医学生向け)初期研修先病院の選び方
こんにちは、Dr.Jです。
最近、医学生の病院見学の対応をすることが無くて、すこーし寂しく感じております笑
というわけで、今回は医学生の方向けに
『初期研修先病院を選ぶ上で気にすべきこと、気にしなくて良いこと』
をまとめてみました。
自分は某ハイパー病院での研修だったので思考はややハイパー寄りになっているかもしれません。
あとはあくまで個人が研修してみて思ったことなので、参考程度にしていただければと思います。
それではどうぞ!
【全然気にしなくて良い】
①立地
病院の立地はあまり気にしなくて良いと思います。
なぜならどこの病院に行こうが、初期研修医の遊びは結局『飲み会が8割』だからです。
もちろん都会の方が飲み屋の数やジャンルは多いですが、半年もすれば飲み会をする店は固定されていきます。
なので、どうせなら海鮮の美味しいエリアや、肉の美味しいエリアで飲み食いする方が安いし美味しいしお得です。
また逆に田舎の研修の方がアウトドアが揃っており、休日の過ごし方が充実していることも多いです。
例えば沖縄に行った同期は毎週末ヨットやパラセーリングを楽しんでいたし、北海道に行った後輩はかまくらで飲み会したり、ウインタースポーツをしまくったりととても充実したオフを過ごしていました。
大事なのは立地ではなくて、自分がどんなプライベートを送りたいかだと思います。
②寮の有無
令和の現在、マンションの家賃が払えないくらい給料の安い病院は存在しませんし、寮があっても多少家賃が浮く(4、5万円)程度です。
食パンの袋を止めるアレの正式名称レベルで気にしなくて良いと思います。
ただし……ピンク色の研修医ライフを送りたいなら『看護師と初期研修医が同じ寮』の病院を選ぶと良いでしょう笑
③勉強会の数
勉強会の多さを売りにしている病院をチラホラ見かけるのですが、正直勉強会で劇的にレベルアップすることは個人的には感じません。
なぜなら、勉強会で一番成長するのは発表してる本人だからです。
成長したいなら、勉強会の総数より『自分が発表する機会がどれだけ多いか』を気にするべきで、スライド発表は多いか、コンサルやカンファでの発表の機会は多いか、などを聞くと良いでしょう。
④病床数
病床数を気にする必要はほとんどないです。
後述しますが、大事なのは診療科がどの程度揃っているかです。
【あまり気にしなくて良い】
①給料
『初期研修時代の給料なんて後期研修になったらあっという間に巻き返せるからあまり給料は気にしないで良いよ』という話は良く聞くと思う。
ハイ、全く持ってその通りだと思います。
後期研修医になればバイトで1日10万円稼げたりするので、初期研修医の月給10万円前後の違いは微々たるものでしょう。
ですが、この話は大きな落とし穴があります。
そうです、お金の価値には時間軸が存在するのです。
皆さんも、今10万円もらえるのと10年後に10万円もらえるのだったらもちろん今もらいますよね。このようにお金はもらう時期が早ければ早いほど価値が高いです。
実際、初期研修医時代に自由に使えるお金というのはとても貴重なもので、研修医ライフを存分に楽しみたいなら手取り35万円は欲しいところですね。
また、アルバイトをしたことのある人なら分かると思いますが、給料はモチベーションにつながります。
『めちゃくちゃ働いてるのに手取りたったの20万円か……ならちょっとくらいサボってもいっか』とマイナスに働くことがある一方で、『手取りで50万円も給料もらえるのだから少しは頑張らないと』とポジティブに働くこともあります。
プライベートの充実&仕事へのやる気を考慮すると、給料も多少は気にした方が良いかもしれません。
②大学病院と市中病院
市中病院2年間と市中1年間+大学1年間のタスキの場合、正直あんまり大きな差はつかないと思います。(個人としては市中2年間をお勧めしますが。)
理由は、研修医時代に経験する手技のほとんどが、ある程度の回数をこなせばプラトーに達するからです。
例えば研修医の手技の代表格であるCVですが、7、8回もやればある程度1人でできるようになりますし、大体の病院は1年でそれくらいはCVをやらしてくれます。
(もちろん極めようとするともっと膨大な数が必要です。)
なので、市中2年orタスキはそこまで気にしなくて良いと思います。
ただし、大学病院2年間の研修だけはできるだけ避けた方が良いです。
2年間大学にいると、診る症例に偏りが出てしまいますし、大学病院は若手医師の数が多くどうしても初期研修医はハイポ気味であり、2年間ずっとハイポな環境にいると堕落しがちだからです。中には点滴すら満足にできない後期研修医が生まれるとも聞きます。
・学生の時点で入局したい科と大学が確実に決まっていて、顔を売りたい人
・基礎研究への思いがかなり強い人
・どんな環境であっても自分は絶対に流されないという自信のある人
以外には大学2年間のプログラムは勧めしません。
【ちょっと気にした方が良い】
①上級医が指導熱心か
正直な話、上級医のフィードバックを得られるかどうかは完全に『上級医の人柄と研修医本人のやる気』に依存します。
つまり、半分以上はあなた次第。あなたがやる気を見せればほとんどの上級医はその分指導してくれますし、やる気なくずっと研修医室にいれば指導はどんどん減っていくでしょう。
とは言えやっぱり、研修医思いの先生がオーベンになるとその科の研修はめちゃくちゃ楽しくなります。なので教育熱心な病院かどうかはある程度気にしても良いと思います。
あと、病院見学で『上級医からのフィードバックは手厚いですか?』と質問する医学生も多いですが、はっきり言って無意味です。
そもそも初期研修医は他の病院での研修をほぼ知らないので、『もちろん手厚いよ!(ぶっちゃけ知らんけど)』と答えるしかないのです。
ではどんな質問をすると良いかと言いますと。
『上級医の先生との飲み会は多いですか?』と聞くと良いです。
研修医を熱心に指導してくれる先生というのは往々にしてコミュニケーション能力が高くて、かつ研修医が大好きなことが多く、飲み会の頻度がもれなく高いです。
なので、上の先生との飲み会が多い病院は教育熱心な先生が多い可能性が高いので、見学ではこっちの聞き方をすると良いでしょう。
②後期研修プログラムの有無
後期研修で病院採用の枠がある病院はレジデント以降の進路が広がるためお勧めです。すでに入局を決めている人にはあまり関係ないかもしれません。
③倍率
大前提として、倍率の高い有名ブランド病院の研修が絶対的だとは思わないです。
そもそも、マッチングの中間発表で人気の高い病院の実態が『試験が面接だけで楽に受けれるし、給料と立地がそこそこ良いから』というのは良くある話です。
なので、倍率高い=良い病院ではないことにご注意ください。
ですが、やはり定員割れしている病院は何かしらのマイナスがあると考えた方が良いでしょう。
逆に研修先として優良な病院は概ね『第一志望者数>定員』となっていることが多いです。
ヤバい病院を見抜くために倍率は使うと良いです。
【かなり気にした方が良い】
①診療科の数
診療科が少ない病院の場合、足りない科を外の病院で研修しなければなりません。
そうすると、月が変わるごとにいろんな病院に出向かなければならず、同期や先輩後輩、上級医の先生と仲良くなりにくく指導が受けられない他、仕事が楽しくなくなり、成長する機会も減ってしまいます。
あとは
『せっかく大動脈解離の患者さんが来たのに、心臓血管外科がなくて転院搬送することになった(病気の経過を追えないのは医学を学ぶ上でかなりの痛手)』
『神経内科の常勤が居なくて脳梗塞の患者さんがそもそも来ない』
と言ったふうにシンプルにデメリットが多いです。
急性期の対応を学ぶ上でも、最低限『循環器内科、神経内科、呼吸器内科、心臓血管外科、脳神経外科』は欲しいところですし、理想は『放射線診断科、感染症内科、救急外科、ICU』もあって欲しいところです。
②ハイパーorハイポ
ハイパー病院ハイポ病院、どっちが成長できるかの答えは『その人の性格と体力による』以外存在しないと思っているので、どちらが合ってるかは個々人次第です。
ではなぜハイパーorハイポが大事かというと、初期研修医の一番大事なミッションは『デプることなく初期研修を修了すること』だからです。
意気揚々とハイパー病院に行ったものの、力尽きて初期研修を修了することなくやめてしまう人を毎年見ます、そうなってしまったら本末転倒です。
逆に、ハイポ病院に行ったにもかかわらず、周りの同僚が変わり者すぎて上手くやっていけずデプる人の話も聞きます。
なので、ハイパーかハイポというのは成長という観点でも大事ですが、何より『自分が辞める羽目にならないかどうか』という基準で考えてください。
超ハイパー病院の共通点としては
・全科持ち患者制、持ち患10人以上
・オンコール制
・病院内に寮がある
・当直明け帰宅できない
などが挙げられます。
③同期の数
『10人〜20人』くらいがちょうど良いと思います。
少なすぎるとヤバい同期がいた時に詰みますし、当直の回数が多くなってしまって辛いと思います。
逆に多すぎると手技をやる機会や症例数が他の研修医に分散してしまうなどのデメリットがあります。
【絶対気にするべき】
①1つ上の先輩
『同期は選べないが先輩は選べる』という有名な(?)マッチングの格言があります。
マッチングのシステム上、自分の同期がどんな人になるのかは完全に不確定要素となりますが、自分の1つ上の先輩というのは確実に選べます。(好きな先輩のいる病院を受けるだけ)
そして1つ上の先輩というのは同期と同等、もしくはそれ以上に大事な存在となります。
当直で被ったり、同じ科を回ったりと院内を共に過ごす時間はかなり多い上に、『お勧めの参考書、お勧めの勉強法、手技や診察のやり方』などの医学的指導を一番してくれるのも1つ上の先輩研修医だからです。
つまり、1年後の自分たちのロールモデルとなる存在です。
大部分の時間と指導を1つ上の先輩にしてもらうことで、結局自分たちも1つ上の先輩と同じような能力値になることが多いです。
理想は医学部6年生の時に病院見学をして、1つ上の研修医1年目の先輩といろいろ話せるのがベストだと思います。
見学に行って『こんな先輩研修医みたいになりたい!』と思える人がいれば、迷いなく受けることをお勧めします。
②当直回数及び当直明け
そもそも当直には病棟内の患者さんの対応をする病棟当直と、救急外来を受診してくる患者さんの対応をする救急当直の2パターンあることに注意してください。
そして、病棟当直はそこまで忙しいことはないので、大事なのは救急当直が月に何回あるかです。
平均的な回数が月に4回だと思います。5回以上だと多い気がしますし、3回未満だと少ないと考えて良いでしょう。
あとは直明け帰れるかどうかも大事。
必ず『当直が終わればすぐ帰れるのか』、『当直後も午前中は働かないといけないのか』『そもそも帰れないのか』まで正確に聴取しておきましょう。
③病院の雰囲気
雰囲気というと抽象的すぎて言語化しにくいところですが、見学に行ってこの病院の雰囲気良いなあ、と感じるのは非常に大切です。
職場の雰囲気が悪いってのは想像以上に自身の成長を妨げます、仕事以外のストレスなんて基本百害あって一利なしで、特に上級医から教えてもらってナンボの初期研修医では尚更です。
では雰囲気って何を見たら良いの??と思うかもですが、見学にきた学生に自分が常々言っていたのが
『研修医に笑顔が多い病院は絶対当たり』
研修医が楽しそうに働いている病院はハイパーだろうがハイポだろうが良い研修病院であること間違いなしです。
④救急外来でファーストタッチができるか
個人的に、初期研修医が一番成長するのが救急外来の現場だと思います。
・目の前で患者さんがいきなり痙攣し始めた、さあどうする?
・車に轢かれた患者さんが5分後に運ばれてくる、さあどうする?
・担当してた患者さんがいきなりショック状態に、さあどうする?
こう言った、医者3年目以降に一番不安を持つことになる超急性期の対応を、体で学べるからです。
そんな成長の場である救急外来ですが、研修医が自分で考えて行動できるか、それとも上級医の指示に従うだけなのかで大きく成長が変わってきます。
『診察、問診、手技を全て初期研修医だけで行えるか』
『検査を自分で考えてオーダーできるか』
『コンサルは研修医が行うか』
+
『ER型救急か』
『救急科の専攻医はいるか(一番身近で教えてくれるため)』
『夜間当直の時間にも救急科の先生が常駐しているか』
などを気にすると良いと思います。
長くなりましたが以上が初期研修先を選ぶ上で気にすべきこと、気にしなくて良いことです。
初期研修医のうちは、成長ももちろん大事ですが、楽しく2年間を過ごせることが一番大事だと思います!
皆様の素敵な病院就職をお祈りしてます、それでは〜