るという結果になってます。

デジタル分野でリスキングをする方が将来の可能性が広がる

◆人間しか出来ない仕事への競争がハンパない

編集部:資格の勉強も、リスキリングに当たりますか?
 
後藤:やみくもに資格を取ってもあまり意味はないと思います。でも、例えば英語の勉強なら、自動翻訳の精度が上がっているとはいえ、誤訳もある。その誤りを正して自動翻訳を使いこなせる人材は当分、貴重でしょう。その為の英語力をつけるという目的で、TOEIC900点を目指すなら全然アリ!
 
さらに、インバウンドが増々盛り上がる中で、デジタルマーケティングのスキルと英語をかけ合わせて、英語でデジタルマーケティングが出来る人材になれれば、相当重宝されます。

編集部:ちなみに、デジタルスキルはマストですか? 苦手意識がある人は多いと思うのですが…。
 
後藤:そういう人はとても多いですが、その結果、数少ない〝人間しか出来ない〟仕事に膨大な人が群がっていて競争がハンパない。そこで勝ち残るより、デジタル分野で少しでも興味をもてる事を見つけてリスキリングするほうが、将来の可能性は広がるでしょう。

◆リスキングは本来企業や国が責任をもって行うべき事

編集部:忙しい毎日の中で、リスキリングの時間を捻出するのは大変ですね。
 
後藤:勘違いしてほしくないんですが、大前提として、リスキリングは本来個人ではなく、労働者を雇用している企業や国が責任をもって業務時間内に行うべき事です。
 
例えば、店にセルフレジを導入するのは企業の都合です。現場のレジ担当者に、別の業務に移ってもらう必要があるなら、その為のリスキリングの機会は雇用側が与えるのが筋じゃないですか。
編集部:そうですね…。
 
後藤:世界デジタル競争力ランキングの上位国、’22年に2位のアメリカは各企業が主体となって実施していますし、4位のシンガポールは国や自治体が主導です

(国際経営開発研究所〈IMD〉「世界デジタル競争力ランキング」2022)

63の国と地域を対象に、各国・地域の統計情報のほか、経営者や管理職に対する聞き取り調査などで順位を決定。デンマークは、「社員研修」「テクノロジーの発展と応用」など、8つの項目で1位となり総合トップに。日本は「高等教育の生徒当たり教師数」「ワイヤレスブロードバンド利用者数」などの項目では高い評価を得たものの、「国際経験」と「ビッグデータ活用・分析」などで最下位となり、過去最低の総合29位になってます。東アジアでは、台湾が11位、中国が17位に。
 
後藤:国のデジタル分野が成長する事で、雇用も守られ、国自体も成長していくので、国家戦略としてリスキリングをしているんです。日本でも大手企業はリスキリングを整備しつつありますが、中小企業を中心に個人の取り組みの話にすり替えられている事も少なくありません。

◆リスキリングの機会を与えてもらえる様働きかける

編集部:じゃあやっぱり、自分でなんとかしないといけない?
 
後藤:まずは自分の勤務先に、リスキリングの機会を与えてもらえる様働きかける事が第一歩です。会議でZoomを使いたい、業務でChatGPTを使いたいと提案してみるなど、業務の生産性を高める為のデジタル化について、周囲にも呼びかけて勉強会を開いたりしてもいいと思います。
 
編集部:勤務先が、リスキリングに協力的ではなかったら?
 
後藤:自分自身のデジタルリテラシーを上げるだけでも、未来に繋がると思いますよ。例えば、今後もっと需要が増えていく音声検索にトライしてみる。部下に的確な指示を出す様に音声検索を使いこなせるのは、立派なスキルです。
 
または、家の間取りを把握してくれるお掃除ロボットといったIoT家電を使ってみるのもいいですね。最新のAIがどの様にデータを取ってどの様に動いているのか、自分で使って実感すれば、AIについてもっと詳しく学びたくなるはず。
 
とはいえ、成長機会を与えてくれない会社にいる事自体、将来の失業リスクに繋がるので、転職の準備を始めてもいいかもしれません。
 
編集部:自分が生き残っていけるのか… 不安です
 
後藤:実は僕自身も、10年前迄はデジタルの仕事をした事もなかったですし、40代での転職活動は100社以上に落ちたりと痛い目にも遭いました。
でも今、意気揚々と働いていられるのは、デジタルやAIについて学んだから。勿論、これからも努力は続けないといけませんが、何が起きるか?ある程度予測出来る様になったから、怖くはないんです。
自分のこれ迄のスキルに、どの様なスキルをプラスしたら何が出来るのか?それを知る為にも、スキルを日々積み重ねてみてください。

覚えておきたいキーワードをおさらい

キーワード
1 リカレント教育
2 生成AI
3 グリーン分野
4 個 人

リカレント教育
スウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンが提唱したとされる概念で、教育と就労のサイクルを繰り返す生涯教育手法のひとつ。個人の関心が原点で、好きな事を学ぶ機会を探し、大学院や教育機関などで私的な活動として取り組む事が基本です。
 
 
生成AI
人工知能システムの一種で、コンピュータが学習したデータをもとに、新しいアイディアやコンテンツを生み出す技術。現在は文章や画像、音声、音楽、動画などが生成出来る。作業を効率化出来る、技術のハードルが下がるなどのメリットがある一方、品質が安定しない、フェイクコンテンツの増加などのデメリットもあります。
 
 
グリーン分野
持続可能な社会を実現する為の産業分野で、すべての業種に大きく関わる分野。欧米では、グリーンジョブなどという表現で、雇用創出や人材育成に対する取り組みが始まっている。アメリカでは過去5年間で再生可能エネルギーの環境分野での雇用が237%増加、’23年には、石油・ガス関連の雇用総数を上回るという予想もあります。
 
 
個 人
個人がどの様にリスキリングを進めて行くと良いかは、発売中の後藤さんの新著『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング【実践編】』(日本能率協会マネジメントセンター)に詳しい。海外の事例を含めて解説されている。

●掲載している情報は2023年月11日現在のものです。               以上

今回の記事は、自分が会社を解雇され、体調も悪化してから常々、「必要だよな」と考えていた事をズバリ言われ「直言」されました。「覚悟」を持ってリスキングに向き合わないと先がないという事を思い知りました。英語は、苦手なんて言ってられない状況。でも「やる気」にならない。「どうしたら良いか?」英語を克服したいと思っていると“英語”に関する情報が、良く目につきます。これは明らかに「RAS効果」であり、アンテナが張っている状態なのです。自分にとって必要な“栄養”・“活力”として意識していますが、行動には至っていません。猛省します。まず娘の中学校:英語の教科書を聞いて、シャドーイング、読んで、書いてのサイクルで言語野を活性化しながら始め様と思います。短期的目標・中長期的目標も必要ですね。皆さまの中には、既に英語ペラペラな方々が、多く存在している事もココnoteで良く分かります。また、株・投資・FX等の博識者の方も多く、ココで「知識」の販売を実施されている方々もおられる現状にとても焦っております。
私は、Windows95が発売された1995年に社会人になり、それを覚えながら、営業畑の仕事しか歩ん出来てません。正直、今のスマートフォンも使い熟せていません。デジタル技術には、非常に興味があったのですが、全く「自ら学ぶ」行動をして来なかった“ツケ”が、身に染みて感じます。「知らない事」は「学びのチャンス」と捉え、分からない事・モノには「何故?×5回」を繰り返し、知る・分かる・やってみるで学んで行こうと思います。自己観照・自己分析して自分に必要な知識は、わかりました。ある程度のお金も必要です。
しかしながら躰はいう事を効きません。まずはバイト・パートでもしながら資金集め・英語は、今あるモノで出来る限り学習しなおすしかありませんね。AIは、今後の発展が恐ろしいと考えられます。今、覚えた「知識」も直ぐに陳腐化し、学び続ける事を習慣化して生きて行かなければ世の中から弾き飛ばされ(既に弾き飛ばされていますが・・・)失うモノは、殆どありませんから“命”ある限り、学習・実行・成果・反省、次の学習・目標設定の見直し等など。思いつく事を焦らず自分なりに「楽しんで」学びたいと思います。皆さまは、いかがだったでしょうか? 何かの「気づき」「やる気」に繋がっていったら幸いです。        以上
 
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。   「W」より

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