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東京旅行メモ(赤羽2)

あっ、、、、

と思った時はもう遅かった
カプセルホテルの洗面所にあった冷水機から水を汲もうとしていた女性は、申し訳なさそうにしている

故障なのか、水が勢いよく噴出されるようになっていて、冷水機のペダルを踏んだら水がそこら中に飛び散ってしまったのだ

隣で歯を磨いていた私のポーチも少し濡れてしまった

元々メッシュの生地だし、すぐに乾くので濡れてしまうのは全く問題ない

むしろ、女性が水を汲めないことの方が気になる

女性は何度か再挑戦していたが、ペットボトルと水の位置が噛み合わず上手く汲めないようだった

私はしばらくその様子を眺めていたが、角度を変えれば上手く気が気がした

もう少し垂直に立てて、水の落下位置に合わせれば、、、

直接入れるのを諦めて備え付けのペーパーコップを取ろうとしたところで、私は差し出がましくもお手伝いさせていただくことにした

マダム、きっとそのコップで水を汲むのは難しい

おもむろにペットボトルを手に取り、水を汲むと、女性は驚いたようにこちらを見て、水が入っていくことに感動している様子だった

水が重くなると抑えている手が安定しなくなってきたので、女性も手を添えてしっかりと固定してくれた

ペットボトルを押さえる女性の手は、温かかった

言葉も国境も越えるとは、こういう感覚かと、少し感動した

もういいかな、と手を離すと、満面の笑みで何か言ったが、私に通じていないとわかると、少しカタコトでアリガトウと言って去っていった

なんていい朝なんだろう

冷水機は修理してほしいが、修理しなくてもいい気もする

多少の障害があった方が、人々は繋がれるのかもしれない

感動に浸っていると、後ろからまた別の外国人女性に声をかけられた

彼女も先ほどのやりとりに感動してくれたのだろうか、と思ったが何か様子が違う

もしかして、彼女も困っているのだろうか

つけっぱなしのドライヤーを指さして何か言っているが、よく分からない

あいわなびーたーんおふ

私は学生以来触れてもいない英語の知識を総動員して、考えた

たーんおふ

切る?

なるほど、切りたいのか、ドライヤーを
ここのドライヤーはつける時は一回押せばいいが、切る時は長押しだ

私は女性の持っているドライヤーに手を添えて電源ボタンを長押しした

そういえば彼女はずっと髪を乾かしていると思っていたが、いつから困っていたのだろう

無事電源が切れて、とても喜んだ様子だった

電源を切っただけなのにすごく感謝された
オーバーリアクションは日本人には新鮮で、嬉しいものだ

さて、東京最終日
私も出かけよう

チェックアウトすると宿の前で先ほどの女性が、お友達と談笑していた

どうぞ、日本を楽しんで
いってらっしゃい

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