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リンカーン・ライムシリーズのトムについて語りたい

『ボーン・コレクター』のトムが魅力的すぎたので誰かに話したいのだが、長くなるし、トムについて語る自分の姿を想像すると必死すぎて気持ち悪いので諦めていた。
しかし、noteで記事を書く際に「読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか?」とあったのでここに記す。ネタバレあり。

冷静に書くよう努めたが、話があっちこっちに飛んでいる。多分冷静じゃない。

トムは第四脊椎損傷患者の主人公リンカーン・ライムの介護士。
『ボーン・コレクター』では、卑屈になっているリンカーンに来客があり、その仲介をするところで初登場となる。
このシーンからは、トムについて以下の事がわかる。

・気が強い
・贅肉のない青年らしい腰付き
・金髪美青年
・白いシャツに薄茶のスラックス、青い花柄のネクタイ。いつでもきちんとした格好をしている。

もう好きになる要素しか詰まってない。詳しく書いてくれてありがたい。

そして、これに加えて、お母さんっぽさも持ち合わせているのがトムという人。

この時、リンカーンの部屋は散らかっていて酷い有り様だった。その部屋を見渡してトム。

まじめな話、ぜひとも掃除させてもらいますよ。どうせ客人でもなければ、不潔きわまりない部屋だってことにも気づかないんでしょうからね。

P35

言い方が本当にお母さんのそれ。

リンカーンは寝たきりで起き上がることもできないから、トムがその気になれば綺麗な部屋を保つこともできるし、小言を無視して掃除を始めることもできる。実際、リンカーンの小言をトムはしょっちゅう無視している。

それでも、わざわざこの話題を振っているのは、お母さんみもあるし、相手を患者としてではなく一人の人間として見ている感じもして良い。

この2人は介護をしつつ、されつつ、様々な場面で言葉の応酬を繰り広げている。

トムはお母さんと書いたが、この記事を書くために読み返したら親子では絶対しない会話もしていた。

一度はリンカーンが断った、刑事へのコーヒーをトムが持ってきちゃったシーン。
やけくそでリンカーンは刑事に勧める。

「コーヒーをどうぞ。私にはママのお乳を頼む」
「早すぎます。バーはまだ開店していません」トムはそう答え、ライムの渋面を見てもたじろがなかった。

P48、49

トムさえ出てくれば、こういった雰囲気の会話が挟まれることになるので本当に助かる。出てこない場面では、地獄のような展開が続くからだ。

『ボーン・コレクター』では、被害者がどんな人物なのか、どんな感情を抱いたか、滅茶苦茶しっかり書かれている。
犯人に捕まってからもそれは同じで、ずっと半狂乱のままではない所なんかは妙なリアルさを感じる。

詳細は省くが、ある被害者は、ある場面でウィンクをされる。
危機的状況下で出てくる「ウィンク」という単語。作者は読者の追い詰め方を心得ている。

展開が早いので一気に読み進めることができるが、犯人は落ち着く気配がなく、ページをめくってもめくっても新しい地獄が待ち構えている。

この小説の登場人物は(ミステリーは大抵そうかもしれないが)、殺すか、殺されるか、殺されそうになるか、犯人を追い詰めるかの、どれかの役割を持っている。

そこから外れるのは、リンカーンの回想に出てくる元妻か、被害者の回想か走馬灯に出てくる身内か、トムぐらいしかいない。

トムも一応、リンカーンの代わりにメモを取ることをしているが、本当にそれだけで、事件について自分なりの考えを述べるようなことはせず、リンカーンの補助に徹している。

私にとっての救いはほぼトム一人で、少しでもトムが出てこないと「早く来てくれ!何してるんだ!トム!」と第二のリンカーン・ライムと化してしまう。

トムは事件について言及しないが、豊富な知識で停滞していた現場を打開することもある。
骨を見、匂いを確認しただけで「これはオッソブーコだ」と当てるのだ。科学より先に。

よく食べるケンタッキーの骨の部位も分かっていない自分からすると、異次元のことをしている。
ただ、それを自慢としないのがトム。この時も、お決まりのライムへの文句がはさまれる。

「子牛のすねですよ。いつだったか、作ってあげたでしょうに、リンカーン。オッソブーコです。子牛のすねの煮こみ」そう言ってトムは
サックスに顔をしかめて見せた。
「塩が足りないと文句を言われましたっけね」

P214


あと、トムの博識さが分かるのが、リンカーンにメモを取っているか聞かれた時のこと。

「トム、ちゃんとメモをとってるんだろうな?」
「へえ、だんな(ブワナ)」

P327


ブワナはスワヒリ語らしい。
何でそんなことまで知っているんだ。(ここ、原文はどうなっているんだろうか?アメリカでは、スワヒリ語が必修言語だったりするのかな?)

なんというか、自分の持っている知識をちょっとした場面、ふとした時に言えるような大人になりたかった。


博識なことを鼻にかけないトムだが、自信をもっている、と自負するものがある。

それが、髭剃り。

女性刑事(ヒロイン?)のことが気になっているリンカーンのために髭剃りしたり身だしなみを整えてあげたりするトム。

息子の恋愛を応援するお母さんみたいで、和む。


おわりに
まだ、『ボーン・コレクター』しか読んでいないのだが、この人死ぬの?みたいな人が死んだ。
作者のジェフリー・ディーヴァーはファンから「トムを殺したらあなたの作品は二度と読みません」と言われたらしいから、トムに危害が加えられることはないと思うが、この後もトムの活躍が楽しみ。マイペースに読んでいきたい。


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